おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】第五十四回 恐怖への招待/松森 正(原作・北河正郎)

「うちの本棚」、今回は松森 正の隠れた名作『恐怖への招待』を取り上げます。粒揃いの連作モダンホラーであるこの作品。ぜひとも再刊行してほしいものです。

モダンホラーの連作シリーズ。なかなか粒揃いの秀作で、松森作品のなかでも気に入っているもののひとつなのだが、現在入手はきわめて困難。ぜひ再刊行してもらいたいもののひとつだ。


  • 幻想的なものから正統派な怪奇もの、猟奇的なものまでさまざまなパターンの作品が読めるという意味でもオススメの一冊。

    個人的には残酷で美しい人魚の登場する「海魔」などがお気に入りだが、全体のグレードも高いので、松森作品をこれから手にするという人にも勧めたい作品集といえる。

    実は初めて読んだ松森作品がこの単行本だった。もちろん『木曜日のリカ』なども知っていたがキチンと読んでいなかった。

    そのころ、「劇画」も読んでみようという気持ちになって、本書と谷口ジローの『事件屋稼業』、平野 仁の『ハード・オン(原作・矢作俊彦)』をまとめて入手し読んでみた。結果どれも面白く、いまだにこの3作品は大好きな作品になっている。

    松森の画は『テキサスの鷹』などに比べると線が整理されてきているが『ライブマシーン』に比べるとまだまだ書き込みが多く画面全体を埋めつくしている印象がある。それでも確かなデッサン力、女性キャラの美しさで谷口、平野よりも松森のファンになってしまった。もっとも松森の場合描写がキレイすぎて、たとえば首を切り落とされてもグロさがないという面はある。だからいいというファンもいると思うが、ときには生々しさがあってもいいかもしれない。

    松森はこのあと関川夏央とのコンビで『地球最期の日』、そして狩撫麻礼との『ライブマシーン』を描くことになる。

    書 名/恐怖への招待
    著者名/松森 正(原作・北河正郎)
    収録作品/森の家、狂避行、生首収集狂、底なし沼、変身、人形綺譚、狂嵐狂夜、海魔、悪夢病棟
    発行所/双葉社
    初版発行日/1978年4月15日
    シリーズ名/アクション・コミックス

    ■ライター紹介
    【猫目ユウ】

    フリーライター。ライターズ集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。

    あわせて読みたい関連記事
  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第五十六回 ルート・ゼロ/松森 正(原作・但馬弘介)

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第五十五回 愛の伝説/松森 正(原作・神保史郎)

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第五十三回 テキサスの鷹/松森 正(原作・橋本一郎)

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第五十二回 反逆児/松森 正(原作・東 史朗)

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第五十一回 餓狼の森/松森 正(原作・橋本一郎)

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第五十回 薔薇のレクイエム/松森 正(原作・橋本一郎)

  • うちの本棚
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第五回 ライブマシーン/松森 正・狩撫麻礼

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 92歳と95歳が本気の“殴り合い” 介護施設入居者たちの「鉄拳8」対戦が国内外で話題

      92歳と95歳が本気の“殴り合い” 介護施設入居者たちの「鉄拳8」対戦が国内外で話題

      一般社団法人ケアeスポーツ協会が11月24日に開催した、大人気格闘ゲーム「鉄拳8」の大会「第12回ケ…
    2. 絵柄がデフォでピンボケな……いつかやってくる未来に備える「老眼トランプ」が登場

      絵柄がデフォでピンボケな……いつかやってくる未来に備える「老眼トランプ」が登場

      どんな人間にもいつかはやってくる老眼。なんだか手元が見えづらいな……という状態を体験できるトランプが…
    3. 「呪術廻戦」酷似ゲームを巡る騒動 公式声明後にApp Storeから姿消す

      「呪術廻戦」酷似ゲームを巡る騒動 公式声明後にApp Storeから姿消す

      人気アニメ「呪術廻戦」に酷似したスマホゲーム「特級呪術師」が配信され、SNSで物議を醸しました。公式…

    編集部おすすめ

    1. 宝塚宙組公演、25日に続き28日まで中止 主要出演者の体調不良で

      宝塚宙組公演、25日に続き28日まで中止 主要出演者の体調不良で

      宝塚歌劇団は12月26日、宙組が東京宝塚劇場で上演している公演について、主要な出演者の体調不良により公演の実施が困難な状況が続いているとして…
    2. シートタイプのWebMoney

      WebMoney、事業をビットキャッシュへ承継 一部サービスは終了へ

      オンラインゲームの課金手段として知られる「WebMoney」が事業の節目を迎えます。auペイメントは2026年3月31日付でWebMoney…
    3. 「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      育児などを理由に在宅で働きたいと求人サイトを利用した人が、結果的に高額な契約を結ばされるケースが相次いでいます。「完全在宅」「未経験OK」と…
    4. Netflix映画『10DANCE』

      Netflix「10DANCE」、海外SNSで広がる“困惑と魅了” 「情緒が崩壊した」人も

      Netflixで12月18日に配信が始まった映画「10DANCE」が、海外SNSで大きな反響を呼んでいます。BL作品であることに戸惑いながら…
    5. 「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      「漆黒の指輪」は実在したものの……サン宝石、カプセルトイ「中二病が疼くリング」の“誇大表現”を謝罪

      アクセサリーや雑貨の販売で知られる「サン宝石」は12月16日、同社が展開するカプセルトイ「中二病が疼くリング」について、公式サイトおよびSN…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト