【うちの本棚】第百五回 愛と死の砂時計/和田慎二「うちの本棚」、今回ご紹介するのは『スケバン刑事』にも登場する私立探偵・神 恭一郎初登場作品『愛と死の砂時計』です。その後の恭一郎とはちょっと違った印象を楽しんでみるのもいいでしょう。


孤児で奨学金で高校に通う杳子(ようこ)は、担任教師でもある保本 昇との結婚式を前日に控えてクラスメイトから祝福の言葉を浴びているときに、昇が殺人罪で逮捕されたと知らされる。違例ともいえるスピード結審で昇の死刑が決まり、絶望のどん底に落とされた杳子の前に、昇の逮捕にも立ち会った私立探偵・神 恭一郎が現れるのだった。

昇の無実を証明しようと杳子と恭一郎、そして協力するクラスメイトたち。しかし証人となるはずの人々はつぎつぎと死んでいってしまう。死刑執行まで残された時間はわずか…はたして杳子たちは昇の無実を証明できるのだろうか。

教師と教え子のラブストーリーという展開はすでに終わっていて、いよいよ結婚式というところから始まり事件に巻き込まれるという、本作でも少女漫画らしくないストーリーを展開する和田慎二。もっともそれが新鮮だったともいえるだろう。また『スケバン刑事』に登場する神 恭一郎が活躍する作品としても、ファンなら押さえておきたいものだろう。ちなみに本作が神 恭一郎の初登場作品となる。

タイトルだけを見ると難病ものという印象もあるが、刻々と迫る死刑執行までの時間を砂時計に例えている。和田は印象的なタイトルをつくるのがうまいのかもしれない。ちなみに神 恭一郎が再び登場する作品のタイトルは『オレンジは血の匂い』である。

初出/別冊マーガレット(昭和48年8月号)
書誌/マーガレットコミックス(1974年4月20日初版発行)
MFコミックス(2000年1月31日初版発行/神 恭一郎の事件簿1)

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/