恋人関係ではないのに気軽にスポーツ感覚で体の関係を持ってしまう「セフレ」が流行したことに驚いたのはもう10年以上前。最近では体の関係がない添い寝するだけの友達である「ソフレ」から、キスだけする友達「キスフレ」まで登場するようになり、今の若者の間では現代をファッショナブルに生き抜く上で大事だと言われているようです。一部の話だと信じたいところですが。

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2016年はカモフラージュ・フレンドが来るらしい

■CKP=ちょっと恋人っぽい、という関係

「恋人ではないけれど親密な関係」を意味するCKPが若者たちの間で流行している理由は「男女交際するのはちょっと気が重いけれど独りじゃ寂しいし人肌も恋しい」というメンタルからと考えられています。

誰かと一緒にいることを仰々しいものにしたくなく、自然と気持ちが高ぶったら正式な恋人どうしになればいい、という考え方を持っている人も結構いるようです。つまり、いきなり恋人どうしになると気が合わなかったときに別れたりするのも大変だから、ということなのだとしたら非常に合理的ですよね。

■恋愛したがらない男子たち

男女交際はもともとは結婚の準備段階とされていました。特に女性には貞操が求められ、婚前交渉を否とする社会的背景があり、時代の移り変わりと共にそれが緩和されていくと同時に婚前交渉や婚前の同棲がごくごくありふれたものになってきました。

現代では、「付き合う=体の関係がある」ということとほぼ同義とされていますが、その反面で性的行為をあまり好まない草食系男子や仏男子、恋愛をしない絶食系男子などが取り沙汰されることでもわかるように、趣味や仕事を大事にする男性も目立つようになっています。彼らにとって恋愛にかける時間はロスだと思えてしまうようです。

■現代を象徴するような漫画『太陽が見ている(かもしれないから)』

そんな昨今の流行を象徴するような漫画を最近読む機会がありました。

人気作家であるいくえみ綾さんの『太陽が見ている(かもしれないから)』です。
いくえみ綾さんの漫画は憧れのシチュエーションに放り込まれた、もしくは巻き込まれてしまった男女の恋愛模様が描かれることが多いのですが、この作品では母とその恋人と一緒に暮らしていた主人公の深山岬が中学時代にちょっとしたことから仲良くなった廣瀬楡と高校入学後、彼が父親から与えられた平屋で半同居状態の生活を送り始める、という物語です。
楡は平屋で暮らすにあたり岬の部屋をわざわざ用意してくれるほどで「序盤では語られないけれど二人は自然と恋人どうしに発展していっているのね」なんて微笑ましく見守っていたのですが、それは大間違いでした。

二人の間に体の関係はなく、いくら仲が良くて生活を共にしていても恋人どうしには発展していませんでした。さらに、途中から楡の幼馴染で高校で再会した井田日帆もこの同居に片足を突っ込んでくるのです。「じゃあ三角関係ものか」と思われそうなものですが、たしかにそんな流れにはなるものの一緒に住んでいるのに楡は岬のことを「仲間」だと言い切ってしまっているのです。

たしかに男女でルームシェアしている人たちもいるけれど、それは仲が良すぎずほぼ干渉しあわないことが前提かいずれ恋人どうしになることを見越してでは……と思ってしまうわたしの考え方が古いのでしょうか。
まさに岬と楡の関係こそ、現代に象徴されるCKP関係なのではないでしょうか。楡と岬は端から見たら、恋人どうしじゃないと言われるほうが違和感があるくらい仲睦ましいのです。

■ソフレが欲しい人が溢れている?

SNSをざっと見てみたところ、ソフレが欲しい人は意外に結構いるようで「実際にいる」「いると聞いたことがある」という人もちらほら見かけました。
けれど彼氏や彼女がいる人に、「別にそういうソフレやキスフレのようなCKP関係の相手がいるとしたら絶対に嫌だ」という声も。
さらに最近では結婚後にソウルメイトと出会ってしまい、体の関係がないプラトニック不倫に陥るなんていう人もいて、「男女間の約束って何なんだろう……」と考えさせられてしまいました。添い寝をしたら我慢できなくなっちゃう人のほうが多い気がするのですが、それはやっぱり肉食女子という名前が生まれた世代の人間だからでしょうか。

現代の若者にとってはファッション感覚?

そんなCKP関係を上手に渡り歩く人たちは、SMクラブに勤務していた筆者の目線でみると「風俗を利用する既婚男性に似ているなあ」とも感じたりしました。
妻はいるけれど性癖に由来する性欲は満たしたい。けれど外で相手を探すと後々面倒なことになるのでお金を支払ってシステムがきちんとしているお店に通う。精神性を重視するために本格的なプレイを好む方には当てはまりませんが、ライトなプレイを好むM男性にはこういう方が多い傾向にあります。CKPには間に金銭が介在しませんが、重い気持ちを発生させたくなけれど欲を満たしたいという点では非常に似ています。

■CKP関係は美味しいけれど……

責任の所在は別として「自分の欲求を満たすために相手を傷つけず自分への負担も重くはしない方法はないか」と考えたときに「CKP関係の相手をつくるのがベストである」と考えるのは本来は延長線上に結婚がある男女交際の重量感を軽減しつつ、人肌のぬくもりはゲットしたいという考えであることが多いように感じますが、それを是とするか否とするかは個人の問題です。

しかし、自分の恋人が自分以外の人と添い寝したりキスしたりすることを是とする人は少数派ですので、CKP関係の相手をつくる場合は正式な恋人がいない人に限ったほうがいいのではないだろうか、と老婆心ながら思いました。

そんな中、ニュースサイトの『モデルプレス』が、2016年はカモフラージュ・フレンド、通称カモフレが流行の兆しとして紹介していました。
これは恋人っぽく見えて、実はそうではないという関係。いや、もう恋人どうしでいいじゃん……と思わず突っ込んでしまってから「はっ、でもこれが若者の間では普通の感覚かもしれないのね」と思い直して、おばちゃんもうついてけないわ……とトレンドに置いてきぼりをくらってしまったのでした。

「恋人ではないけれど親密な関係」を意味するCKPが若者たちの間で流行している理由は?

(文:貴崎ダリア)