NASAや日本のJAXAなどが実施する有人月・火星探査計画「アルテミス」最初のミッションとなる、月への試験飛行「アルテミスI」に使用されるオリオン宇宙船の完成後試験が問題なく終了したと、2021年1月14日(現地時間)にNASAとメーカーのロッキード・マーティンが発表しました。宇宙船は2021年のうちに打ち上げられる予定です。

 NASAが主導し、日本のJAXAやカナダ宇宙庁、ESA(欧州宇宙機関)などが参加する有人月・火星探査計画「アルテミス」。2024年にアポロ17号以来52年ぶり、そして女性が初めて月に降り立つことになっています。

飛行するオリオン宇宙船の想像図(Image:NASA)
「アルテミスI」のミッションパッチ(Image:NASA)

 その有人飛行を前に、宇宙船の機能確認や飛行計画のチェックをする試験飛行「アルテミスI」ミッションが実施されます。無人で打ち上げられた宇宙船は月まで往復し、地球に帰還するという有人ミッションと同じ手順を踏み、宇宙飛行士が安全に飛行できるかを調べる重要なミッションです。

「アルテミスI」ミッションの概要(Image:NASA)

 計画に使用される宇宙船「オリオン(Orion)」を製造するのは、アメリカのロッキード・マーティン。そして機械船(サービスモジュール)を担当するのはESAで、エアバスとタレス・アレニア・スペースが製造を受注しています。

オリオン宇宙船に記されたNASAとESAのロゴ(Image:NASA)

 2021年1月14日、フロリダ州のケネディ宇宙センターで続けられていたオリオン宇宙船の完成後試験が無事終了し、正式にNASAへ引き渡されました。これにより、宇宙船はいよいよ初の打ち上げミッション「アルテミスI」の準備に入ります。

フェアリングの装着(Image:NASA)

 宇宙船を製造したロッキード・マーティンのマイク・ホウズ副社長は「オリオンはユニークで印象的な宇宙船であり、私たちのチームは素晴らしい働きをして今日この日を迎えることができました。アルテミスIの打ち上げと飛行はとても印象的な光景となるでしょうが、重要なのはオリオン宇宙船が人間を乗せ、月まで往復して安全に地球へ帰還できるか確認することです。この驚異的な進歩は深宇宙探査の新たな時代の扉を開き、とてつもない恩恵をもたらしてくれるでしょう」とのコメントを発表しています。

フェアリングが装着されたオリオン宇宙船(Image:NASA)

 NASAでオリオン宇宙船のプログラム・マネージャを務めるキャシー・ケルナー氏は「アルテミスIミッションに向け、オリオン宇宙船を作るため協力したアメリカやヨーロッパのチームが並外れた献身と努力を捧げてくれたことを心から誇りに思います。アルテミスIで得られた知見は、今後宇宙飛行士が搭乗してのミッションで、安全に月まで送り届けることを確実にしてくれるでしょう」とコメントを発表。無人の試験飛行である「アルテミスI」の重要性に言及しています。

移動式発射台の動作試験(Image:NASA)

 アルテミスI用に完成したオリオン宇宙船は、1月16日に別の施設へ移動し、計画で使用される巨大な打ち上げロケットSLS(Space Launch System)ヘ搭載するための準備が進められます。アルテミスIの打ち上げは、2021年の後半になる見込みです。

<出典・引用>
NASA ニュースリリース
ロッキード・マーティン ニュースリリース
Image:NASA

(咲村珠樹)