世の中には1つの出会いから、それまでとはガラッと異なる人生を歩み始めることがあります。あの日、あの時、あの場所で出会わなかったら……と考えると、それはまるで運命付けられていたかのよう。
宝石などを研磨するVTuberとして活動する「ごもも」さんも、そんな1人。運命を変えたのは、アニメ「宝石の国」との出会いでした。
宝石の体を持つ少年たちの日々を描く、市川春子さんの漫画を原作とするアニメ「宝石の国」。ごももさんは、ちょうど宝石に興味を持ち始めた頃だったそうで、宝石や鉱物の名前を持つキャラクターたちが繰り広げるドラマに心奪われ、気づけばどっぷりハマっていたといいます。
作品がきっかけで色々な宝石店に足を運ぶようになり、その中の1店舗で石の磨き方を教えてくれる方と出会い、磨き方を学ぶようになっていったごももさん。1年ほど続けるうち、やりたいことが増えたため、自分の自由な時間に研磨作業ができるよう、研磨の先生から紹介を受け、ついに50万もする研磨用の機械を購入したのだそう。
先生からカットまでは教えてもらったものの、美しく磨き上げる仕上げ研ぎはその人独特の技術が存在しているのか、教えてもらえなかったんだとか。このため、人に聞いたり資料を調べたりしてどうにか身につけたそうですが、同じように悩む人は多いらしいとのこと。色々な事情があるのでしょうね。
色々なカットを次々試しているので、どれくらいの種類を身につけたのかは分からない、と語るごももさん。一番多く作ったのは、ダイヤのカットで基本的なブリリアントカット、好きなカットという意味では、原石の形に応じてカットしたもの、と話してくれました。
石に対し、どんな形になりたいか、対話するような感じで研磨しているのかもしれませんね。石の中では「水晶の中にいろいろ入っているものが好き」だそうです。
たとえば、水晶の内部にガーネット(ざくろ石)を内含(インクルージョン)したガーネットインクォーツ。これは角形のラペルピン(ジャケットのフラワーボタンにつけるアクセサリー)に加工されました。
石の中に苔が生えたような姿が特徴のモスアゲート(苔メノウ)。こちらは内含している苔状の鉱物を景色として楽しんでもらおうと、丸く滑らかに研磨して指輪に仕立てられました。
原石を見ると、メノウらしく様々な色の鉱物が縞模様を作る中、内含した鉱物が苔状に張り込んでおり、まるで熟成されたブルーチーズのよう。どの部分を切り出し、加工するかというのもセンスが問われそうです。
同じく、メノウにほかの鉱物が入り込み、シダの歯のような模様を作るデンドリティックアゲート(樹枝メノウ)というものもあります。模様は非常に薄い層になっているそうで、それをいかして薄くカットしたような形で加工されることが多いのだとか。
ごももさんは原石の形を極力変えず、あえて表面を磨いただけのバロック(いびつ)な感じのペンダントヘッドにしました。革ひもとの取り合わせがぴったりですね。
ごももさんが研磨するのは宝石だけとは限りません。身近なお酒などのガラス瓶を素材に、宝石のように研磨していく動画もYouTubeにアップしています。ガラスと分かっていても、美しくカットされると素敵ですね。
こちらでは、ごももさんのキャラクター(赤い髪に青い瞳)を模してジュエリーデザインした方がいらしたそうで、それを赤いビー玉で作ったという「ごももカット」がお気に入りとのこと。
赤いビー玉は、透明ガラスの上に色ガラスをかぶせた構造になっていることがあり、ごももさんも研磨しているうち、透明な層が出てきてびっくりしたんだとか。仕上がりを見ると、透明な周囲を彩るように赤が残っており、赤だけよりも神秘的な色合いになっています。
「原石から磨くと、透明感や発色が良くなるので、そこの変化が好きですね」とごももさんは魅力を語ります。一方、固い石を削るだけに力もかかるようで「宝石を固定する接着剤がすぐに取れてしまうのが難点」なのだとか。体力的にも、あまりまとまった数を作れないそうです。
ごももさんは研磨動画をYouTube「ごももの宝石の部屋」にアップしているほか、研磨したものをアクセサリーにし、BOOOTHで販売しています。新作の動画についてうかがうと「鰹節をブリリアントカットして味噌汁の出汁にする動画を公開予定です」とのこと。美しくなった鰹節が美味しい味噌汁になるまで……これは楽しみですね。
宝石の国にハマって50万の宝石作る機械買った https://t.co/csLC7HoAGf pic.twitter.com/ulVi5ynmlK
— ごもも🍑宝石研磨しているVTuber (@gomomomomomomo) July 25, 2022
<記事化協力>
ごももさん(@gomomomomomomo)
(咲村珠樹)