皆様こんにちは。今回の「新作アニメ捜査網」では、中部日本放送、毎日放送、東京メトロポリタンテレビジョン、BS11、AT-Xで放送中の『みつどもえ』をご紹介致します。


原作は秋田書店の『週刊少年チャンピオン』に連載されている桜井のりおの漫画で、ストーリーは、小学6年生の生徒と教師の極端なドタバタ劇を描いたギャグアニメです。
特に、落語『蒟蒻問答』のようなエピソードが散見されます。

『蒟蒻問答』というのは、或るお寺で住職のふりをした蒟蒻屋の六兵衛と、旅の僧侶の問答を描いたもので、僧侶は仏教の問答をしていると思い込み、六兵衛は蒟蒻の値切り交渉をしていると思い込んだ、という話です。即ち、互いに意思疏通していると思い込んでいたが実は誤解に基づいていたという話です。『蒟蒻問答』のようなエピソードは、アニメにおいてしばしば見られるものであり、『忍たま乱太郎』にこの手のエピソードが登場したこともありましたし、『ひぐらしのなく頃に』の「鬼隠し編」も同種のパターンと言ってよいでしょう。

では実際に『みつどもえ』の劇中の描写を見てみましょう。
第3話「不審者がいっぱい」では、松岡咲子(声・葉山いくみ)が会話の話題をオカルトの話、丸井ひとは(声・戸松遥)が水泳の話だと互いに思い込む。
第7話「ガチで愛してしょうがない!?」前半では、担任・矢部智先生(通称・矢部っち。声・下野紘)が会話の話題をスカートの話、ひとはが戦隊ヒーローの話だと互いに思い込み、次の瞬間には今度は矢部っちが会話の話題を戦隊ヒーローの話、ひとはがスカートの話だと互いに思い込む。
更に第7話後半では、ひとはが会話の話題を戦隊ヒーローの話、吉岡ゆき(声・豊崎愛生)が矢部っちの話だと互いに思い込んでしまうのでありました。
本作はギャグアニメなので基本的には笑い話ではありますが、人々のコミュニケーションが稀薄化していると言われる世相に対し、きちんとした対話によって分かり合うことの重要性を指摘し、対話の齟齬から生ずるトラブルを戯画的に描くことで、世の中に警告を発しているのではないでしょうか。

■ライター紹介
【コートク】
戦前の映画から現在のアニメまで喰いつく、映像雑食性の一般市民です。本連載の目的は、現在放送中の深夜アニメを中心に、当該作品の優れた点を見つけ出して顕彰しようというものです。読者の皆さんと一緒に、アニメ界を盛り上げる一助となっていきたいと考えています。宜しくお願いします。