細い芯に彫刻するという驚きの手法で、数々の作品を生み出してきた「鉛筆彫刻人」のシロイさんが、8月30日にX(Twitter)で新作を発表しました。

 今作は真っ赤なカラーが目印、昔懐かしの「丸型郵便ポスト」がモチーフ。その特徴的な円筒型の形状はもちろんのこと、投函口や取り出し口もしっかり再現されています。もう一度言いますが、これは鉛筆の芯に彫刻した作品です。

 シロイさんが今回、この情緒あふれる丸型ポストをモチーフとしたきっかけは、郵便局を訪れた際、外に設置されたポストを見かけたこと。

 特に最近は自身の活動において、意識して色鉛筆を彫刻しており「『赤』のイメージが強いポストは赤鉛筆にピッタリだ!」と着想を得たことから、小さくてかわいさが際立つ丸型ポストの制作を決意したのだそう。

加工前の赤鉛筆

■ こだわったのは「投函口」と「歪みのない彫刻」

 デザインナイフやカッター、やすり、針などを使用し、芯を削っていくという工程を経て完成した作品の大きさは、ハガキの郵便番号枠(約8mm)と同じという小ささでありながら、全体の丸みや細かいディテールが見事に再現されています。

 中でも投函口はこだわった部分で、投函口屋根の丸み部分はもちろんのこと、穴を開けて投函口の奥まで彫刻されていることが確認できます。シロイさんによると、「横幅1mm未満のハガキでしたら投函可能ですよ」とのこと。よ……用意するのが大変そう……!

作品の大きさは8mmほど。

 また、丸みを持たせながらも、歪みのない彫刻を目指した点も、力を入れたポイント。事前の試作段階では丸みを意識しすぎて、細長い印象のポストとなってしまいましたが、本番ではしっかりと修正し、本物さながらの味わい深さを感じるフォルムとなっています。

■ 色鉛筆の彫刻は黒鉛筆と比べて圧倒的に難しい

 最近特に意識して色鉛筆制作に取り組んでいるという点について、黒鉛筆と色鉛筆でどのような違いがあるのか?聞くと、「両者は性質が全く異なり、色鉛筆の方が圧倒的に難しい」とのこと。

 芯に含まれる油分が強く、削りにくく、折れやすいという性質を持ち、さらには色によっても削りやすさが異なってくるのだそう。並大抵の集中力や技術では到底制作できないことは明らかですが、そこに芯材の違いまで加わってくるとは、ただただ唖然。

色鉛筆の作品

 しかしながら、「それでも色という情報が1つ増えるだけで作品の魅力が増しますので、できれば積極的に挑戦していきたいですね」とシロイさん。

 完成度の高い作品を作ることはもちろんでしょうが、自身の技術の研鑽にも一切の余念がありません。更なる高みを目指して、シロイさんの創作は続きます。

<記事化協力>
シロイ/鉛筆彫刻人さん(@shiroi003

(山口弘剛)