昭和中期から後期にかけて街中で見られた建物は、令和の今だいぶ少なくなりました。しかし、中には昭和から現在に至るまで取り壊されずに残っている建物もまだまだ存在しています。そんな懐かしの情景を感じさせる写真が、まさかのジオラマ作品という事で見た人たちを驚かせています。
「#ジオラマ作ってないひとにジオラマ作りたくさせるような写真」というツイッターのハッシュタグとともに、2枚の写真をツイッターに投稿したのは、作者のタカツさん。実はこの作品、2019年にも話題になっているもの。
1枚目の写真は、昭和40年~50年頃には現役であっただろうと思わせる成人向けの映画館。赤さびたような色味の観音開きの出入り口には、既に営業を中止したとみられる内容の張り紙が貼られ、赤と白のロードコーンがいくつか置かれています。
昔は鮮やかだったであろうオレンジ色の自販機と水色の自販機が建物脇に置かれていますが、さびて朽ちつつある様子が郷愁を誘います。そういえば昔、このタイプの自販機でオレンジジュース買ってもらったっけ。
そして建物の壁には上映中のピンク映画のポスターを貼るガラスケース。中には当時の物と思われる、いかにもな雰囲気のポスターが貼られています。
建物の上の方の壁には「両国新劇場」と読めそうな文字が。「国」と「劇」の片方が経年劣化で落ちてしまい、貼り後から分かるような雰囲気。よく見ると、建物左側の端には番地案内の青い縦の板が貼られており、そこには「両国町一丁目2」と読み取れます。
しかし、2枚目の写真には大きな手が写り込んでおり、ピンセットでロードコーンに黄色と黒のチェーンを繋げている様子が。え?これ巨人の手かな??なんて思わせるほどに昭和のノスタルジックな雰囲気たっぷりの建物に似つかわしくないその巨大な手は、実はタカツさんの手。
■ いくつかの劇場を参考に作られた“架空の劇場”
実在の建物ではないというこのジオラマは、タカツさんが墨田区にあった両国劇場をベースとして設計したものだそう。都内を中心に、いくつかの劇場を参考にしたそうですが、設計しているうちに北九州の有楽映画劇場の色がかなり濃くなったのだとか。
ポスターや文字などのリアルな感じをどうやって出しているか、気になったので質問してみたところ、「文字はPCでデータ制作して出力したものに、塗料などを使って汚し加工してます。ポスターは実在の映画のポスターをこれまたPCにて縮尺変更して出力してます。青い看板なども同じ手法で、材質をホーロー製に見せるために塗装で少し手を加えます。どれも元は紙です」と手法を教えてくださいました。
時代を伝えるポスターや張り紙、看板などには全て元ネタがあるのだそう。その資料を集めるのだけでもかなりの労力を割いているようです。街中にかつて存在していた「生きた空気感」を丸ごとジオラマに閉じ込める……。そんな思いを込めて細部まで丁寧に作られているジオラマは、見事にその時代の「空気感」を再現しているように見えますね。
#ジオラマ作ってないひとにジオラマ作りたくさせるような写真 pic.twitter.com/PBHGswlJY9
— タカツ (@sakatuca) February 11, 2021
<記事化協力>
タカツさん(Twitter:@sakatuca /Instagram:sakatuca)
(梓川みいな)