オランダのキネティックアーティスト「テオ・ヤンセン」氏が手掛ける作品「ストランドビースト」をご存じでしょうか。無数のプラスチックチューブやペットボトルといった素材を組み合わせ、まるで生きているかのように歩行する、動くアート作品。同氏の代表作として知られています。
そんなストランドビーストに魅了されてやまないファンの日本人のひとりが、なんとストランドビーストを自作。さらに自転車の後輪に取り付けてしまうという、斬新な作品をツイッターで披露し、大きな注目を集めています。これはすごい……が、一体なぜ自転車に……?
投稿された動画には、制作者の男性が、自作のストランドビースト・サイクルに乗っている様子が映っています。ペダルを漕ぐのにやや力が必要そうですが、後輪部分の機構はまさにストランドビーストそのもの。あの複雑な動きを再現しています。
■ きっかけはストランドビーストへの憧れ 「いつか同じような作品を作れたら」
このストランドビースト・サイクルを制作したのは、栃木県那須郡にて宿泊業やサンドブラスト教室を営む「garden house sara」のオーナー、高橋さん。ストランドビーストとの出会いは、かつて放送されていたテレビCMがきっかけでした。
巨大な生命体を思わせる動きに心をつかまれ、ストランドビーストについて調べているうちに、YouTubeにて自転車の後輪にストランドビーストの機構を用いている作品を発見。自身も自転車が好きで、溶接も好きであったことから「いつか同じような作品を作れたら」と、考えるようになったのだそう。
コロナ禍も徐々に落ち着きを見せ、施設の経営にもゆとりが出てきた6月初頭から制作を開始。基本の足のシステムに関しては、テオ・ヤンセン氏自身がHPで公開している「Holy Number」と呼ばれる設計図を元にしつつ、日本国内や世界で同じタイプのストランドビースト・サイクルを制作している動画やドキュメントを参考に、設計を行いました。
今回高橋さんが制作したストランドビーストの材料になっているのは、ホームセンターで購入したというビニールハウス用の鉄パイプ。前半分の自転車は、知り合いのショップで廃棄される予定だった自転車の中から、程度の良いモノを譲ってもらい使用しています。
しかしながら、この両者を組み合わせるのは一筋縄ではいかないことは明らかです。ペダルから通常の車軸を介して、上方にチェーンを二段階掛けているというパーツの組み合わせについては、高橋さんが独自に生み出したオリジナルの機構。さまざまなこだわりと工夫が詰まった作品がついに完成しました。
■ 一旦は完成するも、まだまだ改良したい点がいくつもある
「ひとつひとつ組み立てたモノが動き出した瞬間は感動と共に、とりあえずひと仕事終わった、という安堵感?も大きかったです(笑)」と、高橋さん。
投稿には1万件を超える「いいね」が付くなど、反響が寄せられたストランドビースト・サイクルですが、まだまだ改良したい点がいくつもあるそうで、真の完成と呼べるのはもう少し先になるとのことでした。
ちなみに、動画を撮影した高橋さんの妻にはストランドビースト・サイクルを作ることは知らせていなかったそうで、実際に動く様子を見たのはこの時が初めて。
「お父ちゃんが作りたかったものが分かりました。お父ちゃんらしい。面白い」と絶賛し、撮影後には妻さんも乗せてもらうなど、夫婦で楽しんだようです。
本作はgarden house saraのガレージにて保管しており、「宿泊やサンドブラスト体験で訪れたお客さまのうち、DIYや自転車などに興味のある方に披露したり、作品についての話が出来れば」と考えているとのこと。実物を見てみたい方は、問い合わせされてみてはいかがでしょうか。
また、高橋さんは、テオ・ヤンセン氏の展示会が8月28日までの間、島根県立美術館(島根県松江市)で開催中であることも教えてくれました。
「この投稿をご覧になって興味を持たれた方がお一人でも多く展覧会に足を運ばれ、ホンモノのストランドビーストを見て、感じていただければ幸いです」と、コメントしています。
お父ちゃんがずっと作りたかったというテオ・ヤンセンさんのストランドビーストと自転車の組み合わせを参考にしたものが完成したようです。時間がある時にこつこつと作業をしていました。お父ちゃん、何やってるんですかーと言ってしまいましたができあがってみると面白い。夏休み前に終わってよかった pic.twitter.com/bGLZTzPPLA
— garden house sara (@g_h_sara) July 5, 2023
<記事化協力>
garden house saraさん(@g_h_sara)
(山口弘剛)