あなたはゲームセンターに行ったことがありますか?
入り口の向こうに並ぶゲームの筐体、そこから聞こえるゲームのサウンドは、ワクワクする気持ちを高めてくれました。
……しかしこのゲームセンター、年々、閉店が続いています。
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『アミューズメント産業界の実態調査』(平成25年度版)で店舗数を見ると、平成20年度には2万2千店、しかし平成25年度には1万6千店まで減少しました。オペレーション売り上げ高を見ると、平成18年度の7029億円以降は下降を続け、平成25年では4564億円まで落ちこんでいます。
中小規模店舗(50台以下及び51~100台以下を総計)に絞って店舗数を見ると、平成16年度では1万9340店舗(同調査平成20年度版)あったものの、平成25年度(同調査平成25年度版)では9533店舗まで減少。この9年で9807店舗が閉店しているのです。
理由はいくつかあります。大規模店舗の新設や消費税増税そして課金など、オペレーション側に起こった環境の変化。それから、スマートフォンや家庭用ゲーム機といったデジタル端末の台頭やこれにより“選択肢が増え”足が遠ざかった、といったユーザー側に起こった環境の変化。
このように、時代や環境の変貌から苦しい状況を迎えているゲームセンターですが、様々な取り組みを行い、楽しい場所が残るよう努力を重ねている所がたくさんあるのです。
今回は、その中の一つで、オーナーの努力とお客さまの愛で支えられているといっても過言ではない、神奈川県川崎市のゲームセンター『マットマウス鹿島田・新川崎店』(以下:マットマウス)を訪ねました。
■ ビルの中に多彩なジャンルのゲームがぎっしりと!
マットマウスがあるのは、神奈川県川崎市にある南武線鹿島田駅から歩いて5分ほどのところ。元々は、同じ南武線の武蔵新城駅近くにあったのですが、2013年、「お店が手狭である」ことを理由に移転し、現在の場所に落ち着いたのです。
ビルの中には、スロット・シューティング・格ゲー・音ゲー・パズルと、ビルの下から上までさまざまなゲームが。そのため、シューター・ぷよらー・音ゲーマーなどジャンルを超えてゲーム好きな方が集まります。5Fにはイベントに使える空きスペースがあり、最近では、毎週土曜日15時頃より『ぷよぷよ通対戦会』が実施されています。
■ ゲームと縁がなかった本田氏がこの世界に入ったきっかけとは?
今回インタビューに協力頂いたのは、店長の本田氏。
業界に入る前の本田氏はサラリーマンでした。この頃ゲームとは全く縁が無かったと語る本田氏、なぜこの業界に入ったのでしょう。それはあることがきっかけでした。「ゲーム筐体のレンタルリース業務を共にやらないか?」という友人からの誘い。これを機に業界へと入り、業務を続けるうちにマットマウスと出会ったのです。
その後のある日、本田氏は、マットマウスのスタッフより「お店を引き継いで欲しい」という要望を受けました。しばらく考えた末、本田氏は誘いを引き受けることを決意。こうして、マットマウスのオーナーに就任したのです。前職の生活ではゲーム自体に縁がなかった本田氏ですが、友人の誘いやスタッフからの要望をきっかけに、本格的にゲームそしてゲームセンターの世界へ飛び込んだのでした。
■ 経営と業務の掛け持ち……究極の“ワンオペ”から見える愛情
前述した通り、マットマウスはビルの1フロアごとにゲームが置いてあります。この一つ一つのスペースは小さめなのですが、階数があるため、筐体の数は必然と多くなります。そのため、「これら全てのオペレーションは大変ではないか?」と筆者は感じていました。
「本田氏にその点を聞くと、「武蔵新城にマットマウスがあったときからの流れで全て一人です」との答えが。ゲームセンターは営業時間が長いため、 体力への負担も大きいようです。
また、マットマウスを維持するため、本田氏は仕事の掛け持ちをしています。内容は、通販サイトの運営や引き続き行っているレンタルリース業務。驚いたのはこれら全てをワンオペでやっている事実です。業務・労働時間、ここから負担の大きさがより一層伝わりました。
しかし本田氏は「ここまでしないと運営が難しく……。けれど、残していくために、出来るだけのことはしたいですから」と答えたのです。くわえて、この規模のゲームセンターの場合、他のお店も大変なことは容易に想像がつくこと、だから共に頑張っていきたいことも語りました。ここから、「マットマウスが大切」「自店だけでなく他とも協力して、互いに助け合いたい」といった熱意を感じ取ったのです。
■ 大きな負担は「課金」!その割合は30%
続いては売上げについて。これに対し本田氏は「家賃・水道光熱費など多くの値上げがあったので、苦しいなと感じる部分……多いんですよね」と話しました。けれど、“どういった形で苦しくなるか”、これは決算を出してから初めて判明するそう。つまりこれからなので、不安は大きいと語りました。
他に大きい負担を聞くと「課金です」との答えが。それは30%という大きな数字で、具体的には、売上げ100万だとしたら30%。まずこれが31万5000円になります。どういうことか?売上げ金額に変化がない場合、ゲームの従量課金や電気代・家賃などに消費税がかかります。しかし、増税分をお客様に転嫁するのも忍びないため、そのまま負担をしているとのこと。
これがさらに消費税で32万4000円……。この差額の積み重ねが、厳しさに拍車をかけているのです。けれども、「いつも大変でしたし、これまでと変わらないかなと思うようにしています」と前向きな部分も見せてくれました。
