おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

24時間で倍に?「PayPay倍増」甘い言葉の裏に潜む巧妙な手口

 突然、SNSのDMに見知らぬ人から「ネットビジネス」を持ちかけられることはないだろうか。

 今回筆者のもとに届いたのは、「PayPayを増やす倍増代行サービス」。お金を預けると、PayPayを倍にして返してくれるという。本当ならば、すごいサービスである。

  •  詳しい話を聞くために、「興味があります」とメッセージを送ってみると詳細が送られてきた。

    勧誘DM

     お金(PayPay)が増える理由は株だという。1回500円から5万円まで入金すると、株を買い入れてくれるらしく、集計後倍にして返金してくれる仕組みらしい。

    株を購入して利益を配分してくれるらしい

     文面からは1万円が2万円になるといった内容しか書いていないため他の金額がどうなるかはわからない。また、文章内でやたら「怪しいやつではない」とアピールしてくるのも鼻につく。

     そして最後は詐欺の常套句としてあるあるの「参加者が一定数オーバーすると受付をキャンセルいただく場合もある」という文面が書いてあった。今参加しないと損するかもですよと、射幸心を煽っているのだ。

    射幸心を煽る文言も

     アカウントの投稿を見ると、「お金が本当に増えました」など成功したかのように見える内容が多数リプライされている。いわゆる「体験者の声」というやつだ。

     しかし別の投稿にぶら下がっているコメントを確認すると、「連絡ないのですが、騙しましたか?」「早く返金したらどうですか音信不通タチ悪いですよ」と書いてある。どうやら被害にあった人たちのようだ。

    被害者の声

     そこで被害者に取材を申し込み、話を聞いてみた。応じてくれたのは2名。お二人とも匿名を希望されているため、次からA子さん、B子さんとして紹介する。

    ■ 24時間以内の返金を約束するも、送金してしばらくするとブロック

     A子さんも筆者と同じくDMで勧誘が届いたそうだ。

     「24時間以内には倍にすると言われて1500円PayPayにて送金致しました」(A子さん)

     送金するまでは小まめに返事があったものの、その後連絡が途絶え、やっと返事が来たのが24時間たってから。

    「『色々整理して忙しいのでもう少しお待ちください』と連絡が来たので安心してしまい早くお願いしますとお伝えしたところ、、、翌日にはブロックされてました」(A子さん)

     A子さんの場合は被害額1500円と少額だったものの、被害にあってから連絡を取り合うようになった他の被害者からは、「8000円」や「9000円」の被害額を聞かされているという。

     次に取材に応じてくれたのはB子さん。B子さんのもとにも筆者やA子さんと同じく勧誘DMが送られてきた。B子さんは勧誘してきたアカウントが実績をリポストなどで紹介していたこともあり、つい信用。

    「増えたらいいな程度で送金した形になります」(B子さん)

     送金前にはA子さんと同じく、24時間以内に返金するとの約束があったとのこと。しかし送金したとたん、全く連絡がなく、B子さんから問い合わせると「ブロック」。

     DM勧誘→24時間以内での返金を約束→送金したとたん音信不通→A子さんやB子さんら被害者のアカウントをブロック。手口が完全に共通している。

     なお、この詐欺を行ったアカウントは現在も存在している。取材から数日たってアカウントをのぞいて見ると、アンチコメントが付いている投稿は削除されていた。かわりに「体験者の声」が積極的にリポストされている。

    体験者の声

     そしてさらに翌日。今度はアカウントのスクリーンネームを変更。次の被害者候補が怪しんでスクリーンネームを検索したときに、ネガティブなリプライが出てこないよう工夫してのことなのかもしれない。

     PayPayは自分の意志で送金してしまうと、「PayPayの補償制度の対象外」となり、返金して欲しい場合には当事者同士での解決が求められている。残念なことに、被害にあったとしても自己解決するしかないのが現状なのである。

     筆者はこれまでさまざまな詐欺被害者から話を聞いているが、警察に相談したとしても少額被害の場合は、話を聞くだけ。「動いてくれた」という話を聞いたことがない。

     昨今、「闇バイト」「特殊詐欺」など重大事案の事件が増加傾向にある。そうしたケースに比べたら、ネットの少額詐欺など相手にしていられないのかもしれないが、小さい犯罪をみのがせば、いずれ大きな犯罪へと繋がるかもしれない。早いうちから芽を摘むことも大事なのではないだろうか。

    <参考>
    PayPayヘルプページ

    (山崎尚哉/宮崎美和子)

