海上自衛隊の護衛艦ひゅうがは2020年12月15日~17日の期間、沖ノ鳥島周辺の太平洋で、フランス海軍の原子力潜水艦、アメリカ海軍の駆逐艦らと日米仏3か国での対潜水艦戦闘訓練を実施しました。日米仏の3か国が参加し、フランスの潜水艦を相手とした対潜水艦戦闘訓練は、これが初めての機会です。
今回の日米仏3か国共同訓練は、フランス海軍の潜水艦がグアム島を訪問したタイミングで実施されました。参加したのは、ひゅうがのほかフランスのリュビ級攻撃型原子力潜水艦のエメロード(S-604)とアメリカ駆逐艦ジョン・S・マケイン(DDG-56)、そしてアメリカ海軍のP-8A哨戒機です。
フランスのリュビ級原子力潜水艦はタイプシップのリュビ(ルビー)をはじめ、3番艦カサビアンカ(18世紀ナポレオン戦争「ナイルの海戦」で戦死した戦列艦ロリアン艦長のカサビアンカ大佐にちなむ)を除き、宝石から艦名が採用されています。4番艦エメロードは「エメラルド」の意味。
太平洋での長期遠征任務を遂行しているエメロードは、支援船セーヌをともない、2020年11月末にグアムを訪問。グアム近海でアメリカ海軍の原子力潜水艦アッシュビルとの訓練を実施した後、同じく太平洋で活動している護衛艦ひゅうが、駆逐艦マケインとの対潜水艦戦闘(ASW)訓練が設定されました。
訓練ではアメリカ海軍のP-8A哨戒機も参加し、潜水艦と水上艦艇が攻守を交代しつつ様々な戦闘シナリオで戦闘の手順を確認。海上自衛隊にとっては、同じ日本やアメリカ海軍といった「慣れた相手」とは違う音響特性を持つ潜水艦を相手に訓練することで、より幅広い対潜水艦戦闘のスキルを磨くことができます。
ひゅうがが属する第3護衛隊指令の濱崎真吾1佐は、アメリカ海軍を通じ「搭載航空機を活用した機動的かつ高度な対潜水艦戦闘は、我々海上自衛隊の主要な任務の1つです。今回、フランス海軍のエメロードと海上自衛隊が初めて訓練を実施でき、非常に光栄なことと思っております。日米仏3か国での訓練は、戦術技量を向上させるだけでなく、法の支配と自由に基づく「自由で開かれたインド太平洋」の維持にもつながります」とのコメントを発表しています。
駆逐艦ジョン・S・マケイン艦長のライアン・T・イースターデイ中佐は「この訓練は同盟国やパートナーとのネットワークの幅広さ、強さ、価値を示すものです。海上自衛隊やフランス海軍と訓練を実施することで、乗員の戦闘力を高めて3か国の相互運用性を高めるだけでなく、3か国間での継続的な協力を通じ、地域の平和と安全の基盤を強化し、自由で開かれたインド太平洋地域を支援することができます」とのコメントを発表しています。
インド太平洋地域における平和と安定に関しては、周辺諸国だけでなくヨーロッパ諸国も高い関心を示しており、フランスやイギリスは艦艇や戦闘機を派遣しての共同訓練を実施するようになっています。2021年には、イギリスの新鋭空母クイーン・エリザベスが日本周辺海域へ遠征する計画もあり、日本の自衛隊とも今後より一層の関係強化が見込まれます。
<出典・引用>
海上自衛隊 プレスリリース
アメリカ海軍 ニュースリリース
Image:U.S.Navy
(咲村珠樹)