NASAは2021年9月1日(現地時間)、小型の電動垂直離着陸機(eVTOL)、いわゆる「空飛ぶクルマ」を使った空の都市交通「空のタクシー」実現を目指した飛行試験を始めたと発表しました。NASAがeVTOLをこの種の試験に使うのは初めてのことで、9月10日までカリフォルニア州で様々な飛行を重ねる予定です。
小規模な電動垂直離着陸機(eVTOL)を使った空の都市交通については、現在多くの国や企業で研究開発が続けられています。NASAは今回、カリフォルニア州にある航空ベンチャー企業のJoby(ジョビー)と協力し、同社のeVTOLで飛行試験を実施します。
JobyのeVTOLは、主翼に4つ、尾翼に2つ、計6つのプロップローターを装備した電動ティルトローター機。過去10年で1000時間以上の飛行試験を重ねており、Jobyでは2024年の「空のタクシー」商用サービス開始を目指して、アメリカ連邦航空局(FAA)に対する「空のタクシー」航空会社としての認証プロセスを進めています。
今回の試験で、NASAはeVTOLの飛行性能と騒音のデータを収集し、将来の先進航空モビリティ(AMM)実現に向けた開発やシミュレーションに役立てることを目標にしています。「空のタクシー」や「空飛ぶクルマ」が実用化された場合、それぞれが勝手に飛び回るのではなく、何らかの管制ルールを作る必要があり、そのためのデータ収集が重要です。
試験が実施されるのは、アップルのmacOS 11で名称となった、カリフォルニア州のビッグサー(Big Sur)周辺。ここにはJobyの飛行試験拠点があり、NASAは研究者を派遣してJobyと試験を進めます。
Jobyの創業者であるジョーベン・ベバートCEOは「NASAは航空の電動化における重要な触媒であり、2012年の初コラボレーション以来、多くの画期的なプロジェクトをともに実現してきました。私たちは先進航空モビリティ(AMM)についての全国キャンペーンで飛行する最初のeVTOL企業となれて、非常にワクワクしています」との談話を発表しました。
NASAでAMMプログラムの統合ミッション・マネージャを務めるデイヴィス・ハッケンバーグ氏は「この開発試験全国キャンペーンは、先進航空モビリティ(AMM)業界発展を促進するというNASAの目標における、戦略上の重要なステップです。今回の試験におけるシナリオは、現在の標準的空域管制におけるギャップを私たちに知らせ、AMM航空機を実際の空域に統合するという業界の発展に役立ちます」とのコメントを発表しています。
試験ではJobyのeVTOLを使い、どのようにeVTOLが動くのか、発する音はどのようなものか、どのように管制官とコミュニケーションするのかなどを実際の飛行を通じてデータを収集します。また、移動式の音響試験設備にeVTOLを入れ、飛行における様々な局面でどのような音響特性があるのか、50本以上のマイクを使って調べるとのこと。
Jobyは日本のトヨタとも開発協力協定を結んでおり、将来的にはJobyとトヨタが共同開発したeVTOLが日本で飛行試験するかもしれません。今回はカリフォルニア州で試験が実施されますが、同種の試験はアメリカ各地でも行われる予定です。
<出典・引用>
NASA プレスリリース
Joby Aviation プレスリリース
Image:Joby Aviation
(咲村珠樹)