おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】第五十一回 餓狼の森/松森 正(原作・橋本一郎)

「うちの本棚」、今回は松森正が音楽業界を舞台に描いた異色作品『餓狼の森』です。一見すると刑事もののような渋すぎる人間ドラマ。入手も困難な作品ですがぜひ復刻してもらいたい一作です。

本作は藤波という音楽ディレクターを主人公にした、音楽業界を舞台にした人間ドラマ。
松森作品としては後の『ライブマシーン』にも多少の影響はしているのではないかと思われる。


  • 原作の橋本一郎は、実は本書自体には記載がない(のちに刊行された「エースファイブコミックス」版で表記された)。

    ジャズに演歌に軍歌、アイドルポップスとジャンルにこだわりなく本物のミュージシャン、歌手を発掘する藤波の姿を通して、表舞台には登場しない不出世の天才などを描いていく物語。
    女性キャラクターは他の松森作品同様美しく魅力的だが、主人公を始め男性キャラクターたちは音楽業界という舞台にしては渋すぎるきらいがあるかもしれない。一見すると刑事もののような印象すら受けてしまうのは、この時期の松森の特徴かもしれない。

    本書はひばり書房から刊行された単行本としては珍しいB6版。
    松森作品としては、すでに新書判で『木曜日のリカ』が刊行済みの時期でもあり、青年誌掲載の劇画作品をB6版で出していこうとしていたのかもしれないが「ヒバリスーパーコミックス」というシリーズはほかに出なかったような気がする。また「エースファイブコミックス」で再刊行された際は全8話のうち第2話をカットしての刊行だった(ちなみに「エースファイブコミックス」は奥付がなく刊行時期がはっきりしないのだが、80年代の半ばの刊行だったと記憶する)。

    原作の橋本一郎は本書を始めその他の松森作品に原作を提供した際にも、最初の単行本では原作表記がないということがあった。一般的な少年コミックと違って「劇画」の場合作画と原作が違っていた方が「それらしい」というイメージができていたこともあると思うのだが、時には同じ作者が作画と原作でそれぞれ別のペンネームを使用して表記していたこともある。
    もちろん原作料が別に発生するというケースもあったようで、松森作品における橋本一郎原作作品もその例ではないかと疑っていた時期も個人的にはあった。

    漫画や劇画で音楽を表現するのはなかなか難しいところもあると思うし、音楽を扱った作品の多くはミュージシャンを主人公にしたものであることを考えると、本作の特徴や視点の面白さが見えてくるのではないだろううか。実写ドラマの原作になってもよさそうな作品でもある。

    書 名/餓狼の森
    著者名/松森 正(原作・橋本一郎)
    収録作品/餓狼の森・第1話~第8話
    発行所/ひばり書房
    初版発行日/1976年8月15日
    シリーズ名/ヒバリスーパーコミックス(1)

    ■ライター紹介
    【猫目ユウ】

    フリーライター。ライターズ集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。

    あわせて読みたい関連記事
  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第五十六回 ルート・ゼロ/松森 正(原作・但馬弘介)

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第五十五回 愛の伝説/松森 正(原作・神保史郎)

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第五十四回 恐怖への招待/松森 正(原作・北河正郎)

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第五十三回 テキサスの鷹/松森 正(原作・橋本一郎)

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第五十二回 反逆児/松森 正(原作・東 史朗)

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第五十回 薔薇のレクイエム/松森 正(原作・橋本一郎)

  • うちの本棚
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第五回 ライブマシーン/松森 正・狩撫麻礼

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. TopLayersの声明

      TopLayers、「コスプレイヤー ドバイ案件」関与を否定 SNSの噂巡り声明発表

      コスプレイヤー専門プロダクション「TopLayers(トップレイヤーズ)」は3月5日、SNS上で拡散…
    2. 「日清焼そばU.F.O.」が“究極進化”!どれくらい変わった? 2種類を食べ比べてみた

      「日清焼そばU.F.O.」が“究極進化”!どれくらい変わった? 2種類を食べ比べてみた

      3月2日から、「日清焼そばU.F.O.」の発売50周年を記念した「日清焼そばエクストリームU.F.O…
    3. あ、ありがてぇ……企業戦士は丸亀製麺の“仙豆”で今すぐ日々の疲れを吹き飛ばそう!

      あ、ありがてぇ……企業戦士は丸亀製麺の“仙豆”で今すぐ日々の疲れを吹き飛ばそう!

      ともに“亀”に縁がある丸亀製麺と人気漫画「ドラゴンボール」の夢のコラボが、3月3日からスタートしてい…

    編集部おすすめ

    1. フレンドとうんちをシェア!iOSアプリ「うんちくん」が良質な“クソアプリ”だった

      フレンドとうんちをシェア!iOSアプリ「うんちくん」が良質な“クソアプリ”だった

      うんち。生きていく上でとても大切なのに、人と話すのはちょっとはばかられる話題です。もっと気軽に誰かとうんちの話題を共有できたなら……そんな思…
    2. 「ひろしの靴下」は本当に臭いらしい

      最臭兵器「ひろしの靴下」に10秒耐えられる? ニジゲンノモリで挑戦イベント開催

      「クレヨンしんちゃん」のしんのすけの父・野原ひろしといえば、“足臭”で知られる存在です。その最臭兵器「ひろしの靴下」を展示している、兵庫県「…
    3. お内裏様とお雛様がまさかの「順番待ち」 ひな壇を占拠して爆睡する白猫ちゃん

      お内裏様とお雛様がまさかの「順番待ち」 ひな壇を占拠して爆睡する白猫ちゃん

      3月3日は桃の節句。きれいに飾り付けられたひな壇のど真ん中で、気持ちよさそうに爆睡する1匹の白猫ちゃんの姿がXで話題です。さらにその下の段ボ…
    4. スーパーマリオ リカちゃん マリオスタイル

      「スーパーマリオ リカちゃん」発売決定 マリオ&ピーチ姫に変身

      着せ替え人形「リカちゃん」と、任天堂の人気ゲームシリーズ「スーパーマリオ」とのコラボレーションドール2種が、株式会社タカラトミーより4月18…
    5. アニメック

      旧アニメ誌と同名 映画配給会社「アニメック」設立、名称は関係者に報告の上決定

      映画配給会社「株式会社アニメック」の設立が3月2日、KADOKAWAとアニプレックスから発表されました。両社の共同出資により設立されたもので…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト
    支援