アメリカへの遠征航海「ウェストラント19」を行っているイギリス海軍の空母クイーン・エリザベス。アメリカ沖の大西洋で2019年10月13日(現地時間)、初めてイギリスのF-35Bが着艦しました。イギリス海軍が10月14日付で発表しています。
駆逐艦ドラゴン(D35)、フリゲートのノーサンバーランド(F238)、給油艦タイドフォース(A129)を従え、8月末からアメリカへの遠征航海「ウェストラント19」を実施している空母クイーン・エリザベス(R08)。主な目的は、搭載するF-35Bの運用能力獲得です。
すでに2018年のアメリカへの遠征航海で、イギリス軍パイロットが操縦するF-35Bを飛行甲板に迎えたクイーン・エリザベスですが、このとき着艦したのはアメリカ海兵隊に所属する訓練機。今回の「ウェストラント19」では、初めてイギリスのF-35Bを使っての訓練が行われます。
今回の訓練について、部隊の指揮官であるマイク・アトレイ海軍代将は「イギリスのF-35がイギリスで建造された空母で運用されるという点は、産業と軍事に、そしてアメリカとイギリスにおける画期的なものといえるでしょう。昨年、開発過程においてF-35の運用を行いましたが、今回はより実際の任務に立脚した形で訓練を行います。飛行機、空母、そして僚艦である駆逐艦とフリゲートは、シームレスに連携して動けるだろうと自信を持っています」と談話を発表しています。
垂直着陸モードのF-35Bは艦尾方向から近づき、一旦左舷側に占位してホバリング。そこから右へ平行移動する形で飛行甲板上にマーキングされた着艦スポットを目指します。
艦上にいると忘れがちですが、動かない地面と違い、空母は風上に向けて航行しています。ですからF-35は平行移動しているように見えて、実際は船と速度を合わせて斜め右方向へ移動するという高度なテクニックを使っているのです。
飛行甲板からの誘導に従い、ゆっくりと着艦スポット上空へやってきたF-35B。狙い通りのポイントに降下して、無事に着艦しました。
航空及び空母打撃部門の参謀副長、マーティン・コネル海軍少将は「イギリスのライトニング(F-35)が初めて空母クイーン・エリザベスに着艦し、海軍と空軍にとって大きな節目となりました。同時に、我々が進める第5世代戦闘機を運用する空母打撃群の能力開発においても、大きな山を越えた形になります。再三触れていることですが、アメリカ海軍とアメリカ海兵隊の協力なくして、この海軍航空史に残る出来事はなしえなかったでしょう」と、イギリスのF-35が自国の空母で初めて発着艦を行なった感慨についてコメントしています。
アメリカ近海で行われている「ウェストラント19」では、空母の訓練だけでなく、アメリカ海軍との共同訓練も行われています。駆逐艦ドラゴンはオランダ海軍のフリゲート、デ・ロイテル(F804)とともに、アメリカ海軍の空母ドワイト・D・アイゼンハワー(CVN-69)の空母打撃群(CSG-10)と防空戦闘の訓練を行いました。これは将来、クイーン・エリザベス空母打撃群として行動する際に役立てられるものです。
イギリス海軍では2020年末までに、空母クイーン・エリザベスとその僚艦が空母打撃群としての能力を獲得することを目指しています。そして最初の任務は2021年、アメリカ海兵隊のF-35B飛行隊と共同で海外派遣される予定です。
<出典・引用>
イギリス海軍 プレスリリース
Image:Royal Navy, Crown Copyright 2019/U.S.Navy
(咲村珠樹)