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「イルカ=友好的」は間違い!元水族館職員の絵本作家が伝えたい“危険性”

update:

 「海の危険な生き物は?」と聞かれてまず思い浮かべるのは、サメではないでしょうか。イルカを真っ先に思い浮かべる人は少ないはず。

 しかし水族館での勤務経験もあるイラストレータ・絵本作家の福武 忍さんはイルカについて「人にとっては『体当たりされるだけでやばい、でかい野生生物』です」と警鐘を鳴らします。

  • ■ 福武さんが公開した「海でイルカにであったら 2025年版」がXで話題

     福武さんはこのほどXに「海でイルカにであったら 2025年版」というタイトルで、1枚のイラストを公開。1.8万件のリポスト、5.2万件のいいねを獲得するなど話題を集めています。

    「イルカ=友好的」は間違い!元水族館職員の絵本作家が伝えたい“危険性”

     イラストにはイルカの絵とともに「海でイルカにであったら さわらない! ちかづかない! 海からあがる!」という注意喚起の言葉が大きく書かれています。

     我々一般人にとってはイルカは、水族館のショーなどで馴染み深く、どちらかといえば「可愛くて賢い、人にとって友好的な生き物」というイメージ。

     しかしイラストによればイルカは太くて硬くて重たいボディを持ち、その体長はライオンやヒグマに匹敵します。そんなボディで体当たりをしてきたり、のしかかって沈めてきたりと、“友好的”からはほど遠い動きを見せるそう。

     さらにイルカには上下合わせて80本の尖った歯があり、噛みついてくることもあるのだとか。

     そしてイルカの“危険性”を意識するべきなのは、ダイビングなど限られたマリンスポーツをする方だけではありません。

     実際、福井県では2022年以降に海水浴客がイルカに噛まれる被害が相次いでいると報じられています。海で遊ぶ際には、必ずと言っていいほど意識しておくべきことなのです。

     こうしたイルカのイメージと実態の乖離などについて、イラストを作成した福武さんに詳しく伺ってみました。

    ■ 死者や重傷者が出る前にイルカの危険性を知ってほしい……イラスト作成の背景

    −− イルカを取り巻く状況については以前から注目されていたのでしょうか?

     2022年から日本海側の海水浴場に人慣れしたハンドウイルカが出没していること、人に対する警戒心が薄く行動が大胆になっていること、複数の海水浴場に出没するイルカはおそらく群れから離れて単独行動をとっている同一個体であろうことを報道により認識していました。

    −− たしかにニュースで見かけた記憶があります

     当初は一部の海水浴場が閉鎖されたり、遊泳時間の制限を設けるなどの対策がなされていましたが、2024年にはイルカの行動はより大胆になる一方で繁盛期を迎えた海水浴場を閉鎖する様子は見えませんでした。

    −− 調べたところ、海上保安庁などが注意喚起のポスターや画像を出しているんですね

     対イルカ事故で怪我をされる方が増えるにつれ、各種メディアや海上保安庁がイルカが口を開けた正面向きの画像を用いて注意喚起をリリースしていましたが、そのアングルのイルカの顔は多くの人が「可愛い顔」「笑顔」として認識するであろうものであったりで、あまり効果はないのではないかと感じていました。

    −− 画像を確かに「獰猛さ」をアピールしたい気持ちは伝わってきますが、「可愛さ」が拭えませんし、具体的な危険性は伝わってこないですね……

     水の中では人間は短時間で死んでしまうし、イルカの力(ちから)に対して人の体はやわらかく脆いです。

     楽しいはずのレジャーに出かけた先で、対イルカ事故によって亡くなる方やケガがもとで重い障害を負う方がでる前に、わずかながらでも「野生動物であるイルカは人とどれくらいの体格差があり、水中での彼らにとってはたわいのないわずかな動きが私たちにどのように影響するのか」ということをお知らせできたらと思い、昨年急遽注意喚起のポスターとぬりえの画像を作成しSNSに投稿しました。

    ぬりえ版

    ■ 「イルカ=友好的」のイメージはなぜついた?元水族館職員が感じる「やむを得なさ」

    −− しかしやはりイルカには「人間に友好的」というイメージを持ってしまいます

     かつてテレビで放映されていた海外ドラマ「わんぱくフリッパー」やアニメ「海のトリトン」に登場するイルカのキャラクター、歌謡曲の中に登場するイルカのイメージ、そして国内の多くの鯨類飼育施設で開催されているイルカショーなどを通じ、日本の多くの人々にとってイルカは「賢く、やさしく、愛嬌のある生き物」というイメージを持たれることになったのだと感じています。

    −− フィクションの影響も大きそうですね

     私は35−6年前に水族館に勤めていて、イルカをはじめとした海生哺乳類の飼育に携わっていたことがあります。

     ショーでは馴致調教を受け入れ人の指示通りの演技をするイルカを「賢い」と称するし、イルカに限らず伴侶動物や産業動物でも「人の指示を解した動きを見せたり、思い通りの動きをみせる動物」を「賢い」とも言います。

     多くの人々が、イルカがメディアや身近な飼育施設に登場してから今までのあいだ、イルカのことを「ままならない野生動物だ」とみなす機会をほぼ持つことがなかった状況を考えると、そうした現状になっていることはある意味やむを得ないことなのではないかと考えています。

    −− もし沖の方、すぐには陸に戻れない場所でイルカに遭遇した場合は、どうすればよいでしょうか?

     海中では人がイルカを認識する前にすでにイルカが人を見つけているでしょうし、泳ぐスピードは彼らの方が圧倒的に速いです。

     間に合うかどうかはわかりませんが、その場合にはイルカの関心を引かないように静かに速やかに陸へ向かった方がよいと思います。

    −− 海中で出会った時点で、もうかなりピンチということですね

     最良なのは「イルカの出没が報告されている海水浴場には行かない」、その次は「それでも行くなら、すぐ砂浜へ戻ることができるところで遊ぶ」だと考えています。

     福井県によって野生イルカのリアルタイム監視システムが開発されるそうなので、有効に活用されることを期待しています。

    −− リアルタイムの監視システムはぜひ導入してほしいです

    * * *

     福武さんの見立てでは、海水浴客を襲っているイルカは同一の個体。どこに現れるかなどの予測は難しいものの「まだ生きていれば、また海水浴場が賑わうシーズンにいずれかの海水浴場に出没するのではないかとは予想しています」と話し、間もなく到来する海水浴シーズンに向け、注意を呼びかけています。

     なお、福武さんは「クレジットを表記すること」「営利目的で使用しないこと」「改変しないこと」を守ることを条件に、イラストの複製や再配布を認めています。

     ぬりえ版もあるため、親子で遊びながら、イルカの危険性への理解を深めることもできそうです。

     今年の夏からはショーやフィクションにおけるイルカのイメージを一旦忘れ、「体当たりされるだけでやばい、でかい野生生物」と認識することで、海水浴をより安全に楽しんでいきたいですね。

    <記事化協力>
    「福武 忍」さん(@shinobuns

    (ヨシクラミク)

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