つい先日、日本人の体にアニメキャラを彫った「痛トゥー」とも「ヲタトゥー」とも呼ばれる、タトゥーの写真が記者のTwitterタイムライン上に流れ流れてやってきた。
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タトゥー=入れ墨といえば、江戸時代に罪人の体に罰として彫られた歴史があり、日本人にはいまだアウトローな印象で感じる人が多い。
しかし海外ではアートジャンルとして確立しており、日本人が考える印象とは全く別の考えで「自分の個性」として捉える人の方が多い。また、入れる人も普通のサラリーマンからハリウッドセレブまでと様々。
最近では、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーが、子供の名前を背中に彫っているのをニュースで見かけた人も多いのではないだろうか。
その進化形として海外では、体に好きなアニメのキャラクターを彫る人が昔から少なからずおり、最近日本でもそうした写真がネットを通じ出回るなど徐々に認知度は高まりつつある。
しかし、出回る写真はいずれも海外のものばかりで、今回のように日本人に彫られた「痛トゥー」の写真が出回るのは珍しい。また聞けば、国内で彫られたものだという。
折角なのでと今回、そのTwitterの投稿主にアポイントを取り、幸運なことにタトゥーを入れた彫り師の方と一緒に取材させていただくことができた。
本稿では、日本にはまだなじみの浅い「痛トゥー」という文化について、ほんの少しだけ、そしてディープに紹介してみたいと思う。
今回取材に協力いただいたのは、神奈川県横浜市にスタジオを置く『Diablo Art』のAkiさんと、Twitter投稿主、ほだかさん(@hodaka0312)。
二人は数年来のつきあいとかで、取材の翌週に大阪で行われる『ヲタトゥーナイト』(チケット完売済)にはチームで参加するほどのつきあいだそうだ。当日ほだかさんの体には、アニメ『ガールズ&パンツァー』の武部沙織を彫る予定とのこと。
スタジオに到着し、真っ先に通されたのが待合室。
「ここはヲタ部屋か!」という位、フュギュアやアニメグッズが所狭しと並べられていた。
大半はAkiさん自身が集めたそうだが、最近では「痛トゥー」をしに来るお客さんがあれやこれやと置いていくため、気づけばこんな状態に……そして現在も着々と増殖中とのこと。
ちなみにAkiさん。仕事上だけのつきあいでヲタク文化に接しているわけではなく、子供の頃気づけば既にヲタクだったそうだ。しかし、中学に上がる頃には周囲に不良な人が多くなり、雰囲気的に隠さないといけない状況に追い込まれたそうだが、28を過ぎたあたりで再びオープンに。
今では彫り師の腕とヲタク趣味を生かし、毎月2~3人に「痛トゥー」を施すまでになっている。(ほだかさんによると、他のスタジオでは「痛トゥー」の依頼は年に1回か2回程度らしいので、この基準は普通に比べかなり多いとの話。)
なお、Akiさんが次に彫ってみたい「痛トゥー」の題材は、ゲーム『アマガミ』の森島先輩。今期一押しのアニメは『極黒のブリュンヒルデ』との話だ。
そして、「痛トゥー」のオーダーで観たことがない作品が来てしまった場合には、できる限りその作品をチェックしてから取りかかるのだそう。
一生その身に残るものだからこそ、作品をよく知ってから取り組みたいという考えらしい。
お次は施術室。半分はAkiさんのアトリエ兼になっているようで、こちらも……フィギュアやその類いがミッチリ。
しかも、タトゥーを入れる専用の機械はAkiさん手作りの痛仕様になっていた。
今回取材を通し一番印象的だったのは、二人が口をそろえた「日本はまだタトゥーについて見る目が厳しい」という意見。海外ではアートとして捉えられ、日本でも徐々にそうした印象を持つ人は増えているが、特にネット上などでは「死ね」という言葉を簡単に投げかける人もいるという。
記者はタトゥーを入れない派の人間だ。だから、否定的な人達の考えも分からないではない。しかし、単にタトゥーを入れているというだけで「死ね」などと言う言葉を他人に投げかけるのは理解できない。
今回出会った二人は、タトゥー=アウトローなイメージではなく、単にヲタク趣味をこじらせてしまって、行き着いた先の作品愛の表現方法が、多数派の薄い本等ではなく、たまたま少数派のタトゥーだったという風に感じた。つまるところ、少数派か多数派の違いでしかないのだ。
※『Diablo Art』で彫られた過去の「痛トゥー」作品集
■取材協力:
Diablo Art
ほだかさんTwitter(@hodaka0312)