2018年2月8日(現地時間)、スウェーデンの航空・軍事大手サーブは、三菱MRJ用の整備マニュアルを含む技術文書一式を制作完了したと発表しました。これはサーブにとって、最も大きな自社以外の技術文書制作案件です。
2009年、サーブは三菱航空機とMRJに関する技術文書制作に関する契約を結びました。防衛省以外の顧客に対して航空機を販売した経験の少ない三菱にとって、様々な顧客に対応する整備マニュアルなど、技術文書制作に関してのノウハウは持っていません。そのため、この業界で豊富な実績を持つ企業のひとつであるサーブに、技術文書の制作を委託したというわけです。
それ以来、サーブはMRJの数万ページにも及ぶ整備マニュアルなどを制作してきました。マニュアルは読み違いがないよう、技術的な専門用語を交え、簡潔な表現で書かれなくてはなりません。このマニュアルは、現在も続いているMRJの試験飛行の際にも用いられ、その中身も実際の状況に即してブラッシュアップされてきました。
2018年1月、その最終版が三菱側に納入されました。この技術文書は業界の標準的な規格であるASD-S1000Dというものに準拠して制作されています。
サーブの技術文書制作部門のトップ、ヨアキム・トーンクビスト氏は、このMRJ技術文書制作について「異なるふたつの文化と言語を橋渡しする必要があったので、非常にチャレンジングなものでした。また、時差も大きかったので大変でした。初めから多くの人が携わり、みんなの尽力がなければ成し遂げられなかったと思います」と、制作に携わったスタッフの労をいたわるコメントを発表しています。
顧客が使用する技術文書が完成したことで、MRJの開発プロセスがまたひとつ、進みました。試験飛行も折り返し点となる1700飛行時間を超え、現在はアリゾナ州フラッグスタッフで高地運用試験を行っています。
Image:SAAB
(咲村珠樹)