2020年の打ち上げを目指すNASAの火星探査機「Mars 2020」。現在組み立て中の探査車(ローバー)に、ヘリコプターが搭載されたと2019年8月28日(現地時間)、NASAが発表しました。これは地球以外の大気圏を飛ぶ、初めての航空機となります。
NASAの火星探査計画「Mars 2020」は、2020年7月〜8月にフロリダ州のケープカナベラル空軍基地から探査機を打ち上げ、2021年2月の火星着陸を目指すもの。火星表面で1火星年(地球の時間に換算して約2年)、探査車(ローバー)は探査を行い、カメラでの映像撮影や、ロボットアームでの標本採取などを通じて生命の痕跡を探ります。
現在、NASAの施設で組み立て作業中のMars 2020ローバーですが、全長約3m、幅約2.7m、高さ約2.2mの大きさ。重さは約1000kgで、以前のマーズ・キュリオシティより150kgほど重くなっています。システムは、プルトニウム238の崩壊熱を利用した原子力電池でまかなわれます。
これまでの惑星、小惑星、月の表面探査では、宇宙飛行士が直接行ったアポロ計画での月面探査を除けば、無人の探査機や探査車によるものでした。しかし今回のMars 2020では、初めてヘリコプターが探査車に搭載されることになっています。
搭載される「Marsヘリコプター」と名付けられたヘリコプターは、地球以外の天体の大気圏を飛行する初めての航空機。コンパクトにまとめるため、回転トルクを互いに打ち消しあう二重反転式のローターを持つ機体レイアウトとなっており、ローターマスト上部に取り付けられた太陽電池パネルを動力源としています。
Marsヘリコプターの目的は、火星の薄い大気でも航空機が飛行できるか、という実験。火星表面を広範囲に移動するには、地上を走行するより、やはり飛んでしまった方が楽です。しかし火星は地球より小さく、その影響で大気密度も薄く(気圧が低く)なっているので、地球と同じような発想で航空機が飛べるかは未知数。また、大気組成も地球とは若干違います。
このため、どのような形で「火星用の航空機」を設計したらいいか、実際に現地で飛ばしてみよう!ということなのです。これまでの火星探査の成果で、火星の大気についてはある程度分かっています。その情報を基礎にして、今回のMarsヘリコプターは設計され、地上試験を行ってきました。
テストの結果は良好で、あとは実際に現地で飛ばしてデータを収集するだけです。収集したデータは、次世代の火星用航空機を設計する際に活用されます。
Mars 2020の着陸予定地点は、かつて液体の水が流れ、湖であったと思われるジェゼロ・クレーター(Jezero Crater)。有人火星探査が始まってしばらくすると、未来では火星を宇宙飛行士が航空機に乗って飛び回っているかもしれません。
<出典・引用>
NASA プレスリリース
Image:NASA
(咲村珠樹)