おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】第百四回 銀色の髪の亜里沙/和田慎二

【うちの本棚】第百四回 銀色の髪の亜里沙/和田慎二「うちの本棚」、今回は昨年亡くなられた和田慎二の初期の代表作『銀色の髪の亜里沙』をご紹介します。のちの『スケバン刑事』にもつながるミステリー少女漫画の傑作と言っていいでしょう。

和田慎二といえば『ピグマリオ』や『超少女明日香』といった代表作があるが、なんといってもテレビドラマ化もされた『スケバン刑事』で知られているだろう。


  • とはいえ『スケバン刑事』以前の和田の代表作といえば、この『銀色の髪の亜里沙』だったといって間違いはない。

    13歳で、親友だと思っていた仲間の少女3人に洞窟につながる穴に落とされ殺されかけた主人公が、数年ののち地上に戻って復讐を遂げるという、ある意味少女漫画らしくないストーリーではあるのだけれど、わかりやすいセリフまわしと構成力で読みごたえのある作品に仕上げてある。元ネタは江戸川乱歩の『白髪鬼』やデュマの『モンテ・クリスト伯』あたりになるのだろうが、それを知っていたからといってこの作品がつまらなくなるということもない。

    この当時「別冊マーガレット」では本作のような、恋愛もの以外の作品を掲載していたことが多かったような印象も強い。和田自身本作以外にもミステリー調の作品を多く描いていたし、河あきらも社会派的な作品を発表していた。結果的にこの流れは和田の作品としては『スケバン刑事』につながっていくのだが、少女漫画全体としては、数年後にブームとなる「乙女チック路線」によってミステリー調の作品は影を薄くしていく。小説と違って少女漫画からミステリーの女王と呼べるような作家が現れなかったのもその原因かもしれない。

    亜里沙はその後『怪盗アマリリス』にも登場しているようだが、確認はしていない。また本作のタイトルは実にインパクトがあって魅力的なのだが、作品本編で銀色の髪があまり活かされていなかったような気がして少々残念な気もする(復讐に際して正体を隠すということ以外に)。

    初出/別冊マーガレット(昭和48年4~5月号)
    書誌/マーガレットコミックス(1973年11月20日初版発行)
    集英社漫画文庫(1977年)
    花とゆめコミックス

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • 【うちの本棚】第百七回 超少女明日香/和田慎二
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百七回 超少女明日香/和田慎二

  • 【うちの本棚】第百六回 呪われた孤島/和田慎二
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百六回 呪われた孤島/和田慎二

  • 【うちの本棚】第百五回 愛と死の砂時計/和田慎二
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百五回 愛と死の砂時計/和田慎二

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 目指せ去勢マスター!「繁殖」テーマのローグライクゲーム爆誕

      目指せ去勢マスター!「繁殖」テーマのローグライクゲーム爆誕

      海外の映画やゲームが日本向けにローカライズされる際、タイトルも和訳されることもしばしばですが、「あま…
    2. 実家の一室をレトロゲームショップ風に改造 本物の什器も揃えた昭和男児の夢空間

      実家の一室をレトロゲームショップ風に改造 本物の什器も揃えた昭和男児の夢空間

      一歩足を踏み入れると、そこはまるで平成初期のゲームショップ。ショーケースにはファミコンソフトがずらり…
    3. ケーキの上は只今工事中!3歳のわが子に作った「工事現場ケーキ」が楽しそう

      ケーキの上は只今工事中!3歳のわが子に作った「工事現場ケーキ」が楽しそう

      「はたらくくるま」が好きな人に刺さること間違いなしな「工事現場ケーキ」がXで話題です。説明がなければ…

    編集部おすすめ

    1. カービィのエアライダー、桜井政博こだわりの「酔い対策」が話題 アクセシビリティ配慮に称賛の声

      カービィのエアライダー、桜井政博こだわりの「酔い対策」が話題 アクセシビリティ配慮に称賛の声

      2025年10月23日22時より配信されたNintendo公式番組「カービィのエアライダー Direct 2」にて、ゲームクリエイター・桜井…
    2. 「なぜ誹謗中傷は起きたのか」 にじさんじ運営が加害者心理を公表

      「なぜ誹謗中傷は起きたのか」 にじさんじ運営が加害者心理を公表

      ANYCOLOR株式会社は10月22日、所属ライバーである甲斐田晴さんをめぐる極めて悪質な誹謗中傷・荒らし行為への対応結果を、加害者側の意識…
    3. 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」公開40周年 タイムサーキット型時計が登場

      「バック・トゥ・ザ・フューチャー」公開40周年 タイムサーキット型時計が登場

      株式会社Gakken(学研ホールディングスグループ)は、同作の映画公開40周年を記念して、劇中の「タイムサーキット」を再現した時計「バック・…
    4. 電気通信大学が注意喚起 京王線の車内広告に何者かが不審なQRコード“貼り付け”か

      電気通信大学が注意喚起 京王線の車内広告に何者かが不審なQRコード“貼り付け”か

      電気通信大学が10月21日朝、公式Xアカウントに声明を掲載。「京王線車内の本学の広告にQRコードは記載しておりません」と述べ、車内広告にQR…
    5. 特別災害対策本部車(国土交通省)

      消防車も自衛隊車もNERVも! 防災車両がずらり「ぼうさいモーターショー2025」10月26日開催

      東京臨海広域防災公園(東京都江東区有明)で、10月26日に「ぼうさいモーターショー2025」が開催されます。警察や消防、自衛隊をはじめ、通信…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト