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待ってました電話屋!超歌舞伎「今昔饗宴千本桜」で中村獅童と初音ミクが共演

 4月27日と28日、日本最大級の動画サービス「niconico」の超巨大イベント「ニコニコ超会議2019」が開催されました。「ニコニコ超会議」の目玉のひとつと言えば、毎年、多くの来場者を魅了している「超歌舞伎」ということで、観劇に行ってきました。

  •  今年で4回目となる超歌舞伎。今回の演目は、2016年のニコニコ超会議で上演された初めての超歌舞伎で披露され、「第22回 AMD Award ’16大賞」や「総務大臣賞」など、数々の賞を受賞した、歌舞伎の名作「義経千本桜」と初音ミクを代表する曲「千本桜」を融合させた、オリジナル「今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)」。その時と同様、中村獅童さんが佐藤四郎兵衛忠信(さとうしろうびょうえただのぶ)を、初音ミクさんが初音未來、美玖姫(みくひめ)の2役、澤村國矢さんが敵役である青龍の精(せいりゅうのせい)をそれぞれ演じるほか、中村蝶紫さんが美玖姫の母である初音の前(はつねのまえ)を演じました。

     そんな名作を観劇するのに、超歌舞伎はもちろん、歌舞伎すら一度も見たことがない筆者だけでは心もとないと、おたくま経済新聞編集部の仲間である咲村記者が同行してくれました。観劇の前日、学生時代歌舞伎座の大向こうに通っていたという咲村記者に、獅童さんが佐藤四郎兵衛忠信を演じるのは、超歌舞伎を含めて今回で6回目であることや、下敷きとなっている「義経千本桜」の簡単なあらすじなど、歌舞伎を見る前の心得を教えてもらい、いざ!参らん!!

     今回の見どころは、前回の上演を踏まえ改めて脚本や演出を見直したことはもとより、美玖姫が艶やかに舞う場面では鼓唄を自ら唄って舞う場面や、重厚な竹本(たけもと)と軽快な長唄の掛け合いで展開し、獅童さんと美玖姫が一緒に踊る軍物語(いくさものがたり)、昨年よりも進化したNTTの超高臨場感通信技術「Kirari!」により、獅童さんと美玖姫との自然な共演を実現したところなど、たくさんありました。

     幕が開くと、裃姿の中村獅童さんが舞台に登場し、超歌舞伎の口上を述べます。歌舞伎俳優には、それぞれの一門(親子の血縁や、師匠と弟子の関係)によって「屋号」というものがあり、いわゆる大向こうからの「かけ声」は、俳優さんのお芝居に対して屋号を言うことで、褒めたり励ましたりする役割を担っているんだそうです。かけるタイミングもセリフの呼吸や鳴り物の展開に合わせ、タイミングよくかけないと逆にお芝居のリズムを壊してしまうこともあるとか。とはいえ、ニコニコならではの超歌舞伎ですから、あまり難しく考えないで歌舞伎に親しんでほしいということでした。ちなみに、中村獅童さんと門下の中村蝶紫さんは「萬屋(萬屋錦之介さんの家系)」、澤村國矢さんは「紀伊国屋(澤村藤十郎一門)」、初音ミクさんは「初音屋」、そして「Kirari!」などの技術協力をしているNTTグループはそのまま「電話屋」。電話屋……というところで、会場からは笑いが起きました。





     なぜ2016年、初の超歌舞伎で「義経千本桜」をモチーフにした「今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)」が誕生したかについて、咲村記者はこのような推測をしていました。義経千本桜には、源義経が後白河法皇から拝領した「初音の鼓」というものが重要な小道具(実は「兄・源頼朝を討て」という法皇からのサイン)として出てきます。初音ミクさんの名前と、演題に名曲「千本桜」の名前が入っているうえ、佐藤忠信(「義経千本桜」では、途中から初音の鼓の革にされた狐の息子が化けた姿と入れ替わります)と静御前の2人が踊る通称「吉野山」という場面もあって、初音ミクと共演するのに一番相応しいのではないか、とのことでした。

     また、舞台の両脇にはライブ中継しているniconico動画の画面があり、実際にサイトでリアルタイムに放送されている様子が見られるようになっているのも超歌舞伎ならでは。このため、獅童さんが少しセリフを噛んだだけでも「噛んだ屋!」「噛んでない」など、視聴者からツッコミの字幕が流れることも。その獅童さんのセリフの中にも「ニコニコユーザー」という言葉が登場したりと、ふんだんに超歌舞伎らしさが溢れた内容となっていました。

     ちなみに、筆者は歌舞伎初心者ということもあり、大向こう(〇〇屋!などの掛け声)のやタイミングや隈取(くまどり/化粧)の色の意味、やられた相手が脚を開いて倒れる理由など、分からないところが多々ありましたが、その都度、同行してくれた咲村記者が解説してくれ、とても助かりました。よく見ると、青龍の眷属が着ている衣装の柄が、三角形を並べた「うろこ」と呼ばれる模様になっていたり、細かいところにそれぞれ意味があることに気づきました。

     美玖姫と出会い、「正体を現す」と言って、中村獅童さん演じる佐藤四郎兵衛忠信が早替わりで白い衣装になると、そこには人魂の模様がありました。これは霊的な力を持つ存在(白い狐)を表しているとか。また、最後の青龍との戦闘シーンで忠信が赤い隈取りと衣装、そして髷に紙(力紙)をつけて登場した姿は、それぞれ「ものすごい力(神通力)がある」ことを観客に理解してもらうための、歌舞伎での「記号」になっているんだそうです。また、忠信が青龍とのバトルの際に手に持っていた鎧は、モチーフになった「義経千本桜」の中で、忠信が主君である源義経から形見としてもらった鎧なんだそうですよ。



     ニコニコでは「自撮り棒」の通称で呼ばれる、青龍が持っている金色の棒は、雨を司る霊獣である龍の「稲妻」を表していて、それを攻撃の時に振るのは「雷撃」を意味しているんだそうです。だから演出でビームや火球が出るのは、より視覚的にわかりやすくなったと言えそう。また、舞台の両側に青龍と忠信が分かれ、その間でアクションが展開されたシーンは、白い衣装の狐が忠信の霊的なパワー、そして周りの眷属が青龍の霊的なパワーを表していると、咲村記者からのアドバイスがありました。つまりこのシーンは「異能力バトル」を舞台上で表現していたんですね。






     そして最後は、ニコニコ動画の名物「弾幕」を利用した花吹雪の演出で、青龍によって花を咲かせられなかった千本桜が満開となり、名曲「千本桜」のエンディングへの流れに。座っていたお客さんも立ち上がり、獅童さんも「もっともっと!」と観客をあおるなど、いつの間にか歌舞伎の舞台がライブ会場のように大盛り上がり。公演が終わった瞬間は、まさに今回のキャッチフレーズのとおり「また逢いたい、桜がある」という思いで、また観劇したい気持ちになりました。



     そんな筆者と同じ気持ちになった人に朗報です。なんと、2019年8月2日から26日まで、南座新開場記念「八月南座超歌舞伎」(京都)の公演が決まっています。この超歌舞伎の公演を初めて観劇される人に筆者から贈れるアドバイスがあるとすれば、「サイリウムは忘れるな!」でしょうか……。

    (c)超歌舞伎
    取材協力:ニコニコ超会議実行委員会

    (取材:佐藤圭亮)

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