暑い時期につるりと美味しいそうめん。スルスルと食べられるので、食欲がない時も何となく食べてしまうもの。そんなそうめんの様な、不思議な花がツイッターで話題を呼んでいます。

 このそうめんみたいな見た目の花、「パナマソウ」という植物の花なのです。大阪の鶴見区緑地公園にある植物園「咲くやこの花館」には、世界中の約5500種もの植物が集められており、貴重な花の生態を観察することができます。

 咲くやこの花館では、ツイッターで館内の開花している植物の情報などを投稿していますが、「速報!『パナマソウ』が開花しました!!一日花ですので、明日には散ってしまう貴重な植物です。熱帯雨林室にて是非ご覧ください」とその花の姿をツイッターに投稿したところ、大きな話題に。

 開花が始まって2~3時間でその姿があらわになるのですが、見た目はそうめんを山盛りに盛り付けたみたいな形。色も太さも長いそうめんの様な繊維の塊が、くねくねと円錐状に天を突くように伸びています。袋ラーメンの麺の様なくねくねとしたこのそうめん状のものは、実は花の雄しべ。

 この花の様子を見た人たちからは、「山盛りそうめんに見えました」「ミョウガとシソと生姜が欲しくなります」「何かの乾麺かと……」といったリプライで大盛り上がり。

 あまりにも不思議なパナマソウの花の姿について、咲くやこの花館の職員の大石さんにお話を伺いました。

 大石さんによると、毎年パナマソウの開花時期にはつぼみの状態から開花したところをツイッターに投稿しているのだそう。開花した花の写真は、例年だと800リツイート程されるという事ですが、今年はコロナ禍の影響もあってか、1万以上ものリツイートで大きな話題となった事に驚きを隠せなかったのだそう。

 この大量の花の雄しべは、開花から数時間で徐々にほぐれていき、翌日には落ちてしまうのだとか。このため、実際に開花しているところを見る事ができた人は非常にラッキー。大石さんのお話によると、7月12日の昼頃に開花が始まったパナマソウの花は、同日の午後3時ごろにはツイッターの写真の様に満開(?)になったとの事で、「明日の朝には見ごろが終わっていると思います」との話。


 そして、皆さんが気になると思う質問をぶつけてみました。「このそうめんみたいな雄しべ、食用になったりしますか?」

 大石さん「毒性は無いようですけど、食用には向かないと思います(笑)落ちた後の雄しべの触感は、そうめんのような柔らかさはなくて、白髪ねぎのような感じです」との事。

 雄しべが落ちた後に出てくるトウモロコシによく似た部分といい、長い雄しべといい、トウモロコシに近い種類の植物なのかと思いきや、トウモロコシとは遠い種類で、植物の種類も「パナマソウ科」とそのものの名前。DNAによる分類ではタコノキの近縁という話。

 名前に「パナマ」と付いていますが、原産地はエクアドル。中南米の熱帯地方で広く栽培されているそうです。古くから、若い葉を編んで作るパナマ帽の原料として利用されています。

 ちなみに、トウモロコシみたいな実の部分も食用には向かないそう。開花後このまましばらく置いておくと赤く熟していき、さらに放置しておくと、9月頃に割れてオレンジ色の種子が出てくるそう。雄しべが落ちた後に実の先端に切り込みを入れておくと、そこから2つに割れていき、羊の角の様にクルンと丸まっていくんですって。

 開花時間がとても短い辺り、月下美人に近いものを感じます。しかし、月下美人は夜に咲く性質があるので光の量を調整する事で開花を昼にさせる事ができますが、パナマソウの花は昼に咲いて翌日には終わってしまうため、開花調整はできないのだそう。

 咲くやこの花館にはまだパナマソウの花のつぼみが見られているようなので、運が良ければ開花しているところを見られるかもしれませんよ。咲くやこの花館は月曜休館(休日の場合はその翌平日・8月11日のみ臨時開館)、開館時間は10:00~17:00(入館は16:30まで)です。

<取材協力>
咲くやこの花館(Twitter:@SakuyaismU/HP:sakuyakonohana.jp) 大石さん

(梓川みいな)