「うちの本棚」、今回は『スケバン刑事』と並ぶ和田慎二の代表作品『超少女明日香』をご紹介いたします。シリーズ化もされた人気作品の第一作は内容も充実していました。
『スケバン刑事』と並ぶ和田慎二の代表作品。本作のあと同じ「別冊マーガレット」で『明日香ふたたび』、『ふたりの明日香』と続編を発表。
さらに白泉社発行の「花とゆめ」やメディアファクトリーの「コミックフラッパー」に舞台を移してシリーズを継続。ファンに支えられた作品といえる。ちなみに「未完」扱いである。
明日香登場編である本作は、舞台となる会社社長宅にお手伝いとして明日香がやって来るところから始まる。それまでいたお手伝いさんが昼間だけしか来れなくなったことから、夜はお手伝い、昼間は高校に通うという住み込みの生活になるわけだが、いまの感覚から見ると微妙な設定だ。また家政婦が超能力を持った若い女性というのは、筒井康隆の『家族八景』などの「七瀬シリーズ」を容易に思い起こさせる。もっとも本作の主人公明日香のキャラクターは七瀬とは正反対のものではあるが(むしろテレビドラマ『家政婦のミタ』のほうが七瀬に近いだろう)。
内容的にもかなり充実したというか詰め込んだものになっていて、前半だけでも充分に前後編一作になり得たのではないかと思える。
もっとも今回もメインとなるものは主人公の復讐で、「別冊マーガレット」における和田慎二作品のほとんどは「復讐もの」といってもいいかもしれない。
明日香が復讐を遂げようとする相手は芙蓉婦人と彼女に仕える4人の部下(四重奏・カルテットと呼ばれる)なのだが、ここで和田はとんでもないお遊びを持ち出してくる。四重奏のひとりを「本郷 猛」、もうひとりを「森ユキ」と命名しているのである。もちろん前者は『仮面ライダー』の主人公であり、後者は『宇宙戦艦ヤマト』のヒロインである。
超能力についてもSF的な解説をセリフに乗せたシーンもあるのだが、それに加えて明日香自身が自分の能力についてSF的なものとは別のものとして認識していることも語られている。この辺りの説明は和田独自の解釈として興味深いし、明日香がいわゆる超能力だけではなく霊能力的な力を発揮することの説明ともなっているだろう。
明日香と、社長の長男との間に芽生えるほのかな恋心も、それまでの作品よりも印象的に描かれていて、少女漫画としても完成していると言っていいだろう。ラストでは『明日香ふたたび』を予感させるモノローグも見受けられる。
初出/別冊マーガレット(昭和50年4月号~5月号)
書誌/集英社・マーガレットコミックス(1976年6月20にち初版発行)
白泉社・花とゆめコミックス
(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/)