おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【特撮映像館】Act.52 フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)

「特撮映像館」、今回は「ゴジラシリーズ」とは一線を画する東宝特撮映画の名作『フランケンシュタイン対地底怪獣』です。いわゆる海外版は本当は海外では公開されていなかった!?
本作はもともと『キングコング対ゴジラ』に続く、対ゴジラ作品として企画がスタートしたもので、紆余曲折ののち本作が完成した。またエンディングを始め複数のシーンで追加や削除といった編集されたヴァージョンがあり、いわゆる国内版と海外版というヴァージョン違いが顕著な作品でもある。


  • 前半では、冒頭のシーンを含めフランケンシュタインが登場する映画にふさわしい怪奇色が濃厚な演出となっていて、すでに子ども向けになっていた「ゴジラシリーズ」とは一線を画する仕上がりと言っていいだろう。

    フランケンシュタインは不死身の怪物であり、タンパク質の供給さえあれば体の一部であっても生き続けることができる。また本作では最初心臓だけだったものが人間の姿にまで成長するのだが、この心臓はフランケンシュタイン博士によって作られた怪物のものであり、つまるところユニバーサル映画に登場したフランケンシュタインの怪物の心臓から復活したものという設定になるわけである。

    異常な成長力があり通常の人間よりも巨大になったフランケンシュタインは研究所を逃げ出し、家畜を盗んでは食べながら山間地を選んで北上していく。故郷であるフランクフルトに近い環境を求めるように。

    また一方で人を襲う怪物が現れ、人々はそれをフランケンシュタインの仕業と思いフランケンシュタインに恐怖と憎しみを抱いていく。

    ただ体が大きく力が強く、その本能から家畜を襲い食べてしまうフランケンシュタインに同情と愛情をもって接するのは育ての親でもある水野とニックであり、ふたりと行動を共にしながらフランケンシュタインを研究材料としかみない高島との立場の違いも、オトナの鑑賞に堪えうる演出となっている。

    ところで公開当初、ラストシーンはバラゴンを倒したフランケンシュタインも地殻変動のため地面に飲み込まれてしまうエンディングだったが、もともとバラゴンを倒した後に登場する大ダコと格闘し、海中に没するエンディングが用意され、撮影もされていた。のちにテレビ放映された際、この大ダコのシーンを含めたものが使われたため、これを海外版と呼ぶのが一般的になったのだが、実は海外で公開された際も大ダコの登場しないヴァージョンだったようだ。

    実際、山中でバラゴンを倒した後、山の中に大ダコが現れるというのはどうにも納得のいかない設定ではある。そのまま海に落ちるので海が近いのは確かなのだが、そのシーンになるまで海が近いことには全く触れていないし、いくら海が近いとはいえタコが陸に上がってフランケンシュタインに襲いかかるのもどうかと思う。そういう意味では大ダコが登場しないヴァージョンのほうが素直に観られるのではないだろうか。

    フランケンシュタインのメイクはユニバーサル版を基本にしながらアレンジを加えた好感の持てるもので、バラゴンの造形もいい。今回改めて鑑賞してみて金子監督の『GMK』に登場したバラゴンが本作のオリジナルを忠実に再現していたことに気がついた。

    監督/本田猪四郎、特技監督/円谷英二
    キャスト/ニック・アダムス、水野久美、高島忠夫、ほか。
    1965年/94分/日本

    (文:猫目ユウ)

    あわせて読みたい関連記事
  • サムシングフォーってそういう……偶然にもモデルガンが揃ってしまった奇跡のウェディングフォト
    インターネット, びっくり・驚き

    サムシングフォーってそういう……偶然にもモデルガンが揃ってしまった奇跡のウェディ…

  • 画像提供:架空昭和史作家 西川真周さん(@mashunishikawa)
    インターネット, おもしろ

    家のトイレが巨大ロボのコクピットに!昭和とSFが融合した「架空昭和史」の世界に夢…

  • 劇中セリフやBGMを収録!バンダイから大人向けなりきり玩具「ブンブンチェンジアックス」発売
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    劇中セリフやBGMを収録!バンダイから大人向けなりきり玩具「ブンブンチェンジアッ…

