おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】第百六回 呪われた孤島/和田慎二

【うちの本棚】第百六回 呪われた孤島/和田慎二「うちの本棚」、今週も和田慎二の初期作品から『呪われた孤島』をご紹介いたします。作家として充実さをみせ始めた時期の読みごたえのあるサスペンス作品です。


  • 日本海にあるとある島では、医者がいないことで島民が長年苦しんできていた。そしてついにその島に診療所を開くという女医がやってきた。島をあげての歓迎を受け、女医は仕事を始めるが、しだいにその本性を現し、ついには自分の欲望を満たすために邪魔な島民を毒グモを使って殺し始める。

    主人公・曜子の父で島の網元でもある剛三もその犠牲者のひとりになってしまった。確かな証拠がないまま、それでも横暴な報酬を要求する女医に対抗するため、島民達は剛三の意志もあり、曜子を東京の医大へと送るのだった。

    そして時は過ぎ、東京の医大で知り合った間久部という青年と共に、曜子は島に戻ってくるのだった。
    『銀色の髪の亜里沙』同様の復讐劇と言っていいのが、この『呪われた孤島』だ。それにしてもこのタイトル、いささか仰々しすぎる気がしないでもない。タイトルだけから受けるイメージとしては秘境モノではないだろうか。また「呪い」といってもオカルト的なエピソードがあるわけでもなく、島の伝説が出てくる程度(この伝説に語られる八千代菊が物語の重要なカギではあるのだけれど)。

    前編・後編として描かれた本作は、前編では女医が島にやってきて、曜子が島を脱出するまでを描き、後編では東京の医大での生活と女医への復讐が描かれていて、内容も構成も充実した作品になっている。

    曜子と間久部のロマンスもあるにはあるが、ストーリー上はほとんど語られることはなく、ラストでふたりが婚約したことがセリフで触れられている程度。相変わらず少女漫画のお約束は無視している和田慎二である。

    この時期『超少女明日香』の第一作も発表しているので、和田慎二の作家としての充実ぶりも感じられる作品といえるだろう。

    初出/集英社・別冊マーガレット(昭和49年8月~9月号)
    書誌/集英社・マーガレットコミックス(1975年3月20にち初版発行/怪盗アマリリス併録)
    大都社・スターコミックス(1993年2月)

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • 【うちの本棚】第百七回 超少女明日香/和田慎二
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百七回 超少女明日香/和田慎二

  • 【うちの本棚】第百五回 愛と死の砂時計/和田慎二
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百五回 愛と死の砂時計/和田慎二

  • 【うちの本棚】第百四回 銀色の髪の亜里沙/和田慎二
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百四回 銀色の髪の亜里沙/和田慎二

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 運営者の終活で老舗CGIサイトが終了へ 1995年開設「CGI RESCUE」、2026年3月に幕

      運営者の終活で老舗CGIサイトが終了へ 1995年開設「CGI RESCUE」、2026年3月に幕

      1995年から続く老舗CGI配布サイト「CGI RESCUE」が2026年3月末での終了を発表しまし…
    2. 違和感満載のサイケな銭湯でほっこり入浴 蒲田で開催「脳汁銭湯」体験レポート

      違和感満載のサイケな銭湯でほっこり入浴 蒲田で開催「脳汁銭湯」体験レポート

      旧き良き銭湯が異次元の入浴空間に変身するイベント「脳汁銭湯」が、11月26日から12月7日まで東京・…
    3. この涙は懐かしさ……なのか? 展示「あの職員室」で特大感情を揺さぶられたレポート

      この涙は懐かしさ……なのか? 展示「あの職員室」で特大感情を揺さぶられたレポート

      学生時代、入りたくても入れない「聖域」のような場所だった職員室。その風景を再現し、自由に探索できる展…

    編集部おすすめ

    1. 例のあの和菓子、都道府県別の呼び方

      全国で呼び名はどう違う?「今川焼」が19エリア制覇 ニチレイが“勢力図”を公開

      全国で呼び名が分かれる“中に具材を入れて焼いた円形の厚焼き和菓子”について、株式会社ニチレイフーズが47都道府県別に最も多く使われている呼称…
    2. セブン×ちいかわ「鬼辛カレー」を実食!全身が真っ赤に染まるのも納得の辛さ

      セブン×ちいかわ「鬼辛カレー」を実食!全身が真っ赤に染まるのも納得の辛さ

      セブン‐イレブンで12月2日から始まった「ちいかわと冬をたのしんじゃお!」キャンペーンで、作中に登場した「鬼辛カレー」が発売中。原作で話題の…
    3. 楽天モバイル、シニア向けに「オレオレ詐欺対策保険」を無料提供開始

      楽天モバイル、シニア向けに「オレオレ詐欺対策保険」を無料提供開始

      楽天モバイルと楽天損害保険は12月1日、「最強シニアプログラム」を強化し、オプションパック「15分かけ放題&安心パック」加入者を対象とした「…
    4. 静岡新球団で何が起きているのか ハヤテ223とくふうHDがネーミングライツ巡り対立

      静岡新球団で何が起きているのか ハヤテ223とくふうHDがネーミングライツ巡り対立

      静岡県を拠点とし、プロ野球ウエスタン・リーグに参加している新球団「くふうハヤテベンチャーズ静岡」を巡り、ネーミングライツ契約を含む資本業務提…
    5. 事業者向け「ASKUL」Web注文、12月第1週に再開 “明日来る”配送は当面遅れる見込み

      事業者向け「ASKUL」Web注文、12月第1週に再開 “明日来る”配送は当面遅れる見込み

      アスクル株式会社は11月28日、10月19日に発生したランサムウェア攻撃によるシステム障害の復旧状況について第11報を公表しました。 事業所…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト