おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

アメリカ軍とカナダ国防軍、総力を挙げ“ビッグレッド・ワン”大追跡作戦今年も実施

ビッグレッド・ワン作戦動画クリスマスが近づいてきました。皆さんクリスマスに向けて様々な予定を立てていることと思いますが、アメリカとカナダが共同で設置している統合防衛本部NORAD(North American Aerospace Defense Command=北米航空宇宙防衛司令部)では、恒例の大作戦に向け、準備を着々と進めています。

クリスマスイブにプレゼントを持ってくる、あのサンタクロースの追跡作戦です。

【関連:北米航空宇宙防衛司令部が今年も総力を挙げて挑む「サンタ追跡プロジェクト」】

中山競馬場のクリスマスツリー


  • 普段は、24時間態勢で北米大陸(アメリカ・カナダ)に対するミサイル攻撃などに備えているNORADですが、クリスマスイブの夜だけは、全力を挙げてサンタクロースを追跡監視するのです。

    このきっかけになったのは、1955年のクリスマス商戦。アメリカ・コロラド州の百貨店がクリスマスのおもちゃ販売キャンペーンとして「サンタさんと話せる電話」を開設し、新聞広告にその電話番号を載せたことでした。いいキャンペーンになると思ったんでしょうね。ところが、その「サンタさんと話せる電話」には、1本も電話がかかってきませんでした。何故か。

    広告に記載された電話番号が、間違っていたのです。間違った番号は、よりによってとんでもない場所につながりました。当時NORADの前身であるであるCONAD(中央防衛航空軍)の司令部、しかも機密であった、司令官用直通電話(ホットライン)に……。

    基本的にこの直通電話は、緊急事態が発生した時にしか鳴りません。核ミサイルが発射されたとか、敵の戦略爆撃機が接近しているとか……受話器を取り上げた当時の指揮官、ハリー・W・シャウプ大佐の心境はどうだったのでしょう。

    ところが、聞こえてきたのは小さな子供の声。

    「おお、なんてこった!と思ったからね。忘れもしない。
    国防総省直通のレッドフォン(ホット)ラインが鳴り、(上司であるアメリカ防衛空軍司令)パートリッジ(Earle Everard”Pat” Partridge)大将からの電話だと思って

    『はい、こちらシャウプ大佐であります』
    と答えた。
    『……閣下。シャウプ大佐です。お判りですか?』
    そうしたら
    『……ほんとにサンタさん?』
    という声が聞こえてくるじゃないか。

    私は周りの部下達を見回し、誰かがからかってるんじゃないかと思ったよ。あまりにもおかしな光景だったからね。

    そして
    『……もう一回言ってくれないか?』
    と電話口に話しかけた。
    そうしたらまた
    『……ほんとにサンタさんなの?』
    と返ってきたんだ」

    シャウプ大佐の回想ですが、実に間抜けな光景だったんでしょうね……。「サンタさんと話せる電話」と思って、子供が電話をかけてきたんですから。

    しかしシャウプ大佐は、不測の事態にも動じない優秀な軍人でした。相手はサンタと信じている子供です。その夢を壊してはいけないと機転を利かせ、サンタクロースの住んでいる北極から何かが飛び立った形跡がないか、部下に調べさせた結果を伝えました。恐らく、自分はサンタクロースではなく、彼を追跡監視する仕事をしているんだ……みたいなことも同時に伝えたんでしょうね。次々かかってくる電話に、大佐は同様の対処をしました。

    普通なら間違った広告で業務(しかも国防の)を妨害されたんですから、百貨店に対して厳重に抗議するんでしょうが、CONADは逆にこのハプニングを面白く感じたようです。この後CONADには、クリスマスの特別任務として「サンタクロース追跡」が追加されました。シャウプ大佐はこの一件で有名になり「サンタ大佐」というニックネームで呼ばれるようになったとか。

    この任務は1958年にCONADから現在のNORADに改組された後も、脈々と受け継がれてきました。最初は電話サービスのみだったのですが、インターネットが一般化した1997年からは、毎年12月1日に専用サイトを開設。今年はアメリカ山岳標準時の12月24日、午前0時(日本時間24日午後4時)から「サンタ追跡」を実況中継する予定です。

    さて、実際にどのようにNORADはサンタクロースを捕捉し、追跡(エスコート)しているのでしょうか。本来なら重大な軍事機密かもしれないのですが、YouTubeにNORADが動画を公開し、紹介しています。NORADではサンタクロースを「ビッグレッド・ワン」というコールサインで呼んでいるようですね。


    追跡するのはNORADだけではありません。海軍の空母やイージス艦、原子力潜水艦など、アメリカ軍とカナダ国防軍の総力を挙げた大作戦です。軍だけでなく、FAA(アメリカ連邦航空局)もこの作戦に協力しています。

    NORADのサンタ追跡サイト「NORAD Tracks Santa」では、今までの調査活動から得られたサンタクロースのソリについての情報も出ています。これも軍事機密(日本でいうところの特定秘密)に当たるのか、いくつかの数値の単位が独特のものになっています。もし詳細なデータがテロリストの手に渡り、サンタクロースが襲われたら大変ですので、この措置も納得ですね。

    この情報によると、サンタクロースのソリは西暦343年の12月24日製造、プレゼントの最大積載量は6万トンにも及びます。武装として「トナカイの角」が装備されていますが、これは「純粋な防衛用」ということだそうです。最高速度は「星の光より速い」とあるので、戦闘機などは簡単に振り切られてしまうようです。

    この他、サイトには各種のゲームがあったり、アメリカ空軍大学音楽隊や沿岸警備隊音楽隊、カナダ海軍音楽隊などの演奏によるクリスマスソングも聴けたりとバラエティ豊かなので、ぜひクリスマス前に覗いてみることをお勧めします。

    参考:
    NORAD Tracks Santa
    Twitter @NoradSanta
    facebook『NORAD Tracks Santa』
    Google+『NORAD Tracks Santa』
    FAA(アメリカ連邦航空局)サンタクロースサイト

    (文:咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 英国伝統のうなぎ料理は“水槽の味”?日本にはない「ゼリー寄せ」の衝撃
    インターネット, おもしろ

    英国伝統のうなぎ料理は“水槽の味”?日本にはない「ゼリー寄せ」の衝撃

  • 美味しそうなのに……タイ在住のXユーザーが遭遇した衝撃のアイス
    インターネット, おもしろ

    美味しそうなのに……タイ在住のXユーザーが遭遇した衝撃のアイス

  • タカラトミーが全国のサンタさんへ「お願い」 おもちゃをプレゼントする際の注意点をアドバイス
    インターネット, おもしろ

    タカラトミーが全国のサンタさんへ「お願い」 おもちゃをプレゼントする際の注意点を…

  • 海外からの怪しい電話に出てみた
    インターネット, 社会・物議

    海外からの怪しい電話に出るとどうなる?出てみた結果

  • 「大阪 たこ焼たこば」外観(写真:向山純平)
    インターネット, 感動・ほのぼの

    たこ焼き屋で起きたクリスマスの奇跡 経営難知った常連客が約7万分購入「子どもたち…

  • 画像提供:虫さん(@drumusimusic)
    インターネット, おもしろ

    息子に届いた「サンタ制度改正」のお知らせ 現実的すぎる終了理由に爆笑

  • 小2の男の子が書いたサンタへの手紙
    インターネット, おもしろ

    サンタへの手紙のはずが……小2の男の子が書いたサンタへの手紙にほっこり

  • サンタからのお詫びとお知らせ
    インターネット, おもしろ

    サンタ制度はもう廃止!サンタからプレゼント終了を知らせる「お詫びとお知らせ」が届…

  • バックリー空軍基地(現:宇宙軍基地)を表敬訪問したサンタクロース(画像:USAF)
    宇宙・航空

    2022年で67回目 NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)の全力サンタ追跡

  • サンタさんへの手紙
    インターネット, おもしろ

    娘からサンタさんへの手紙に「プレゼントを両親にも」 感動する父の涙が引っ込んだ理…

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 介護未経験者全体の72.9%が将来に向けて「特に何も準備していない」
    社会, 経済

