2018年8月16日(現地時間)、ロシアのツポレフはタタールスタン共和国の首都カザンにある工場で、超音速爆撃機Tu-22Mバックファイアの最新型、Tu-22M3M初号機のロールアウト式典を行いました。式典にはツポレフを傘下に収めるUAC(ユナイテッド・エアクラフト・コーポレーション)の幹部をはじめ、ロシア航空宇宙軍幹部やロシア政府の産業貿易副大臣が出席し、大幅にアップデートされた新世代のTu-22M完成を祝いました。
Tu-22M3Mは、1993年までに製造され老朽化が進むTu-22M3を更新する目的で計画されたもの。末尾のMは、Tu-22MのMと同じく「発展型」を表します。基本設計が1960年代の冷戦期に行われたTu-22Mは、改良を加えられてTu-22M3にまで発展しましたが、ソ連崩壊の影響もあり、そこから大幅な改良がなされないままでした。
現在ロシア航空宇宙軍で運用されているTu-22M3のほとんどは1980年代に製造されたもので、すでに就役から30年以上が経過して老朽化が進んでおり、搭載している電子機器も時代遅れのものとなっています。このため、現代の要求水準に合わせて各所を改良した新型を開発し、機材の更新を図ろうという計画が進められてきました。
Tu-22M3Mは、最新のデジタル機器を搭載した機体となっており、航法装置や通信機器、照準器といったものに加え、エンジンもデジタル制御となり、電子戦装置も新しいものとなりました。搭載しているアビオニクス(航空電子機器)の80%が新しいものになっているといいます。また、任務での連携を強化するため、データ通信システムはTu-160Mと共通化されています。もちろん、コクピット計器もマルチモードディスプレイによるグラスコクピット化を果たしています。
実機を見てみると、センサー類が入っていると見られる小突起があるくらいで、全体の印象としては非常にすっきりとしたもの。キャノピー内側にはブラインドのようなものが広げられています。また、Tu-22M3までは標準装備されていた後部機銃もなくなり、各種センサーが入った大型のフェアリングに置き換えられています。
この後、Tu-22M3M初号機は地上試験の後初飛行が行われ、問題がなければロシア航空宇宙軍に引き渡されて、実戦に即した運用試験が行われる予定です。ロシアでは、現在100機以上が現役のTu-22M3をこのTu-22M3Mで更新し、爆撃機戦力の向上を図ることとしています。
Image:UAC
(咲村珠樹)