日々進化するAIの技術。「ChatGPT」の登場は、世間の考え方やビジネスモデルを一気に転換させたと言っても過言ではありません。AIが進化すれば、もはや人間の作業は不要になる。そんな期待が持たれています。
そんな中、この夏休みにAIを使って「楽をしてやろう」と考えている方々はいないでしょうか。筆者も実はそれができるんじゃないかと期待しておりました。おとなになった今では「夏休みの宿題」をやることはないのですが、実際にAIが代理でやれるかどうかは気になります。
今回は夏休みの宿題を「ChatGPT」に本当に任せられるのか?使えるのか?という疑問について、ある意味筆者の「自由研究」として調査しました。
【注意:本稿の目的について】
本稿は「ChatGPTに夏休みの宿題をやらせてみてその結果を紹介する」というだけのものです。ChatGPTの宿題利用を推奨する意図はありません。宿題などでのChatGPTの利用は各学校・教員などの判断に委ねられています。学生の方は各所属方針に従ってください。
■ 夏休みの宿題を「ChatGPT」にやらせるプロンプト
夏休みの宿題に関して「ChatGPT」に「”夏休みの宿題をやってくれ”」と単純に頼んでも、依頼内容が曖昧すぎて希望の答えは出してくれません。そのため、まずはChatGPTに「お題」を与え、求めている「答え」を導き出させるよう、的確な「命令」を与えなければなりません。
その命令となるものが「プロンプト」と呼ばれるものですが、まずは試しに「レポート」を書かせてみようと思います。
テーマは、絶賛公開中のスタジオジブリのアニメ「君たちはどう生きるか」についてです。
御存知の通り「君たちはどう生きるか」に関して、現段階では大々的なプロモーションは行われておらず、詳細はあまり知られていません。つまり、この映画の感想を書くにはまず「映画」を見なければわからないハズ。
ちょっと意地悪なテーマではあるのですが、嘘をついてしまえば「レポート」として成立しません。つまり、今回のこのお題が、「夏休みの宿題に使えるか」について調査するには適切かと思われます。
ちなみに、筆者は既に映画を見ているので、「正解」か「不正解」かはわかります。ということで以下のプロンプトで、文章を書かせてみました
▼プロンプト
小学5年生の文章で、スタジオジブリの「君たちはどう生きるか」について400字の感想文でまとめてください
結果……(ネタバレはありません)
▼ChatGPTの答え
「君たちはどう生きるか」はスタジオジブリの作品で、小学5年生にとっても心に残る素晴らしい映画でした。この映画では、主人公の少年・宮沢章の成長と冒険が描かれています。
まず、この映画のストーリーはとても感動的でした。章くんは祖父の言葉に触発され、何が本当に大切なのかを考える旅に出ます。自然の中での冒険や友情、家族の大切さなど、たくさんのメッセージが詰まっていました。これらのメッセージは私たちにも考えさせられることが多く、何度も心に響きました。
内容どころかまず主人公の設定からして誤り。ChatGPTによると、「宮沢章」という謎の主人公が出てくるようですが、映画ではそのような設定はなく、原作の漫画にも登場しません。
つまり、内容としてはかなり「怪しい」情報となってしまい、レポートとしては提出するのは難しそう。
この状態だと、間違いなく先生に「どこから引用したんだ、AIをつかったんじゃないか?」と突っ込まれても仕方のないレベルです。
■ 夏休みの宿題を「ChatGPT」にやらせるプロンプト その2
もう1つ実験してみたいとおもいます。
実はChatGPT等の生成AIを研究対象とするGPT研究所「日本マネジメント総合研究所合同会社」という組織が、「ChatGPTで夏休みの自由研究レポートを出力させるプロンプト(ひな形)」を無料公開しております。
このプロンプトを使えばもう少し、高精度の自由研究や感想文が出力されるのではないか。そう考えたのです。
ということで、上記プロンプトを活用し、試しに出力をさせてみました。プロンプトはこんな感じです。
▼プロンプト
優秀な信頼性あるプロの学習塾の講師として、以下の制約条件を基にして小学生が提出する夏休みの自由研究の宿題として執筆するレポート文面を出力してください。
