TVアニメ「ラーメン大好き小泉さん」の影響で、このところ無意識にラーメンを食事に選んでいる筆者。そんなところに「今『蘭州ラーメン』ってのが話題ですよ」とささやく(編集長の)声が。つまりあれだな、食レポしろってことだな!これは味わってみるしかない!……ということで、早速行ってきました。
なんでも「蘭州」というのは、中国は甘粛省の省都なんだそう。古くからシルクロードの要衝として知られ、黄河が市内を流れる街です。そこに伝わる麺類を日本で判りやすく総称したものが「蘭州ラーメン」ということみたいです。
そんな蘭州ラーメンの中でも、蘭州(ランジュ)市にある老舗から正式にのれん分けを許された店が、東京の神保町にあるという話を聞いて、やってまいりました本の街神保町。目指すお店は、駿河台下交差点近くの靖国通り沿いにある「馬子禄(マーズルー)」。大きく「蘭州拉麺」「馬子禄 牛肉面」という看板があって判りやすいですね。
入り口には、さらに小さな木製の「馬子禄」と書かれた看板がかかっていました。
そして人気店なので行列ができます。店頭の看板の指示に従って、順番を待ちます。
メニューは税込880円の「牛肉面(ぎゅうにくめん/ニューローゥミェン)」のみ。ただし、麺が細麺(初心者向き)・平麺・三角麺の3種から選べ、パクチー(香菜)やラー油の有無も選択できます。また、オプションとして牛肉大盛(税込200円)やパクチー(香菜)大盛(税込120円)も。
せっかくなので、より本場っぽい三角麺をチョイス。麺は注文が入ってから手打ち・手延べで作られます。まさに拉麺(拉は手で引っ張って延ばすという意味)。
店内は中国の茶館とか菜館といったおもむき。いかにもといった感じです。店員さんも中国出身の人がいたり、お客さんも中国や中央アジア系の方の姿が。時間帯にもよるようですが、日本人との比率が半々になったり、若干逆転する時もあるようです。それだけ本場の味ということなんでしょうね。期待が高まります。
「おまたせしました」とやってきた牛肉面。冷たい中国緑茶とセットになっています。
牛骨で出されたスープはうっすら黄色味がかった透明なもの。表面にラー油が浮いていて、その赤がいいコントラストです。具は牛肉と、さらに刻まれた葉ニンニクとパクチーが。ここはパクチーでなく、中国の香菜(シャンツァイ)と呼びたいところですね。
日本でラーメンの肉といえばチャーシューや煮豚など、豚肉が一般的ですが、蘭州市は回族などイスラム系の住民が多い街。イスラムの戒律では豚肉が食べられないので、牛肉が用いられているわけです。もちろん、これらの食材はイスラム教のハラル認証を受けています。
ボリュームのある三角麺は、独特のねじれ方をしていてスープがよく絡む形状。この不揃い感が「手で延ばしている」ことを思い出させてくれますね。……ととと、麺が長い……。手で延ばして、そのまま茹でるために、麺が非常に長いのです。一気にすすり込むのは無理なので、きりの良さそうなところで噛みちぎって食べます。モチモチとした、独特の食感です。
スープは比較的あっさりとした味。葉ニンニクの香りと、ラー油に含まれたスパイスの香りがほんのり鼻をくすぐって、心はシルクロードへ誘われていく感じです。ラー油はさほど辛くはないのですが、スパイスの作用か、体が温まります。
牛肉の存在感に目がいっていましたが、他にも銀杏切りした大根が入っています。若干歯ごたえを残した火の通り具合で、この食感が麺のモチモチ感と合いますね。
あっという間に麺を完食。そのままスープも最後まで飲み干しました。……あぁ、おいしかった。
この「馬子禄」は、蘭州ラーメンに魅せられた日本人の店主が、蘭州市の馬子禄本店で修行し、日本でののれん分けが許されたというお店。日本に本場の蘭州ラーメンのおいしさを広めたいという熱意から、こんな本場っぽい店構えになってるんですね。来店の際は、毎週水曜日が定休とのことなので、お気をつけを。
(咲村珠樹)