ブーツの横にあるのは米粒。一瞬、米粒がブーツほどの大きさなのか、ブーツが米粒ほどの大きさなのか、迷ってしまいます。正解は米粒ほどの大きさのブーツ。
このブーツを作ったのは、いつも手縫いで作ったミニチュアの革靴をSNSに投稿しているTAKAさん。こんなに小さいブーツをいったいどうやって作っているのか、本人に聞いてみました。
TAKAさんが最初にミニチュアの靴を作ったのは2015年ごろ。穴の開いた革の財布を修理するために革細工用の道具を購入。その後、ミニチュア靴の型紙が掲載された書籍も購入したのがきっかけだったそうです。
ミニチュアの靴はたくさん作っても場所を取らないのはもちろん、上手く完成したものは喜んでもらってくれる人も多かったので、どんどん作るようになったのだとか。ただ、米粒ほど小さいものを作るようになったのは「偶然」だったといいます。
穴を開ける道具を修理したことで、縫い目を小さく細かくできるようになったそう。その後、米粒サイズの靴をSNSに投稿すると評判が良かったので、小さく精巧に作ることが楽しくなったのだとか。
■ 1cm以下の作品には顕微鏡を使用
1つの米粒サイズの革製のブーツを完成するのにかかる日数は、1日に2~3時間作業するとして約2週間。型紙を考えるところから始めると、1か月以上かかるとのこと。
作業は、まず革を0.2mmほどに薄くするところから始まります。その際、もんじゃ焼きのヘラを砥石で研いだものを使用しているそう。薄くした革は、型紙をあてて縫う時のための下穴を開けて下穴に沿って型紙の形に切り抜き、エアブラシで染色。
次に靴の上部と靴底を縫い合わせます。糸は絹織物の経糸を使用し、日本刺繡用の針で縫っていくそう。最後はミシン糸を靴紐にして結んで完成です。
1cm以下の靴を作る際は、実体顕微鏡で10倍ほどに拡大してのぞきこみながら作業。顕微鏡を使用するようになってから、作品の精度が格段に上がったと語ります。
顕微鏡を使用して米粒ほどのブーツを作るには相当な集中力が必要だと思われます。集中力を高める方法なども聞いてみたところ、「あまり気にしたことがない」と一言。作り始めると基本的に他のことは気にならなくなるのだとか。
■ 「変態だね」は褒め言葉
ミニチュアの革靴を作る上で大変なことは、依頼されて作品を作る時だそう。依頼人が喜ぶにはどうすれば良いのか、いつも苦慮。ただしその分、喜んでもらえた時の嬉しさは格別だそうです。
「見た人が驚きをもって見てもらえるものを作ることに、こだわっている」とTAKAさん。小さくてもしっかりと縫い合わせていたり、グラデーションをかけて染めていたりしており、「どうやって作っているの?」と聞かれると嬉しくなるそうです。
また「変態だね」は、褒め言葉と笑います。これからも作品を見た人が「おぉ!」と驚いて感心してもらえるようなものを作っていきたいと語っていました。
米粒くらいのブーツ。
本革、手縫い、エアブラシ 染色です(^^) pic.twitter.com/yA64UKgCx1— TAKA (@rootap) October 31, 2023
<記事化協力>
TAKAさん(@rootap)
(佐藤圭亮)