おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

フィリピンの海底で戦艦山城・扶桑ら「西村艦隊」5隻発見

 マイクロソフトの共同創業者ポール・G・アレンさん率いる株式会社バルカンのプロジェクトが、フィリピンのスリガオ海峡の海底で、1944年10月25日のスリガオ海峡夜戦で沈んだ日本の戦艦「山城」「扶桑」をはじめとする5隻の軍艦を発見したと発表しました。

  •  ポール・G・アレンさんは、私費を投じて第二次世界大戦の沈没した軍艦を捜索したり、貴重な軍用機や戦車などを蒐集し「フライング・ヘリテージ・コレクション」として一般公開しており、ミリタリーファンには知られた存在です。

     コレクションの中にはフォッケウルフFw190D-13(JG26司令フランツ・ゲッツ機)や一式戦闘機「隼」I型乙(キ43-I乙)といった、現存唯一の機体(どちらも飛行可能なコンディション)もあります。また飛行可能なMiG-29UB(元ウクライナ空軍機)や、2017年秋アニメ『少女終末旅行』に登場するケッテンクラート(Sd.Kfz.2)も。

     ここ数年、アレンさんのプロジェクトはフィリピン近海で戦没した各国の軍艦を次々と発見しています。2015年には戦艦武蔵、2017年8月には、アメリカの巡洋艦インディアナポリス(原爆の部品を輸送後、日本の伊58潜水艦の雷撃により沈没)が見つかり、今回はスリガオ海峡で1944年10月25日未明に発生した「海戦史上最後の戦艦同士の砲撃戦」、スリガオ海峡夜戦で沈んだ日本海軍の艦船を捜索していました。

     調査船ペトレル搭載の無人潜水艇により、2017年11月22日から11月29日にかけて行われた海中捜索で発見されたのは、レイテ沖海戦(捷一号作戦)に参加した、西村祥治中将が指揮する第一遊撃隊第三部隊、通称「西村艦隊」に所属する第二戦隊の戦艦山城(旗艦)、戦艦扶桑、第4駆逐隊の駆逐艦満潮、駆逐艦朝雲、駆逐艦山雲の5隻。フィリピンのスリガオから35海里ほど離れた、スリガオ海峡の水深200mから600mの海底でした。

    調査船ペトレル(Photo credit:Courtesy of Paul G. Allen)

    調査船ペトレル(Photo credit:Courtesy of Paul G. Allen)

    無人潜水艇(Photo credit:Courtesy of Paul G. Allen)

    無人潜水艇(Photo credit:Courtesy of Paul G. Allen)


    無人潜水艇での調査風景(Photo credit:Courtesy of Paul G. Allen)

    無人潜水艇での調査風景(Photo credit:Courtesy of Paul G. Allen)

     公開された画像や動画によると、戦艦山城は直径3.5mのスクリュー部分、そして艦首部分が映っています。上下逆さまに着底しており、艦首の菊の御紋章は失われていました。また、上部2階層分の甲板も失われていたといいます。

    山城のスクリュー

    山城のスクリュー


    山城の艦首部を底側から見る

    山城の艦首部を底側から見る

     扶桑は戦闘中、艦中央部にある第3・第4砲塔の弾火薬庫が誘爆し、前後真っ二つに割れて別々に沈没したためか、公開された映像では、後から沈んだ艦尾部分だけが映っています。沈む前から転覆していたのですが、そのままの状態で沈んでいったらしく、2つのスクリューと舵が確認できました。

    扶桑のスクリューと舵

    扶桑のスクリューと舵

     父親が第二次大戦に従軍したことで、戦争についていろいろ調べるようになったというアレンさんは、戦死者に敬意を払う人物です。今回発見した5隻の戦艦・駆逐艦についても、むやみに引き揚げをはかるのではなく、そのままそっとしておくようです。1500名ほどが乗艦していたとされる山城の生還者は10名、同じく扶桑も数名しか生還せず、スリガオ海峡夜戦での日本側犠牲者は4000名を超えるとされます。これからも多くの御霊を抱いて、これら5隻は海底で眠り続けることでしょう。

