イギリス空軍の写真員(カメラマン)が1年で撮影した中から、一番を決める恒例の「RAFフォトグラフィック・コンペティション」。2021年の表彰式が11月29日(現地時間)に行われました。6名の審査員が1500枚以上の写真、50本の映像作品から各部門での1位〜3位を選定。撮影した空軍兵を表彰しました。
イギリス空軍には、任務や訓練などの記録や、広報素材などを撮影する写真員が各基地に配属され、さまざまな写真や映像を手掛けています。そんな「軍の公式カメラマン」たちが、普段の任務で撮影した作品の優秀作を選定するのが、RAFフォトグラフィック・コンペティションです。
コンペの部門は7つ。そのうち、一般投票で選ばれる「ピープルズ・チョイス」を除く6部門は、6名の審査員によって選定されました。なお写真部門の出品作は、露出とコントラスト調整以外のデジタル処理が禁じられています。
まずは人物部門。第1位に選ばれたのは、マーラム空軍基地のクレイグ・ウィリアムズ1等兵による、新型コロナウイルスの検査に従事する空軍兵を撮影した「パンデミック」でした。
富士フイルムの協賛で贈られる「ザ・マレット・スチューデント・トロフィ」。第1位はワディントン空軍基地のアメリア・ターンブル1等兵が撮影したリーミング空軍基地の雪景色「ウィンター・ワンダーランド」です。まるで水墨画のような世界が広がっています。
複数の写真(組写真)が審査対象となる「セクション・ポートフォリオ」の第1位は、ブライズノートン空軍基地の統合空輸試験評価隊写真ユニットに所属する写真員が撮影した作品。降下する直前、航空機のドアに外側からしがみついている空挺隊員や、ユーロファイター・タイフーンらに空中給油するボイジャー(A330MRTT)などの写真5枚で構成されています。
現在イギリス空軍が運用している装備品を対象とした「現用空軍装備品」部門では、ブライズノートン空軍基地のリー・マシューズ伍長がC-130Jを撮影した「グリフィン」が第1位に選ばれました。キプロスのアクロティリ空軍基地を離陸し、ほぼ垂直に上昇してくるC-130Jの姿を正面から捉えた迫力ある写真です。
空軍の様々な作戦や訓練での様子を題材とした「空軍作戦・訓練」部門の第1位は、ブライズノートン空軍基地のリー・マシューズ伍長。中東の対テロ作戦で、夜間にユーロファイター・タイフーンへ空中給油するため滑走路から離陸するボイジャー(A330MRTT)をコクピットから撮影した作品「マインド・オーバー・マター」です。
第2位には、アフガニスタンの政権崩壊からタリバンの実権掌握にかけての混乱で、タリバンから逃れるアフガニスタン人たちを国外脱出させる「ピッティング作戦」におけるハルトン空軍基地のウィル・ドラミー伍長の「温かい歓迎(Warm Welcome)」が選ばれました。不安な気持ちを和らげようと、小さな女の子にユニコーンのぬいぐるみをプレゼントするイギリス空軍兵の優しい目が印象的な作品です。
審査員ではなく、上位入賞作品から一般投票によって選ばれる「ピープルズ・チョイス」部門。第1位になったのは、タイフーン・ディスプレイの新塗装機がドーバー海峡上空を飛ぶ姿を捉えた、コニングスビー空軍基地に勤務するダフィッド・ルイス上等兵の「フライング・ホーム」でした。これは現用空軍装備品部門の第3位です。
写真ではなく、短編映像作品を対象とした「ビデオ部門」。第1位に選ばれたのは、C-130Jのパイロット、ボビー・マンソン大尉をフィーチャーした「トゥ・インフィニティ・アンド・ビヨンド」という作品。撮影と編集は。ブライズノートン空軍基地のリー・マシューズ伍長です。
リー・マシューズ伍長は、現用空軍装備品部門、空軍作戦・訓練部門、ビデオ部門に加え、セクション・ポートフォリオ部門でもブライズノートン空軍基地チームの一員として作品が第1位に選ばれており、計4部門で1位を獲得しました。ある意味、この1年で最も優秀な作品をものにしたカメラマンといえるかもしれません。
このようなコンテストを毎年開催し、一般に作品を公開することで、写真員たちは自分の仕事に誇りを持ち、モチベーションを高めることができます。また、一般の人に対しても軍がリリースする写真や映像の撮影者を広報することで、様々な職種が軍にあることを知らせ、志願者の募集にもイギリス空軍は役立てているのです。
<出典・引用>
イギリス空軍 ニュースリリース
画像:RAF, Crown Copyright
(咲村珠樹)