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手術痕があっても気兼ねなく銭湯が利用できる世の中に……理解求める発信に注目

 罹患率が増加の一途をたどっている「乳がん」。治療は手術によって乳房の切除を余儀なくされることもあり、体に大きな傷跡が残ることで、人前で肌を見せることに強い抵抗を感じるようになった、という話をよく耳にします。

 そんな治療の痕を気にすることなく、当たり前に入浴施設を利用できるよう呼びかけを行ったのは、「むらさき湯」公式ツイッターアカウント。発信には多くの「いいね」による反応や、賛同の声が寄せられています。

  •  京都府京都市北区に暖簾を掲げるむらさき湯は、アットホームで居心地の良い、昔ながらの町銭湯。TwitterやInstagramを始めとするSNSでの発信も積極的に行っており、「ボンタン湯」や「酒粕風呂」など、時季に応じたさまざまなイベントを告知しています。

    ■ 手術痕を気にせず入浴をして欲しい 入浴着という選択肢も

     そんなむらさき湯が行った、「手術痕を気にせず入浴をして欲しい」という旨のツイート。治療の痕を気にしながら入浴している方や、入浴したいのに入れない方がいるということを知ってもらいたく投稿を行ったそうで、そこには力強いメッセージと共に、京都府の浴場組合から届けられたという、厚生労働省制作の「入浴着の着用」に関する配布物の写真も添えられています。

    厚労省が制作した入浴着に理解を求めるポスター

     ちなみに入浴着とは、乳がんなどの手術痕や治療の痕を人目に触れさせないために着用する入浴用の肌着のこと。清潔な状態であれば湯船につけても衛生面に問題はなく、術後の痕に悩みを抱える方にとって非常に重宝するものですが、これを快く思わない一部の利用者からの声があることで、術後、銭湯への足が遠のいている方が多くいるというのが現状である模様。

     こうした状況の中、入浴着や手術痕への理解を推し進めるために、むらさき湯から発信された今回のツイート。コメント欄には実際に「入浴着の存在を知らなかった」という声も寄せられていることから、その認知度はまだまだ低いと言わざるを得ないようです。

    ■ 「乙女温泉」の取り組みも 銭湯を訪れる足掛かりに

     ちなみに、むらさき湯では、手術痕が気になって銭湯に行きづらいと感じている方向けに、「乙女温泉」という女性限定のイベントを一昨年から年に数回のペースで開催しています。参加者からは「銭湯や温泉に行くきっかけになった」「気兼ね無くゆっくり入浴することができた」といった声も寄せられるなど、再び銭湯を訪れる足掛かりとなっている模様。

     これらの意見から読み取れるのは、やはり「傷跡を気にせず、のんびりと楽しみたい」という気持ちではないでしょうか。施設を訪れた方が皆、広いお風呂で心身ともにリラックスできるのが、銭湯の醍醐味であるはず。

     むらさき湯では、今のところ実際に入浴着を着用している方はいないそうですが、投稿への反響を受け、「施設の方でポスターをしっかり掲示することで、まわりからあたたかく迎えられるのではないかと思います」と、今後も継続して取り組みや発信を行っていくことをコメント。

     手術痕があっても、入浴着を着ていても、あらゆる方が配慮し合い、気持ち良く利用できる場になるよう、こうした取り組みへの理解が大きく広まって欲しいと、切に願うばかりです。

    <参考>
    厚生労働省HP「入浴着を着用した入浴にご理解・ご配慮をお願いします
    乙女温泉HP

    <記事化協力>
    むらさき湯 京都銭湯公式アカウント(@Murasakiyu_

    (山口弘剛)

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  • 山口 弘剛‌Writer

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    鹿児島出身・鹿児島在住。私生活では妻と共に2人の子どもを子育てしながら、地元のサッカークラブを熱烈応援中。仕事は元アパレル店長、元ゲームショップ店長を経験。現在はライター、イラストレーターとして活動。

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