    仕事と介護の両立に不安85% ダスキンが「介護白書2025」で実態調査

  • プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

  • 美食祭 in 日本橋三越
    TV・ドラマ, エンタメ

    高見沢俊彦の“美しいメシ”100回記念 日本橋三越で初の美食祭

  • なか卯が“ウニの二大メニュー” 雲丹おろしうどんとウニ丼を9月17日から販売
    商品・物販, 経済

    なか卯が“ウニの二大メニュー” 雲丹おろしうどんとウニ丼を9月17日から販売

  • 掃除機「自動お手入れ機能」篇(15秒)
    商品・物販, 経済

    反町隆史、東芝新CMで料理や掃除に挑戦 家庭的な素顔ものぞかせる

  • 音楽劇「謎解きはディナーのあとで」(撮影:阿部章仁)
    エンタメ, 舞台

    上田竜也が毒舌執事に挑む 玉井詩織&橋本良亮と共演「謎解きはディナーのあとで」開…

  • トピックス

    1. 偽ファッション広告

      偽ファッション広告がGoogle広告に大量出現 サポート詐欺被害に注意

      2025年9月上旬からGoogle広告に偽ファッションサイトが急増。数秒で「Windows Defe…
    2. 邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった

      邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった

      Webコンテンツ「絶対にバズるSNS」が9月15日公開。9月26日公開映画「俺ではない炎上」と連動し…
    3. 26年前のMMORPG「Dark Ages」、YouTuberの挑戦で限界集落から奇跡の再生

      26年前のMMORPG「Dark Ages」、YouTuberの挑戦で限界集落から奇跡の再生

      26年前にリリースされたMMORPG「Dark Ages」をご存じでしょうか。年月とともに人口は減少…

    編集部おすすめ

    1. 英国伝統のうなぎ料理は“水槽の味”?日本にはない「ゼリー寄せ」の衝撃

      英国伝統のうなぎ料理は“水槽の味”?日本にはない「ゼリー寄せ」の衝撃

      日本でうなぎといえば、甘いタレをつけて香ばしく焼き上げた「蒲焼き」が定番のスタイル。白焼きなどもあるにはありますが、うなぎといえばやっぱり蒲…
    2. たこばさんの「糸こんにゃく炒飯」

      えっ…これ糸こんにゃく!?目も舌も騙される“ヘルシー炒飯”を実際に作ってみた

      「糸こんにゃくで作った炒飯が本物そっくりに仕上がる」と聞いたら、信じられるでしょうか。大阪市のたこ焼き店「たこ焼たこば」の店主がSNSに投稿…
    3. 虎ノ門ヒルズの「どこか奇妙な職業体験」が話題 ゴミを拾いながら物語の世界へ没入

      虎ノ門ヒルズの「どこか奇妙な職業体験」が話題 ゴミを拾いながら物語の世界へ没入

      虎ノ門ヒルズで清掃員の仕事を疑似体験しながら、非日常な体験に巻き込まれていく……そんな不思議な没入型体験イベント「どこか奇妙な職業体験 虎ノ…
    4. あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!

      あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!

      子どもにとってかくれんぼは、ハラハラドキドキのスリリングな遊び。自分だけにしか分からないであろう隠れ場所を見つけて「ここなら大丈夫」「絶対見…
    5. プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

      プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

      アニメ映画「映画キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ!キミに届けるキラッキライブ!」公式は9月12日、「キミプリ♪ぬりえコンテスト」において…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト