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靴底に刺さった小さな釘にゾッ……消防士が身を持って教える「足元の危険」

 大規模な災害への対策として、保存のきく食品や日用品をストックしているという方は多いでしょう。

 しかし見落としがちなのが被災後の町や家を移動するための靴。消防士の「えるいー@ろーえんふぉーさー」(以下、えるいーさん)がXに投稿した画像は、非常時の我々の足元に、いかに危険が広がっているのかを教えてくれます。

  • ■ 長さ約3センチの釘が頭まで!安全靴の底を収めた写真にゾッとする

     このほどえるいーさんが投稿したのは安全靴の靴底を収めた画像。右足の母指球のあたりに、小さな錆びた釘が頭の部分まで深く刺さっています。

    頭まで突き刺さっている釘

     靴底の溝に挟まっただけ、のようにもみえるこの釘。しかしえるいーさんが引き抜いてみると長さは3cmほどもありました。

    3センチほどある釘

     当時えるいーさんが着用していたのが「踏み抜き防止板」という金属製の板が仕込まれた安全靴だったため、大事には至りませんでした。しかし、もしもただのスニーカーだったら……と思うとゾッとします。

     思えば「歩く」というのは、かなり足裏に負荷をかける動作ですよね。足裏に多少のクッション性があるとは言え、成人男性なら、70kgの塊を数十センチの高さから落とすようなもの。

     画像の釘の刺さり方を見ると、履いていたのがただのスニーカーなら、一歩踏み出した衝撃で足の甲まで釘が貫通していても、まったく不思議ではありません。

     安全靴の有用性を身をもって教えてくれたえるいーさんに、当時の状況について詳しくうかがってみました。

    ■ 「体は鍛えられても足の裏は鍛えられない」侮ってはいけない災害時の足元

    −− 差し支えない範囲でえるいーさんのご職業について簡単にお聞かせください

     職業は消防士です。普段は救助隊員や消防隊員として火災現場や救助現場、救急現場に出動しています。

    −− ということは投稿文中にある「火災か災害現場で」とは、お仕事で訪れた場所ということでしょうか?

     釘を踏んだ時期はイマイチ定かではないのですが、おそらくここ最近出動した建物火災の中で踏んだのだろうと思います。

    遠目には分からない

    −− 靴底の釘に気がついたのはどんなタイミングだったのでしょうか?

     火災とは別事案の交通事故現場に出動した際、事故車両から漏れ出たエンジンオイルやガソリンを踏んでいたので、仕事が終わった後に靴の周りを手入れしつつ靴底に匂いがついてないかひっくり返した際に気付いたものです。

    −− 写真だと釘は斜めに入っていますが、どういう状況で刺さったのか、おわかりになりますか?

     おそらく垂直か斜めの角度で踏んだ後、踏み抜き防止板で逸れたかして斜めに突き刺さっていったのかもしれません。

    −− 踏み抜き防止板、すごいですね……踏んだ瞬間や使用中は刺さっていることにまったく気が付かないものなのでしょうか?

     安全靴で歩いている時は異音や違和感はありませんでした。

    −− 違和感ないほど深く刺さっていた、ということでもあるかと思い、余計に恐ろしくなりますね。この釘を見つけたときは、どんなお気持ちでしたか?

     最初は釘の頭だけ見えていたので、小さな目釘でも刺さったのだろうと思ってペンチで引き抜こうとすると思っていた以上に食い込んでおり、力を入れて引き抜くとどんどん抜けてきたので驚きました。

    かなり深く刺さっていて、抜くのには力が必要

     また、釘も錆びていたのでもしもこれが刺さったらと思うととても怖かったですね。体は鍛えられても足の裏は鍛えられないので。

    −− 今回の件で「踏み抜き防止板」の有用性に気がつかれたとのことですが、今件が発生する以前に「踏み抜き防止板」に対して思っていたことを率直にお聞かせください。

     特に冬場、雪が降るような気温の火災や救助現場に出動した際は、厚手の靴下を履いていても踏み抜き防止板や爪先の保護カップが金属板でできている以上、どうしても足冷えがひどく、極寒の中でひたすら足の指を靴下の中で動かして我慢するしかありませんでした。

     そのため、個人的には防炎性能や最低限の足裏保護の必要性はあっても、凍える状況で金属製の踏み抜きは要らないだろう、などとたかを括っていましたね……。

    −− 私はえるいーさんのさらに手前の「最低限の足裏保護」の段階すら意識していなかったので、今回の投稿は本当にいいきっかけになりました。

    * * *

     見落としがちな、移動時の対策。足を怪我してしまえばそもそも避難場所への移動が困難になってしまうので、食品や日用品と同等、あるいはそれ以上に必要なことかもしれません。

     いきなり安全靴を買うのはハードルが高いという人も、「踏み抜き防止板」には普段使いしている靴に装着できるカップインソールタイプのものあるそうなので、まずはそちらから導入してみるのも手だと思います。

    <記事化協力>
    「えるいー@ろーえんふぉーさー」さん(@erui_LE

    (ヨシクラミク)

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