■ ゲームセンター配信を始めた理由、そして活発化するプレイヤーの配信
今や、ゲーム配信は身近なものになりました。「ゲーム実況者」という形でイベントへ登壇するプレイヤーも増えていますよね。このゲーム配信が、マットマウスでも可能なのです。もちろんゲームセンターですから、アーケードゲーム筐体からの配信という新しい形にて。
しかし、なぜ配信機材を揃えたのでしょう?理由を尋ねると、「家でのゲーム配信が流行っていると感じました」という回答が。確かに、様々な配信サイトで目にすることが増え、ゲーム配信は当たり前ともなってきています。本田氏はそういった部分を見て「ゲームセンターからアーケードゲームの配信が出来たら面白いだろうし、一人で来店しても配信を利用してリスナーさんとコミュニケーションを取れる、そしてこれらは独自の取り組みになるのでは?」と考えたのです。
そこで、2015年4月に全ての配信機材を揃えました。機材は決して安くはありません。ですから金銭面でも大きな負担になったそう。しかし、「お客さまにいろいろな遊び方を楽しんでもらいたい」との思いから、購入に踏み切ったのです。
そして6月現在、プレイヤーによる配信が活発です。シューティングは『怒首領蜂大往生』『虫姫さまふたり ブラックレーベル』『ケツイ』『バトルガレッガ』など、パズルは『ぷよぷよ通』など、また木曜日には『ダイナマイト刑事』や『エイリアンvsプレデター』(こちらは、初プレイぶりを実況付きで届けるという試みで、奮闘ぶりが話題となりました)など。
現在は、シューティングゲーム・格闘ゲームはUstreamにて(これはお店のアカウントからの配信)、他にはニコニコ動画からの配信が可能です。
▼matmouse_STG ~マットマウス鹿島田・新川崎店からSTG配信~
http://www.ustream.tv/channel/matmouse-stg
▼matmouse-LIVE
http://www.ustream.tv/channel/matmouse-live
▼マットマウス 鹿島田・新川崎店 ニコニコミュニティ
http://com.nicovideo.jp/community/co2858259
6月9日、お店のコミュニティ(ニコニコ動画)が出来ました。また、ニコニコ動画に自分のコミュニティがある場合はそこからも配信可能です。配信したい場合は、店員さんに声をかけ、写真にあるホワイトボードに時間を書き込んでもらえればとのこと。
■ 筆者が遭遇した『怒首領蜂大往生』2周ALL初達成の感動的な場面
筆者がマットマウスを訪れた日は、ゴールデンウィークの最中だったゆえ、常連さんを始めとした多くの方で賑わっていました。中には、遠方からはるばる訪れる“遠征勢”の姿も。彼らはみな、和気あいあいとゲームをしながら会話しており、とても楽しそうでした。
中でも感動的だったのは、あるプレイヤーさんが、『怒首領蜂大往生』(通常、白往生と呼ばれるものでブラックレーベルではありません)を2周ALLした場面。このときは、配信しながらで、かつ筐体の周囲で他のプレイヤーが見守っているという状況。もちろん、クリアが掛かっているためプレイヤーさん本人はとても緊張しています。これだけの状況で見事ALLし、周囲は喜びに包まれました。
■ 一番嬉しいことは“お客さまの協力”
本田氏は、「嬉しいことに、マットマウスを盛り上げようと取り組んでいるお客さまがいるんです」と笑顔で語りました。そのゲームジャンルについて尋ねると、シューティングゲームや『ぷよぷよ通』といったパズルとの答えが。マットマウスは、階によって置かれるゲームジャンルは異なっています。つまり、フロアやジャンルは違っても「お店を盛り上げたい」という共通の思いを行動に移している方がいらっしゃるのです。先日、このプレイヤーさん達から直にお話を聞きました。彼らの生の声は、後ほどお届けしたいと思います。
さらに本田氏は、「この仕事だから長く続けられたのでしょう。他の仕事でお客さまがここまで協力してくれることって少ないでしょうし……。ですから、感謝の気持ちで一杯ですよね」と嬉しそうに話しました。お店が好きでその場所を守りたいと思い、自ら動くお客さまの存在。本当にありがたく嬉しいものですよね。
■ 今後は「ゲームセンター同士で協力し、プレイヤーの輪を広げたい」
今後は、イベントなどで「いろいろな人が訪れるきっかけ」を作りたいそう。中でも、「ゲームセンター同士、合同できることがあったら協力して行きたい気持ち」が強いと語りました。
ゲームセンター同士で協力することで、新しい盛り上がりになるでしょう。話を聞いていた筆者も思わずワクワクしてしまったくらいです。それに、お店同士の交流によってさらに人の輪も広がります。遊ぶ・交流といった楽しみとゲームセンターの活性化に大きく拍車がかかるのではと、期待に胸がふくらみました。
■取材協力店情報
店名:マットマウス鹿島田・新川崎店
住所:神奈川県川崎市幸区下平間111-4 川粧第2ビル2F(南武線鹿島田駅から徒歩5分もしくは横須賀線新川崎駅から徒歩10分)
公式サイト: http://matmouse.sakura.ne.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/matmousegame
■参考
▼「平成25年度アミューズメント産業界の実態調査」
▼平成20年度アミューズメント産業界の実態調査」
(取材:らくしゅみっくす)