お店のシャッターや屋台の透明ビニール等に書かれたキレイな文字。機械でプリントされたものかと思いきや、なんと手書きというのですから驚きです。その文字をすごいスピードで書いていく様子を紹介した看板屋さんの動画が、ネットで話題を読んでいます。
この動画を公開したのは、大阪府南部の泉州地域で看板屋をしているサインズシュウさん。この道30年以上という職人さんです。TwitterやYouTubeで作業の様子を投稿しているほか、学園祭で実演(ライブペインティング)や、実演講習会(ワークショップ)を行うこともあるそうです。また、南海電鉄の古い運行表示板(前サボ)の再現も手がけています。
手書きが出来る看板屋の最後の世代の職人です。失われつつある日本特有のレタリング技術です。
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— サインズシュウ【絶滅危惧種】 (@signsshu) April 16, 2018
お店のシャッターに文字を書き込んでいく動画では、右手に筆を持ち、左手にはペンキのカップを持ちながら、左手を支えにして器用に書き進めていきます。大きな文字は下書きがありますが、小さな文字は下書きなしの一発勝負。それなのに、迷いなくスラスラと美しい文字を書いていくのは、まさに「匠の技」といったところ。
書き上げた文字は「焼酎を飲みながら今日書いた文字をしげしげと眺めております。変態である事はご了承願います」とTwitterに投稿しているように、出来栄えを検証している様子。現状に満足せず、文字の美しさに磨きをかけることを怠りません。
サインズシュウさんが看板屋に弟子入りをした昭和61年頃は、看板屋の専門学校など無かった時代。当時、このような手技は、看板屋以外で学ぶ事は出来なかったそうです。
看板屋に弟子入りをして6年後に「サインズシュウ」として独立。しかし、週の半分は親方のところにも通いながら勉強し、半分は自分で取って来た仕事をするという過酷な状況がしばらく続いたとか。その後、平成6年頃に完全に独立し、活躍の幅を広げていったそうです。
看板の中でもシャッターは凹凸があり、キレイな文字を書くにはかなりの技術がいりそうですが、使う筆をその箇所によって変えながら書いているとのこと。現在では、凹凸面など意識せずに、平面と同じような感覚で書けているといいます。特に、ひらがなを書く際には、迷わずに勢いよく書き進めるのがコツとか。
看板でよく見かける文字に丸みのあるゴシック体が多いのは、看板屋からすると丸ゴシックは、筆の運びがスムーズで書きやすいからなんだとか。逆に明朝体は、書くのに手間がかかってしまうとのこと。書道の文字とは違い、線の太さを一定にしたり、文字のはらいを丸くしたりと、看板特有の筆運びをしなければいけないところが、至難の業ではないかと思いました。
大阪では一時期、台風の被害で看板が壊れ、そのために依頼が殺到していたようですが、現在は落ち着きをみせているようです。それでも、仕事の依頼は途切れることなく、年中忙しくしているとのこと。
こんなにも毎日文字を書き続け、飽きたりはしないのか尋ねたところ「印刷みたいな文字を書きたいという一心のみで今もやり続けているだけです。飽きるという感覚はありません。誰よりも飽きっぽい性格ですが、これは飽きた事がないですし、飽きるようでは30年以上もこんな事やっていなかったでしょう。貴方に『飯を食べるのに飽きた事はないですか?』と聞くようなものです」と語って下さいました。
仕事に対する情熱を絶やさないために唯一できることは、毎日続けることなのだと改めて気づかされた筆者でした。サインズシュウさんのYouTubeチャンネルには、これまで書き上げた看板の「作品」が多数公開されています。奥深い看板職人の世界、じっくり覗いてみませんか?
<記事化協力>
サインズシュウさん(@signsshu)
▼YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCVNG0ksieUEuc0_-Ev-DKVA
(黒田芽以)