制約条件1:本文の文字数は800文字以上で1200文字以下
制約条件2:小学後年生が書くレベルの内容と文体
制約条件3:昆虫に関する身近な話題を取り上げる
結果……
▼ChatGPTの答え
こんにちは、みなさん。夏休みの自由研究の宿題に取り組む皆さん、お疲れ様です。今回のテーマは、「身近な昆虫の不思議な世界」についてです。私たちの身の回りには、たくさんの昆虫が生息しています。その中から、興味を持った昆虫を取り上げてみましょう。
まずは、私が昆虫の中で特に好きな「てんとう虫」についてお話しします。皆さんも公園や庭で見たことがあるかもしれませんね。てんとう虫は、赤と黒の模様が特徴的な小さな昆虫です。なんと、この模様は種類ごとに異なるんですよ!それだけでなく、てんとう虫は植物にとっても役立つ存在です。なんと、てんとう虫は害虫を食べてくれるんです。私たちが快適に過ごすためにも、てんとう虫の存在はとても大切なのです。
次に、知っていると面白い「カブトムシ」についてお話ししましょう。夏になると夜になると、窓の外でカブトムシの羽音が聞こえてきますよね。カブトムシは強い力を持っていて、木の枝をカチカチとかじっています。これは、仲間同士とのコミュニケーションなんだそうですよ。カブトムシの大きな角も特徴的ですね。これはメスを引き寄せるために使われるんですって!カブトムシは、力強い姿の裏にもロマンが詰まっているんですよ。(以下略)
これは素晴らしい。確かに小学生が書いたような文章として、難しい用語は使わず、小学生ならではの視点での研究結果を出力しています。
プロンプト次第では、自由研究を行うにはそれなりに使えるのではないかと感じさせられます。
■ もう一度「君たちはどう生きるか」の感想文を書かせてみた
先の結果を踏まえ、先程行った「君たちはどう生きるか レポート」に戻り、上記プロンプトを使ってもう少し正確なレポートを出力させてみたいと思います。
これでようやく、夏休みの宿題を出せるレベルに……そう期待し出力させてみたところ……
▼ChatGPTの答え
夏休み読書感想文:スタジオジブリ映画「君たちはどう生きるか」に学ぶ大切なこと
みなさん、こんにちは!夏休みの読書感想文の宿題、楽しんで取り組んでいますか?私がオススメする本は、スタジオジブリの映画「君たちはどう生きるか」の原作です。
この物語は、主人公の少年・宮沢章が祖父の言葉に触発されて、自分自身や周りの大切な人たちと向き合い、成長していく姿を描いた感動的な作品です。映画でも多くの人々の心をつかみましたが、原作の深いメッセージもぜひ味わってください。
(以下略)
相変わらず主人公は「宮沢章」という点はさておき、今回の結果は少々驚きです。
なぜならば、依頼した映画のレポートを出力するのではなく、原作を薦めるという方針転換がされております。理由は不明ですが「夏休みの宿題」ということで、もしかしたら「映画の感想」だけでは宿題としてのレベルに達することができず、「原作を読んでみた」ということにしたのかもしれません。
ただし、今回の文章にも出てくる「宮沢章」に関しては、「虚偽」ですのでこれは明らかに問題になります。ちなみに原作の主人公は「宮沢章」ではなく「コペル君」(本田潤一)です。
結論として、プロンプト次第ではそれっぽい文章を出力してくれるものの、ところどころ情報の正確性が乏しい箇所が生じています。
これは情報ソースが、今までChatGPTが学習した「データセット」から引用されているためであり、その「データセット」が誤っていれば当然出力結果も誤ってしまうのです。
つまり、夏休みの宿題として「ChatGPT」を使うと、もしかしたらデタラメな情報で自由研究やレポートを作成してしまうおそれがあり、それが発覚した場合、課題として受理されない可能性があります。
この調子だと素直に自分で調べて宿題をしたほうが、遥かに正確でスキルアップにもつながるかと思います。
以上、ChatGPTが「夏休みの宿題」に使えるかどうか、という「夏休みの自由研究」でした。
<参考・引用>
ChatGPT
ChatGPTで夏休みの自由研究レポートを出力させるプロンプト(ひな形)の無料公開: 生成AIの活用とGPT監査・宿題代行の是非など(GPT監査シリーズ⑫)【日本マネジメント総合研究所合同会社】
(たまちゃん)