陸上自衛隊がオーストラリアで行う国際合同訓練「サザン・ジャッカル」が、2019年5月中旬からオーストラリア北部クイーンズランド州にあるオーストラリア陸軍ショール・ウォーターベイ演習場で始まりました。今回は、オーストラリア陸軍とアメリカ海兵隊の部隊、そして陸上自衛隊からは第12旅団の第13普通科連隊を基幹とする約160名が参加。この中では、第12特科隊による155mmりゅう弾砲FH70の実弾射撃が、オーストラリアで初めて行われています。
陸上自衛隊の主力火砲である155mmりゅう弾砲FH70は、通常弾の場合最大で約24kmという長大な射程距離を誇りますが、日本国内の演習場では狭すぎて、最大射程での射撃訓練は実施できない状況にあります。このため、アメリカで行われる日米合同訓練の機会に、アメリカ軍の広大な訓練場で射撃を行ってきました。
そんな中、2018年に行われた日本とオーストラリアの防衛大臣会合で、オーストラリア軍との合同演習について連携拡大を図る合意により、陸上自衛隊がオーストラリア軍の保有する施設で訓練が可能になりました。今回「サザン・ジャッカル」で初めて実現したFH70の実弾射撃訓練は、その象徴的な出来事なのです。
敷地面積4545平方kmという、広大なショール・ウォーターベイ演習場の一角にある射撃訓練場で、陸上自衛隊の第12特科隊(栃木県宇都宮駐屯地)は、およそ25km離れた弾着帯に向け、FH70の性能をフルに発揮した射撃を行いました。この合同訓練のホスト役となる、オーストラリア陸軍第7旅団の司令官、アンドリュー・ホッキング少将は「陸上自衛隊がこの演習で実績を作ったことは誇りに思うべきですし、我々もその場に立ち会えて誇りに思います」とオーストラリアで初めて行われた155mmりゅう弾砲の実弾射撃訓練について語っています。
また、この訓練についてホッキング少将は「砲の能力というものは、弾頭の効果と砲の射撃による複合的なものです。陸上自衛隊の諸君はそれを見事になし遂げました。これは陸上自衛隊にとって大きな自信になるだけでなく、我々にとっても共に助け合いながら平和と安定のために任務を行える、という自信を与えてくれるものです」と、日本とオーストラリアが共同で任務に当たる意義も説いています。
2019年の日豪米合同訓練「サザン・ジャッカル」はこのほかにも、陸上自衛隊の第13普通科連隊が参加した都市内戦闘訓練などが行われています。自衛隊単独だけでなく、オーストラリア陸軍の歩兵部隊と協力し合い、都市内で発生しやすい近距離でいきなり相手と遭遇する近接戦闘(CQB)などのノウハウを吸収しています。
日豪米合同訓練「サザン・ジャッカル」は、6月14日までショール・ウォーターベイ演習場で行われる予定となっています。
<出典・引用>
陸上自衛隊 プレスリリース
オーストラリア国防省 プレスリリース
Image:Commonwealth of Australia, Department of Defence/USMC
(咲村珠樹)