  • シャリバン役の渡洋史も登壇!宇宙刑事シリーズ40周年記念の上映会が開催
    アニメ/マンガ, イベント・キャンペーン

    シャリバン役の渡洋史も登壇!宇宙刑事シリーズ40周年記念の上映会が開催

  • 「特捜戦隊デカレンジャー」20周年記念ファンミ開催!主要キャスト6人が勢揃い
    アニメ/マンガ, イベント・キャンペーン

    「特捜戦隊デカレンジャー」20周年記念ファンミ開催!主要キャスト6人が勢揃い

  • 「獣電戦隊キョウリュウジャー ガブリボルバー -MEMORIAL EDITION-」
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    聞いて驚けぇぇぇ!獣電戦隊キョウリュウジャー「ガブリボルバー」がメモリアル仕様に…

  • これが私たちのアオハル。朋優学院・アトラクション部の華麗なアクションに刮目せよ!
    エンタメ, サブカル

    これが私たちのアオハル 「朋優学院・アトラクション部」の華麗なアクションに刮目せ…

  • 特撮文化発展のため日夜活動する「特撮クラブ」。これで君たちもヒーローになれるぞ!
    TV・ドラマ, エンタメ

    戦闘員の貸し出しも可 ヒーローのためのオールインワン「特撮クラブ」とは?

  • 親子2代にわたって遊び尽くされたおもちゃたち(幽波紋Zさん提供)
    インターネット, 感動・ほのぼの

    親子2代で遊び尽くしてボロボロに おもちゃ冥利につきる懐かしの品々

  • 「仮面ライダーBLACK SUN」サントラCD
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    「仮面ライダーBLACK SUN」サントラCD2022年11月2日発売 配信も同…

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 「フツーの人」と「デブ」の食意識の違いをイラストで可視化 あなたはどっち?

      「フツーの人」と「デブ」の食意識の違いをイラストで可視化 あなたはどっち?

      「もしかして、フツーの人っておなか空いてる時以外おなか空いてないの?」そんな衝撃の(?)問いかけとと…
    2. コーヒーにごま油……!?かどや公式のちょい足しアレンジを試してみた

      コーヒーにごま油……!?かどや公式のちょい足しアレンジを試してみた

      10月1日は「コーヒーの日」。そんな記念日に合わせて、かどや製油公式Xが提案してきたのは……まさかの…
    3. 「えもじの子(仮)」

      LINEの人気キャラ「えもじの子(仮)」が有料で復活 一部未収録に完全復活を望む声も

      つぶらな瞳ととぼけた表情で人気を集めたLINE絵文字「えもじの子(仮)」の無料配布版が10月1日、有…

    編集部おすすめ

    1. フライドポテトで、白ごはんを食べる……?ドンキ新作が過去イチ理解できなかった件

      フライドポテトで、白ごはんを食べる……?ドンキ新作が過去イチ理解できなかった件

      「みんなの75点より、誰かの120点」を合言葉にドン・キホーテが展開している偏愛メシシリーズ。10月1日に「本当にこの組み合わせが好きな人が…
    2. 将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕

      将棋倶楽部24、2025年末でサービス終了 27年の歴史に幕

      オンライン将棋対局サービス「将棋倶楽部24」が、2025年12月31日をもって終了することが発表された。運営する席主の久米宏氏が10月1日付…
    3. pium、“カスハラ声明”きっかけに炎上 接客批判受け謝罪と改善策

      pium、“カスハラ声明”きっかけに炎上 接客批判受け謝罪と改善策

      アパレルブランド「pium」が9月30日、店舗スタッフの接客に対する多数の指摘や批判を受け、公式Xにて謝罪文を公開しました。併せて再発防止策…
    4. 「ビー・バップ」クラファン始動、清水で“高校与太郎祭”実現へ 返礼に「鉄橋ダイブ」関連も

      「ビー・バップ」クラファン始動、清水で“高校与太郎祭”実現へ 返礼に「鉄橋ダイブ」関連も

      映画「ビー・バップ・ハイスクール」のロケ地として知られる静岡市清水区で、作品ゆかりの企画を集めた大型オフラインイベント「清水 ビー・バップ・…
    5. 第7回京都アニメーションファン感謝イベント『私たちは、いま!! ―京アニのセカイ展―』

      京都アニ「第7回ファン感謝イベント」追加情報を公開 新商品や書籍予約、グッズ二次予約も発表

      株式会社京都アニメーションは、10月25日・26日の2日間で開催予定の「第7回京都アニメーションファン感謝イベント『私たちは、いま!! ―京…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト