「うちの本棚」、今回は松森 正の隠れた名作『恐怖への招待』を取り上げます。粒揃いの連作モダンホラーであるこの作品。ぜひとも再刊行してほしいものです。

モダンホラーの連作シリーズ。なかなか粒揃いの秀作で、松森作品のなかでも気に入っているもののひとつなのだが、現在入手はきわめて困難。ぜひ再刊行してもらいたいもののひとつだ。


幻想的なものから正統派な怪奇もの、猟奇的なものまでさまざまなパターンの作品が読めるという意味でもオススメの一冊。

個人的には残酷で美しい人魚の登場する「海魔」などがお気に入りだが、全体のグレードも高いので、松森作品をこれから手にするという人にも勧めたい作品集といえる。

実は初めて読んだ松森作品がこの単行本だった。もちろん『木曜日のリカ』なども知っていたがキチンと読んでいなかった。

そのころ、「劇画」も読んでみようという気持ちになって、本書と谷口ジローの『事件屋稼業』、平野 仁の『ハード・オン(原作・矢作俊彦)』をまとめて入手し読んでみた。結果どれも面白く、いまだにこの3作品は大好きな作品になっている。

松森の画は『テキサスの鷹』などに比べると線が整理されてきているが『ライブマシーン』に比べるとまだまだ書き込みが多く画面全体を埋めつくしている印象がある。それでも確かなデッサン力、女性キャラの美しさで谷口、平野よりも松森のファンになってしまった。もっとも松森の場合描写がキレイすぎて、たとえば首を切り落とされてもグロさがないという面はある。だからいいというファンもいると思うが、ときには生々しさがあってもいいかもしれない。

松森はこのあと関川夏央とのコンビで『地球最期の日』、そして狩撫麻礼との『ライブマシーン』を描くことになる。

書 名/恐怖への招待
著者名/松森 正(原作・北河正郎)
収録作品/森の家、狂避行、生首収集狂、底なし沼、変身、人形綺譚、狂嵐狂夜、海魔、悪夢病棟
発行所/双葉社
初版発行日/1978年4月15日
シリーズ名/アクション・コミックス

■ライター紹介
【猫目ユウ】

フリーライター。ライターズ集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。