NASAは2021年12月6日(現地時間)、4年ぶりとなる新しい宇宙飛行士候補生10名を発表しました。1万2000名以上の応募者の中から選抜された宇宙飛行士候補生の内訳は、男性が6名、女性がオリンピックを目指していたプロアスリートを含む4名。2022年1月より訓練を開始し、2年後には宇宙飛行士としての資格を獲得する予定です。
2017年の22期生以来、4年ぶりに誕生したNASAの宇宙飛行士候補生は、今回が23期生となります。合格者の発表式典はテキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センター近くにある、エリントン飛行場(エリントン統合予備役基地)で行われました。ここはT-38練習機による宇宙飛行士の飛行訓練が実施される場所です。
式典で、NASAのネルソン長官は「今日、私たちは10名の新たな探訪者(エクスプローラー)、アルテミス世代の10名をあたたかく迎えました。単独で見れば、それぞれが正しい資質(ライトスタッフ)を備えていますが、全員が揃うとわが国の信条『エ・プルリブス・ウヌム(ラテン語で「多くのうちの1つ」)』を示しています」と、新たな宇宙飛行士候補生を紹介しました。
今回の選抜試験で、NASAは新たな取り組みとして、受験生にSTEM(科学・技術・工学・数学)の分野における修士以上の学位を要求するとともに、オンラインの評価ツールを使用しました。これはSTEM教育を重視するという考え方を示すと同時に、新型コロナウイルス禍の影響で直接での面接や試験が実施できないことに対応したものです。
選抜された10名の内訳は以下の通り、男性が6名、女性が4名。アメリカの50州だけでなく、アメリカの自治連邦区であるプエルトリコの出身者も選ばれており、バラエティ豊かな顔ぶれとなっています。
ジェシカ・ウィトナーさん(38歳女性:テストパイロットの海軍中佐:カリフォルニア州出身)
クリストファー・ウィリアムズさん(38歳男性:物理学博士:メリーランド州出身)
ニコル・エアーズさん(32歳女性:F-22パイロットの空軍少佐:コロラド州出身)
アンドレ・ダグラスさん(35歳男性:システム工学博士:バージニア州出身)
ルーク・デラニーさん(42歳男性:元テストパイロットの退役海兵隊少佐:フロリダ州出身)
クリスティーナ・バーチさん(35歳女性:生物工学博士:アリゾナ州出身)
デニス・バーナムさん(36歳女性:機械工学修士の海軍大尉:アラスカ州出身)
ジャック・ハサウェイさん(39歳男性:テストパイロットの海軍中佐:コネチカット州出身)
マルコス・ベリオスさん(37歳男性:テストパイロットの空軍少佐:プエルトリコ出身)
アニル・メノンさん(45歳男性:医師の空軍中佐:ミネソタ州出身)
ニコル・エアーズさんはアメリカ空軍でも数少ないF-22の女性パイロット(コールサイン:ヴェイパー)で、選抜時点ではアラスカ州エルメンドルフ空軍基地の第90戦闘飛行隊に勤務。そしてアニル・メノンさんは医師としてスペースXやNASAの有人飛行計画に参加しており、スペースX初の有人飛行「デモ-2」ミッションでもフライトサージョンを務めました。
クリスティーナ・バーチさんは、研究のかたわらプロの自転車競技選手としても活躍し、東京2020オリンピックでもトラック長距離のアメリカ代表チームに最終予選まで参加していたといいます。オリンピックを目指すアスリートも宇宙飛行士候補に選抜されるんですね。
今回、10名が宇宙飛行士候補生として選抜されたことで、NASAが選抜した宇宙飛行士(候補生含む)は360名となりました。1959年の1期生「マーキュリー・セブン」から60年あまり、これからの宇宙飛行士はケネディ大統領が目指した月のほか、もっと遠くの火星へと向かう計画に参加することになります。
(咲村珠樹)