日本人には馴染み深い、能面。しかしひょっとすると、海外の方には奇妙な物品に映ってしまうのかもしれません
能楽師として活動する山田伊純さんの、ドイツ出国時のエピソードに10万件を超すいいねが寄せられています。
■ ドイツの職員から能面について質問攻めに「何に使うの?」
このほど山田さんはXに、2種類の能面の画像とともに「ドイツ出国で止められた」というコメントを投稿しました。
山田さんによると画像向かって左が「小面(こおもて)」と呼ばれる、若い女性の役に使うもの。能楽の代表的な能面であり、「小」には“可愛らしい”という意味があるとのこと。
向かって右側の、眉をしかめた苦悩の表情が特徴的な能面は「中将(ちゅうじょう)」と呼ばれるもの。在原業平の姿を写したとされているものだそうで、平家滅亡の憂いも表すことが多く、業平自身だけでなくほかの武将の役にも使われるようです。
日本出国時、およびドイツ入国時には問題なかったという山田さん。しかしドイツを出る際に保安検査場で止められたといいます。
「『マスク?』『このマスクは何だ?』『何に使うの?』と質問攻めに遭い、面袋の中を開けて、能面を中から取り出して、触って確かめられていました」(山田さん)
止められた理由は山田さん自身も分からず。美術品だからなのか、空港職員が興味を持っただけなのか、真相は闇の中です。
当時の心境について「能面は能楽師にとって大切な相棒なので、ここでサヨナラは嫌だなって」と話す山田さん。これまでで1番、「中将」の苦悩の表情が際立って見えた、とも。
「僕は能楽師だから、能面をつけて使用する」と英語で回答したものの、職員には「Noh」が伝わらなかった様子。しばらく能面を調べられた後、ようやく通してもらうことができたそうです。
山田さんは10月22日に渋谷のセルリアンタワー能楽堂にて、能楽の公演「第五回 ゆとりのかい ― 鬼を知る 能を知る」を開催するとのことで、このままドイツから出国できなくなれば、大変なことになっていました。
■ ドイツの税関は厳しい?
ちなみにリプライ欄などでは「ドイツの税関は厳しい」という意見も。
ドイツ大使館などによると、職業上使用する道具や、高価な日用品については入国時に手続き・申告が必要になるとのこと。申告しないまま持ち込むなどした場合には、多額の税や反則金を課されたり、差し押さえが発生する場合があるようです。
そのため、今回の一件については、山田さんの持ち込んだ能面について「美術的価値が高い品ではないかと考えストップをかけたのでは」という声も相次いでいます。
ドイツ出国で止められた pic.twitter.com/OyXQoq1zOS
— 山田伊純 (@yamadaisumi) September 8, 2025
<記事化協力>
「山田伊純」さん(@yamadaisumi)
<参考・引用>
ドイツ連邦共和国大使館・総領事館「ドイツ入国の際の税関手続きについて」
(ヨシクラミク)