「うちの本棚」、今回も松森 正作品を取り上げます。その画力に反比例して認知度が低い印象のある松森正、もう少し評価されてもいいのではないでしょうか。

本書は松森 正の単行本のなかでも知られていないもののひとつではないかと思う。同じ「ゴラクコミックス」からは『ルートゼロ』『愛の伝説』などが刊行されているが、『ルートゼロ』以外のものは早い段階で絶版になっていたように思う。


刊行は昭和55年だが、第一話では学生運動が舞台となっていたりして、60年代末から70年代初頭の物語に感じる。とはいえ明確に舞台となる年代は語られていないので、その当時に発表された作品なのかもしれない。

主人公は学生運動には反対する立場で学内に立てこもり(大学ではなく高校ですが)、結果的に学校を追われる形で放浪の旅に出る。その中で出会う人々とのエピソードから、自分の出生を追う形でストーリーは進行していく。

カバーイラストでは主人公が片手に手錠をかけた状態で竹刀を振りかぶっていることもあって『男組』的な印象もあったりする。最終的な父親に関するエピソードはもっと膨らませることもできたように思うのだが、そうなったらますます『男組』的な展開になっていたかもしれない。

画的には『ライブマシーン』以前の描き込みの多いものだが、当時の劇画はだいたいこういうものだった(大友克洋以前)。
『湯けむりスナイパー』は多くの読者を得たが、その他の松森作品はいまだ埋もれた状態であるのが大変残念である。本書のような作品もどこかで再刊してくれないだろうか。

書 名/反逆児
著者名/松森 正(原作・東 史朗)
収録作品/反逆児・第一話~第六話
発行所/日本文芸社
初版発行日/昭和55年7月25日
シリーズ名/GORAKU COMICS

■ライター紹介
【猫目ユウ】

フリーライター。ライターズ集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。