災害や外国の脅威から人々の暮らしの平和と安全を守る自衛隊。ニュースで知ってはいても、実はそれってほんの一面に過ぎないんです。そんな一般のイメージとは違った姿を知ってもらおうと、防衛省が新たなWEB動画を2019年7月1日に公開しました。
自衛官の募集広報活動を行っている防衛省 陸上幕僚監部 人事部 募集・援護課が公開したWEB動画「自衛隊のソレ、誤解ですから!」。人気ラノベ「とある魔術の禁書目録」シリーズの主人公、上条当麻の右手に宿る“幻想殺し(イマジンブレイカー)”のように、一般の人が抱く“自衛隊のイメージ(幻想)”を打ち砕いていきます。
体を使うイメージがあるせいか「みんな体育会系?」という問いには、元帰宅部や元合唱部(なぜかポージングがボディビルの“サイドチェスト”の形になってますが)という自衛官が登場。
そして「毎日キツそう」というイメージには、逆に残業はほとんどない、という回答が。もちろん、災害出動などがあった際には非常呼集がかかって24時間体制ですが、事故や不測の事態を防ぐため、必ず交代で休息するような仕組みが作られています。現場では、判断ミスが自分や仲間の命を失わせる危険がありますから、その点は考慮されているといえます。
仕事内容は「肉体系ばっかり?」というのも大きな誤解。自衛隊には医官(医師)や看護師もいれば、会計や事務を担当する自衛官もいます。とある航空自衛官は、職業が「航空自衛官」だと知られて「戦闘機に乗ったりするんですか?」とキラキラした目で聞かれ、実は人事・会計だと言えなくなったという話も……。
階級社会で規律がしっかりしてて「自由が無さそう」というイメージも誤解。オンとオフの切り替えがしっかりしているという点では規律正しいですが、自由時間の過ごし方は人それぞれ。ゲームで遊ぶ人も多くいます。とある海上自衛官は筆者と話した際、訓練航海で外洋に出るとオンラインゲームができなくなるので、ゲーム内イベントの時期と重なると……とこぼしていました。
また課業中(仕事中)も、若い幹部自衛官が経験豊富な曹(部下)の自衛官に敬語で接する場面もよく見かけます。艦長や中隊長クラスの幹部自衛官も、若い曹士の自衛官に対し、フランクに話しかけたりしていますよ。
基地(海上・航空)や駐屯地(陸上)から出られない、というのも自衛隊都市伝説。基本的に独身の曹士は、基地や駐屯地内にある宿舎に暮らす「営内」という形ですが、妻帯者はもちろん、独身でも許可があれば基地や駐屯地の外(営外)に住むことができます。もちろん、営内暮らしの自衛官も外で飲み歩く機会があります。
自衛隊は「男ばっかり」でむさ苦しい……というイメージを抱く人も多いですが、確かに比率的には男性が多いものの、このところ女性自衛官の数も増えています。また、旧来は男性のみの職種とされてきた航空自衛隊の戦闘機パイロットにも、宮崎県新田原基地の第305飛行隊に松島美紗2尉(防大58期)が在籍しており、F-15Jを飛ばしています。
この動画のほかにも「国家を守る、公務員。」と題した、陸海空3自衛隊の自衛官を紹介した動画が、同じ7月1日に公開されています。挙手の敬礼が、海上自衛隊だけ艦艇の狭い廊下でヒジがぶつからないよう、脇を締めた姿勢になっているのにも注目ですよ。
こちらでは陸上自衛隊東部方面航空隊・東部方面管制気象隊(東京都・立川駐屯地)の作田朋見3曹、護衛艦やまぎり(DD-152)船務科の櫻井正子士長、航空自衛隊第402飛行隊(埼玉県・入間基地)の空中輸送員(ロードマスター)松原聡志3曹が登場。仕事の時とは全く違うプライベートの一面を披露してくれています。
筆者などは仕事・プライベート問わず自衛官との交流が多いのですが、志望動機を含めて本当に「人それぞれ」という印象で、そこは本当に一般の公務員(自衛官は特別職公務員の一種)と変わらないもの。固定観念で判断せず、それぞれの個人を見るとより自衛隊や自衛官が身近に思えるかもしれません。WEB動画「国家を守る、公務員」は、防衛省・自衛隊の自衛官募集ホームページで見ることができます。
情報提供:防衛省・自衛隊
(咲村珠樹)