2019年5月9日(アメリカ東部時間)、アメリカ空軍は休止状態にあった第65仮想敵(アグレッサー)飛行隊を復活させ、あわせて11機のF-35Aをネバダ州ネリス空軍基地へ配置すると発表しました。ステルス戦闘機を装備した仮想敵飛行隊は世界初。空軍はこの飛行隊について、F-35をはじめとする第5世代戦闘機における空戦技術や、近接航空支援のあり方を編み出し、パイロットに伝授することを目的とする、としています。
仮想敵飛行隊は、戦闘機パイロットの技量を向上させるため、演習の相手方となって空中戦などを行うことを任務とした飛行隊。アメリカ空軍では「アグレッサー(侵略者)」、アメリカ海軍では「アドバーザリー(相手方)」という呼称を用いています。日本の航空自衛隊では、石川県の小松基地に所在する飛行教導群がその任務に当たっています。
この部隊に所属するパイロットは、優秀な戦闘技量を持つだけでなく、第三者的に自分と指導するパイロットの動き双方を把握するという能力も必要。そして、そのパイロットの問題点を的確に指導するという教官としての技量も必要とされ、まさに戦闘機乗りのエリート的存在です。今回復活するアメリカ空軍の第65仮想敵飛行隊(65AS)は、かつてF-15Cを装備した飛行隊でしたが、2014年9月をもって休止状態に置かれていました。
第65仮想敵飛行隊の復活に際し、使用するF-35Aは新規調達ではなく、フロリダ州エグリン空軍基地にある、戦闘遂行能力を持たない初期生産分9機を移転することになっています。F-35Aの初期生産分は兵器運用能力の搭載が生産までに間に合わず、ほぼ飛行訓練専用の状態となっていましたが、これを転用するというわけです。ただしすぐということではなく、エグリン空軍基地に補充用の新規調達分が到着してからネリス空軍基地へ移転させることとしており、計画では2022年の初め頃をめどとしています。
あわせて、同じネリス空軍基地に所在する第24戦術航空支援飛行隊(24TASS)には、エドワーズ空軍基地から2機のF-35Aが移転し、F-35Aによる近接航空支援(CAS)の戦技研究に使用されることになりました。現在24TASSでは、F-16を使用して近接航空支援の戦技研究が行われていますが、これに加え、F-35Aを使用した近接航空支援のあり方も研究するということです。2019年4月にF-35A初の実戦参加(近接航空支援任務)が行われましたが、戦術機としてさらなる能力向上を目指すアメリカ空軍の姿勢を明らかにしたものといえるでしょう。
これら飛行隊の復活と航空機の配置に伴い、ネリス空軍基地には194人の将兵が赴任することとしています。ステルス戦闘機を駆る仮想敵飛行隊が誕生することで、これまでとは違った演習も実現しそうです。
Image:USAF
(咲村珠樹)