アメリカ空軍は2020年2月27日(現地時間)、新型捜索救難ヘリコプターHH-60Wの名称を「ジョリーグリーンII」とすることを発表しました。これはベトナム戦闘時の捜索救難ヘリコプターHH-3ジョリーグリーン、その後継機HH-53スーパージョリーグリーンにちなみます。
これまでアメリカ軍のシコルスキーH-60シリーズのヘリコプターは、原型機であるUH-60ブラックホークにちなみ、派生型も語尾に「ホーク」がつく名称となっていました。空軍の捜索救難ヘリコプターも例外ではなく、現用のHH-60Gは「ペイヴホーク」という名称です。
新しい捜索救難ヘリコプターHH-60Wは、メインローターをより効率の良いものに換え、機体規模を拡張して燃料搭載量を増やしたモデル。より長時間かつ広範囲の捜索救難が可能になりました。
アメリカ空軍はこのところ、過去の歴史を尊重する姿勢を見せており、新型ジェット練習機T-7に第二次世界大戦時の黒人戦闘機部隊「タスキーギ・エアメン」の機体塗装にちなんだ「レッドホーク」という名称を採用しています。今回のHH-60W「ジョリーグリーンII」も、ベトナム戦争時に活躍した捜索救難ヘリコプター、シコルスキーHH-3「ジョリーグリーン」と、その拡大改良版であるHH-53「スーパージョリーグリーン」の名前に敬意を表したものです。
ジョリーグリーンとは、ミネソタ州ルシュール(Le Sueur)付近を流れるミネソタ川の「緑の巨人の谷(Valley of the Jolly Green Giant)」と、そこで創業した食品会社のブランドマスコット「グリーンジャイアント」にちなむもの。ベトナム戦争当時、緑を基調としたジャングル迷彩を採用していたため、助けに来てくれる「緑の大きなヘリコプター」を、そのブランドマスコットに例えたのです。
フロリダ州オーランドで開催された、空軍協会主催のシンポジウムでHH-60Wの名称を発表したバレット空軍長官は、その席上でベトナム戦争時代のHH-3、HH-53搭乗員、バリー・カムフート退役大佐と、ウェイン・フィスク退役上級曹長を壇上に招き、その救難活動を讃えました。
バレット空軍長官は「『ジョリーグリーン』の名前を復活させたのは、過去と未来の捜索救難活動に従事する人々の働きに敬意を表するものです。彼らは『他を生かすために我々は動く』というモットーのもと、航空機を運用してきました。HH-60Wもまた、これまで以上に航空捜索救難任務を遂行できるようになるでしょう」と、HH-60WジョリーグリーンIIの命名意図を語っています。
ゴールドファイン空軍参謀総長も「HH-60Wは、統合戦力の捜索救難活動において活躍できるよう設計されたものです。ジョリーグリーンIIはより広範囲な、そしてより向上した能力を我々にもたらしてくれます」とコメントしています。
アメリカ空軍では老朽化したHH-60Gペイヴホークの後継として、HH-60Wを最大108機調達する予定。最初に配備されるのは、ジョージア州ムーディ空軍基地の第41救難飛行隊と、ニューメキシコ州カートランド空軍基地の第512救難飛行隊となっています。
<出典・引用>
アメリカ空軍 ニュースリリース
Image:USAF
(咲村珠樹)