フランスのパルリ軍事大臣は2021年3月29日(現地時間)、ブルターニュ地方ロリアンにあるナーバル・グループの造船所を視察し、その後の記者会見で次世代原子力空母の予備設計が始まったこと、新たに汎用中型フリゲートの2番艦「ルーゾー」と3番艦「カステックス」の正式発注を発表しました。今回発注された2隻のフリゲートは、2025年に就役する予定です。
パルリ軍事大臣はロリアンにあるバーバル・グループの造船所で、2019年に起工した汎用中型フリゲート(FDI)1番艦「ロナーク」の建造風景を視察。2023年の引き渡しに向け、順調に作業が進んでいることを確認しました。
また、2年前から予備調査が進められている次世代原子力空母(PA-Ng)についても進行状況を確認。設計プロジェクトを訪れ、2021年3月19日に発注された予備設計作業の概略を聞き取りました。
視察後の記者会見でパルリ軍事大臣は、シャルル・ド・ゴールの後継となる次世代原子力空母の予備設計作業をナーバル・グループ、アトランティック造船所、テクニクアトム(原子炉メーカー)に発注したと明らかにしました。また、次世代汎用中型フリゲート(FDI)3番艦カステックスについて、海洋における脅威の高まりから発注を1年前倒ししたと発表しています。
パルリ軍事大臣はナーバル・グループの従業員に対し「ご存知のように、空母の建造は長期間にわたる長い道のりです。多くの人にとって、それは一生に1度の仕事であり、情熱の対象であり、独特の産業的・技術的叙事詩です。就役予定の2038年までは、まだまだ長い道のりが残されています。今回発注された予備設計の後には詳細設計の段階があり、建造は2025年から始まります。最初の海上公試は2036年です。私たちは皆さんを信頼しています。同時に、皆さんはこのスケジュールを信頼することができます。国家は約束を守ります」と語り、空母建造に対する意気込みを明らかにしています。
空母建造においてナーバル・グループとアトランティック造船所は、共同企業体(JV)を3月10日付で設立。出資比率はナーバル・グループが65%、アトランティック造船所が35%となっています。
ナーバル・グループのピエール・エリック・ポメレCEOは「原子力空母は、最も複雑なシステムの1つです。このJVはヨーロッパ造船界における防衛・民間部門のリーディングカンパニー2社の力を結集し、共通の志のもとテクニクアトムとともに、このユニークな船の設計と開発を実現するため、事業を進めていきます」とのコメントを発表しました。
アトランティック造船所ゼネラルマネージャのローレン・カスタン氏は「私たちはこの共同企業体の設立を喜ばしく思います。ナーバル・グループ、テクニクアトムと一緒に取り組むことで、アトランティック造船所の持つ大規模で複雑なプロジェクトにおけるマネジメント経験を注ぎ込み、軍民双方の大型船舶設計で得られた経験と卓越した産業ツールを最大限活用することが可能となります」との談話を発表しています。
次世代原子力空母建造では、年間2000名の直接雇用を生み出します。また汎用中型フリゲート建造においても、ナーバル・グループと関連企業で合計1200名の常勤雇用を生み出すため、フランス経済界でこれらのプロジェクトは大きな追い風となりそうです。
<出典・引用>
フランス軍事省 プレスリリース
ナーバル・グループ プレスリリース
アトランティック造船所 プレスリリース
テクニクアトム ニュースリリース
Image:ナーバル・グループ/フランス軍事省
(咲村珠樹)