最近、ネット上で緊急時の動画撮影の是非が話題となり、緊急時であるからこその状況証拠としての動画撮影は重要であるという結論に達しています。
子供の発熱や不意に現れる病気の症状などで救急外来にかからねばならない事態が発生した時、言葉で症状を伝えるのが難しい時があります。特に、意識消失やけいれんなどどれくらいの間にどのような状態になっているかを的確に伝えるのは言葉に言い表そうとすると医療関係者でもないと物凄く困難です。
そんな時に活用できるのが、スマホやデジカメの動画撮影。慌ててオロオロしてしまいそうになりますが、冷静に症状が起こった時の様子を撮影する事で的確に状況を伝えやすくなります。では、実際に症状が急変した時にどう動いていけばいいのか、詳しく解説してみましょう。
【子供のけいれんの場合】
まず、けいれんが起こり始めたら静かに顔を横向きにして寝かせ撮影を開始します。仰向けのままだとけいれん時に舌を噛んでしまうので顔は横向きです。体も左右どちらかを下にして横に向かせておきます。
クッションがあればクッションに上になっている腕や足を置いてあげると楽な姿勢が取れます。子供が楽な姿勢を取れたら熱を測り、顔色や意識の状態を確かめます。熱性けいれんの場合は大概熱が38度以上、けいれんは1分前後で治まる事が多いのですが5分以上続く、短時間に繰り返し起こす、けいれん後意識が戻らないなら救急車を呼んでいいレベル。2~3分で治まるようなら小児科が診察している時間帯に動画を持参して受診しましょう。
小さい子供の場合、怒り狂って大泣きした挙げ句にひきつけを起こしてけいれんになる事もあります。この場合は慌てて受診しなくても大丈夫。原因が何かを判定する為にも動画を撮っておくことが手掛かりとなります。
てんかん発作の場合、ぼーっとしている様に見える小発作から体全体が大きく揺れる大発作まで症状の出方が様々な場合もあります。明らかな異常事態であればすぐに救急車を呼べますが、何かおかしいな?いつもと様子が違う様な感じだけど救急車を呼ぶほどではないかもと思った時に動画を撮影しておくと、診察時に小児科医がその動画を見て診断しやすくなります。
いずれのけいれん発作も、その場ですぐに死ぬことはないので落ち着いて対応すれば大丈夫です。
【大人の急変時】
高齢者を介護していると意識消失発作に出くわすことがあります。また、働き盛り世代でも突然の心疾患に見舞われることも。この場合、緊急度は様々です。
○顔色が突然蒼白になった、または赤黒くなった場合:
呼吸と心拍を確認します。どちらかが止まっている、または脈が異常に早い場合はすぐに心肺蘇生法を行いながら救急車を。 AEDがあれば速やかに使いましょう。
○呼吸と心拍が確認できる場合:
状態を動画に撮りながら、血圧や熱を測ります。体をトントンと軽く叩いたり呼びかけたりした時に何らかの反応があればそのまま様子を見て、病院の診察時間に総合内科や神経内科へ動画を持って受診へ。
高齢者だと大量に排尿や排便があった時や入浴時に意識消失が起こる事があります(筆者も施設勤務時代に何度も目の当たりにしました)。また首をグイっと動かしたときやネクタイをきつく締め過ぎた時などに起こる頚動脈洞過敏症候群も意識消失が起こりやすくなります。原因が分かっている意識消失であれば血圧の変動に注意して様子を見る事で大概は回復しますが、繰り返すことも多いので原因をはっきりさせるためにも一度診察を受けておくと安心につながるかと思います。
いずれにしても、何らかの異常が現れた時は慌てずに症状を記録して診察に繋げていく事が大事です。急変時に一緒に測った体温や血圧などの数値も動画内に映り込むようにしておくと症状出現時の数値が一緒に記録できるので確実に伝える事ができますのでいざという時の参考になればと思います。
<参考文献>
失神の診断・治療ガイドライン – 日本循環器学会
慌てず様子の観察を~熱性けいれん~
(看護師ライター・梓川みいな)