    あわせて読みたい関連記事
  • 偽ファッション広告
    インターネット, 社会・物議

    偽ファッション広告がGoogle広告に大量出現 サポート詐欺被害に注意

  • ちょ、まてよ。それ何のドラマだよ!「勇者」出演の偽キムタクとLINEで対峙した一部始終
    インターネット, 社会・物議

    ちょ、まてよ。それ何のドラマだよ!「勇者」出演の偽キムタクとLINEで対峙した一…

  • PayPayカードを装うフィッシングメールに注意 他社サービスと連携させる手口が確認される
    インターネット, 社会・物議

    PayPayカードを装うフィッシングメールに注意 他社サービスと連携させる手口が…

  • 偽公式からの当選通知を追跡!行き着いたのは「能登半島応援」を騙る悪質詐欺
    インターネット, 社会・物議

    偽公式からの当選通知を追跡!行き着いたのは「能登半島応援」を騙る悪質詐欺

  • AIで生成されたフェイク動画
    インターネット, 社会・物議

    一瞬本物かと……有名人の顔と声までAIで再現!進化する投資詐欺の実態とは

  • “ネット詐欺のベストアルバム”に遭遇!「○○プレゼント」詐欺体験レポート
    インターネット, 社会・物議

    “ネット詐欺のベストアルバム”に遭遇!「○○プレゼント」詐欺体験レポート

  • 詐欺電話に“うっかり出た”読者の実体験 あなたの不安に付け入る手口とは(画像:PhotoACより)
    社会, 雑学

    詐欺電話に“うっかり出た”読者の実体験 あなたの不安に付け入る手口とは

  • フッション系と思わせるサポート詐欺サイト
    インターネット, 社会・物議

    ファッション広告のフリをした罠 ますます巧妙化する“サポート詐欺”

  • 危険なウイルスに侵害というメッセージ
    インターネット, 社会・物議

    サイト閲覧中「危険なウイルス」警告、誘導先のアプリを入れるとどうなる?

  • 通知に偽装しているがメッセージは必死「とりあえず一つ返信してください」
    インターネット, 社会・物議

    「通知バッジ偽装型」のサポート詐欺、最近「必死」に誘ってくることが判明

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 介護未経験者全体の72.9%が将来に向けて「特に何も準備していない」
    社会, 経済

    仕事と介護の両立に不安85% ダスキンが「介護白書2025」で実態調査

  • プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

  • 美食祭 in 日本橋三越
    TV・ドラマ, エンタメ

    高見沢俊彦の“美しいメシ”100回記念 日本橋三越で初の美食祭

  • なか卯が“ウニの二大メニュー” 雲丹おろしうどんとウニ丼を9月17日から販売
    商品・物販, 経済

    なか卯が“ウニの二大メニュー” 雲丹おろしうどんとウニ丼を9月17日から販売

  • 掃除機「自動お手入れ機能」篇(15秒)
    商品・物販, 経済

    反町隆史、東芝新CMで料理や掃除に挑戦 家庭的な素顔ものぞかせる

  • 音楽劇「謎解きはディナーのあとで」(撮影:阿部章仁)
    エンタメ, 舞台

    上田竜也が毒舌執事に挑む 玉井詩織&橋本良亮と共演「謎解きはディナーのあとで」開…

  • トピックス

    1. 偽ファッション広告

      偽ファッション広告がGoogle広告に大量出現 サポート詐欺被害に注意

      2025年9月上旬からGoogle広告に偽ファッションサイトが急増。数秒で「Windows Defe…
    2. 邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった

      邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった

      Webコンテンツ「絶対にバズるSNS」が9月15日公開。9月26日公開映画「俺ではない炎上」と連動し…
    3. 26年前のMMORPG「Dark Ages」、YouTuberの挑戦で限界集落から奇跡の再生

      26年前のMMORPG「Dark Ages」、YouTuberの挑戦で限界集落から奇跡の再生

      26年前にリリースされたMMORPG「Dark Ages」をご存じでしょうか。年月とともに人口は減少…

    編集部おすすめ

    1. 英国伝統のうなぎ料理は“水槽の味”?日本にはない「ゼリー寄せ」の衝撃

      英国伝統のうなぎ料理は“水槽の味”?日本にはない「ゼリー寄せ」の衝撃

      日本でうなぎといえば、甘いタレをつけて香ばしく焼き上げた「蒲焼き」が定番のスタイル。白焼きなどもあるにはありますが、うなぎといえばやっぱり蒲…
    2. たこばさんの「糸こんにゃく炒飯」

      えっ…これ糸こんにゃく!?目も舌も騙される“ヘルシー炒飯”を実際に作ってみた

      「糸こんにゃくで作った炒飯が本物そっくりに仕上がる」と聞いたら、信じられるでしょうか。大阪市のたこ焼き店「たこ焼たこば」の店主がSNSに投稿…
    3. 虎ノ門ヒルズの「どこか奇妙な職業体験」が話題 ゴミを拾いながら物語の世界へ没入

      虎ノ門ヒルズの「どこか奇妙な職業体験」が話題 ゴミを拾いながら物語の世界へ没入

      虎ノ門ヒルズで清掃員の仕事を疑似体験しながら、非日常な体験に巻き込まれていく……そんな不思議な没入型体験イベント「どこか奇妙な職業体験 虎ノ…
    4. あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!

      あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!

      子どもにとってかくれんぼは、ハラハラドキドキのスリリングな遊び。自分だけにしか分からないであろう隠れ場所を見つけて「ここなら大丈夫」「絶対見…
    5. プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

      プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

      アニメ映画「映画キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ!キミに届けるキラッキライブ!」公式は9月12日、「キミプリ♪ぬりえコンテスト」において…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト