戦力化に向け様々な試験を行っている、アメリカ海軍の最新型空母ジェラルド・R・フォード。このたび、至近距離で魚雷や機雷が爆発した場合を想定した水中衝撃試験の1回目が実施され、無事に終了したことが2021年6月18日(現地時間)に発表されました。空母での試験は、1987年に実施されたセオドア・ルーズベルト以来となります。
海の上で行動する艦艇にとって、もっとも気をつけなくてないけないのが、沈没につながる水面下の損傷。魚雷や機雷が直撃するのはいうまでもなく、至近距離で爆発すると水中に衝撃波が発生し、それによって直撃弾以上の衝撃が船体構造を襲い、損傷させます。
このためアメリカ海軍では、新しいクラスの艦艇が戦力化される前に、至近距離の爆発で発生する水中衝撃波に対し、十分な耐久性があるかどうかを実際に確認する「FSST(Full Ship Shock Trials)」という試験が実施されています。もっとも最近の例では2016年、インディペンデンス級とフリーダム級の沿海域戦闘艦に対して行われており、インディペンデンス級の代表としてジャクソン(LCS-6)、フリーダム級の代表としてミルウォーキー(LCS-5)が試験に供されました。
空母がFSSTを受けるのは、1987年のニミッツ級4番艦セオドア・ルーズベルト以来のこと。セオドア・ルーズベルト以降のニミッツ級は1〜3番艦と異なり、船体各所をモジュール化して組み立てるという新しい建造方式を採用したため、この建造方式でも従来と同様の強度(抗堪性)が得られるかをテストしたのでした。
ジェラルド・R・フォードは、アメリカ海軍で初めて先進的なコンピュータ・モデリングを活用して設計された空母。設計時のコンピュータ・シミュレーションでは確認できない部分があるため、実際に至近距離で爆発を起こし、船体にどのような力が加わるのかを確認する必要があります。
試験は6月18日に、アメリカ東海岸の大西洋沖で実施されました。爆発が海洋生物に与える影響を最小化するため、定められた要件に従い最小限のスケジュールで行われています。
航行する空母フォードの右舷近くで、船によって曳航された爆雷が爆発。海面には爆発による白い衝撃波が丸く広がり、一拍置いて水柱が大きく上がりました。
水柱は空母フォードの艦橋構造物より遥か高くまで達し、さらに波となって広がりました。ヘリコプターから撮影された映像では、フォードは何の影響もなく航行しているように見えます。
アメリカ海軍によると、フォードに対するFSSTは夏に再度実施される予定だといいます。試験が終了したのちはドックへ入り、6か月間の整備・修復・近代化作業に入り、戦力化に備えるということです。
<出典・引用>
アメリカ海軍 プレスリリース
Image:U.S.Navy
(咲村珠樹)