    Photo credit: Courtesy of Paul G. Allen

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 宇宙・航空

    日本近海で民間船と衝突したアメリカ駆逐艦 船体の修理を終え2年ぶりに海へ

  • 宇宙・航空

    戦艦長門の「いま」を紹介したい 水中写真家がクラウドファンディング

  • 宇宙・航空

    アメリカに航空戦艦爆誕!? 軍艦のエイプリルフール対決

  • 宇宙・航空

    戦艦武蔵 未公開部分含む映像公開

  • 宇宙・航空

    戦艦『武蔵』 シブヤン海底で発見か

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超え
    エンタメ, 芸能人

    松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超…

  • 「金曜ロードショー」40周年
    エンタメ, 映画

    金曜ロードショー、40周年を記念した豪華2時間SP 国民が選ぶ名場面集

  • 新商品「クリスピーピザポテト チーズチーズチーズ」
    商品・物販, 経済

    ピザポテトが進化!チーズ2倍「クリスピーピザポテト」期間限定で発売

  • 魔改造カップヌードル
    商品・物販, 経済

    日清食品「魔改造カップヌードル」4品を新発売 定番フレーバーを背徳アレンジ

  • 企業と株主対立を“見える化” ストラテジックキャピタル、ガンホー批判サイト公開
    社会, 経済

    企業と株主対立を“見える化” ストラテジックキャピタル、ガンホー批判サイト公開

  • 無料クーポンリレー
    イベント・キャンペーン, 経済

    ファミリーマート、ファミペイ新規登録者向け「無料クーポンリレー」開始へ

  • トピックス

    1. 丼にサンマが丸ごと横たわる衝撃 牛角の「秋刀魚ラーメン」実食レポ

      丼にサンマが丸ごと横たわる衝撃 牛角の「秋刀魚ラーメン」実食レポ

      焼き肉チェーンの牛角は9月4日より、サンマを丸ごと一尾のせた「牛角流秋刀魚ラーメン」を販売しています…
    2. 伝説のカンフー映画「酔拳」吹替版、YouTubeで1か月限定無料配信

      伝説のカンフー映画「酔拳」吹替版、YouTubeで1か月限定無料配信

      ジャッキー・チェン主演の名作アクション映画「酔拳(吹替版)」が、Prime Videoの「シネフィル…
    3. 小学生の耳からシャーペン消しゴム 耳鼻科で無事摘出

      小学生の耳からシャーペン消しゴム 耳鼻科で無事摘出

      小学6年生の男児が耳の痛みを訴え受診したところ、耳の奥からシャープペンシルの消しゴムが摘出されました…

    編集部おすすめ

    1. 松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超え

      松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超え

      エイベックスの松浦勝人会長は9月4日、自身のX(旧Twitter)で新たに「松浦顧問制度 シーズン1」を立ち上げたことを報告した。内容は「月…
    2. 「なんかやってる」4羽の文鳥 まるで連続写真?

      「なんかやってる」4羽の文鳥 まるで連続写真?

      「なんかやってる……」Xで飼い主さんにこうつぶやかれたのは、4羽の白文鳥さんたち。添えられた写真には、4羽が棚の上に連なって集まり、まるで連…
    3. 法事でオリジナルTシャツ!?音楽フェスのような斬新な引き出物が話題

      法事で配られた家紋&没年入りTシャツが話題 “フェス感”漂うセンスに爆笑

      法事の引き出物(お返し)といえばお菓子やカタログギフトが王道ではないでしょうか。しかしときには予想だにしない品をもらうこともあるようで……。…
    4. 災害関連死ゼロを目指す「EDAN」発足 フィリップ モリスら民間団体が連携

      災害関連死ゼロを目指す「EDAN」発足 フィリップ モリスら民間団体が連携

      フィリップ モリス ジャパン(PMJ)が、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)と共同で、避難生活に特化した支援ネットワーク…
    5. 「週刊文春」2025年9月4日号(8月28日発売)

      週刊文春、最新号表紙は「白紙」 48年続いた和田誠さんの表紙絵に幕

      総合週刊誌「週刊文春」は、2025年8月28日発売の9月4日号で48年間にわたり表紙を飾り続けたイラストレーター・和田誠さんの絵を終了し、大…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト