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ゆるくないゆるキャラ界に新星現る 兵庫・加西市に食虫植物キャラ「健美」爆誕

 「ゆるキャラ」と呼ばれる、愛らしい姿が特徴的な日本各地のご当地キャラたち。

 近年は「ゆるい」の解釈が広義になったためか、時に「ゆるくないゆるキャラ」とも形容される奇抜なキャラを採用し、結果「町おこし」に成功している自治体も存在しています。そんな中、兵庫の地にて、ある個性的なご当地キャラが爆誕しました。

  •  兵庫県加西市。兵庫の中でも中央部に位置し、山田錦の栽培や兵庫フラワーセンターなど、何かと「植物」に縁のある街です。

     ちなみにこの加西、隣接する自治体のひとつが神崎郡福崎町。そして福崎といえば、冒頭の「ゆるくないゆるキャラ」として全国的にも知られている「妖怪・ガジロウ」を擁することでも有名です。

    JR福崎駅にあるモニュメントには15分おきにガジロウが出現。

     そんなガジロウの生みの親といえば、「公務員らしからぬ公務員」こと、福崎町地域振興課所属の小川知男さん。奇想天外な発想力と周囲を巻き込む行動力で「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2019」にて、「すごい!地方公務員」の1人にノミネートされたスーパー公務員。

     「隣町とはいえ、なぜ唐突に小川さんをヨイショしているんだ?」と思った方も多いかもしれません。実は今回の取材は、そんな小川さんからの紹介。今回ここ加西の地で爆誕したご当地キャラにも関わっているそうです。

     「今度は一体何を企んでいるんだ……?」失礼ながら、少々身構えながら、筆者は今回の待ち合わせ場所である商業施設「アスティア加西」に向かうことに。

    ガジロウの仕掛け人、小川さんからの紹介で一路加西市へ向かった筆者。

     そのまま3階にある地域交流センター「ねひめホール」へ直行。加西自体は幾度か訪れる機会のある筆者ですが、今回のアスティア加西は十数年ぶりの来訪でした。

     施設内でキョロキョロしていると、どこからともなくやってきたのが、今回取材をする阿部裕彦さん(以下、阿部さん)。

     加西市役所職員の傍ら、市を含めた北播磨地区の地域活性化を目指す「北播磨ブランド化委員会」の一員としても活動されているそうです。それにしても、名刺の裏面にはなぜアフロが描かれてるんだろうか?

    いただいた名刺の裏面はなぜかアフロのイラストが。

     と、名刺交換も程々に、健美の待ち構えるホールへと向かう筆者。ちなみにホールの座席は、感染症対策の一環で一席あけて使うソーシャルディスタンス仕様になっていました。

    待ち人の待つホール内はしっかりとソーシャルディスタンス。

     さて今回の「待ち人」とついにご対面。ホールに入ると舞台を背にして立たされます。もーう。ドキドキするー!そして3・2・1……バッ!と振り返ると……。ぽかーん。

    妖怪「ガジロウ」を生んだ町「福崎町」の隣町「加西市」に新たなゆるキャラが爆誕。

     長髪をなびかせた「健美(ケミィ)」が筆者をお出迎え。クリっとした瞳に、紫の唇、花びらのようなとさか、弾力さを感じさせる大腿に少々長めの爪先と、これ以上ないくらいに目をひく容姿。圧がすごい……!

     まさに一度見たら、脳裏に焼き付く強烈……ゲホゲホ、魅力的なご当地キャラです。なお、健美は女性キャラとのことで、恥じらう姿もまたチャーミング(震え声)。

    女性キャラという健美。恥じらう姿もチャーミング。

     その後は一瞬にして撮影会場に変貌したホール内。様々な角度のポージングをしてもらい、「いいよ~とってもいいよ~」と口にしてしまいそうな撮影タイム。そうこう過ごすうちに筆者の感情も最初のものとは変わってきます。あれ、かわいいかも……!「健美ちゃん、視線ちょうだーい」。ノリノリになってきました。

    段々健美の撮影が楽しくなってきた筆者。

     一通り撮影が終わった後は、「発案者」の阿部さんへのインタビューを実施。筆者の眼前にその全貌を現した健美について、阿部さん自身の活動詳細も交えつつ、うかがいました。

    ■ 福崎町から出向中

    ―― 本日はありがとうございます。それにしても実物を見るとすごいインパクト。容姿も「ガジロウ」を彷彿とさせます。

    阿部さん「ありがとうございます。『健美』もガジロウと同じ方(特殊造形師・河津一守氏)にデザインしてもらったんです。ちなみにガジロウ担当者の小川さんは、私の中学高校時代の同級生なんですよ」

    ―― なんと!色々と合点が行きました(笑)ガジロウと同じデザインということは、健美も「妖怪」になるんでしょうか?

    阿部さん「いや、健美は『サラセニア』という食虫植物をモチーフにしているんです」

    ―― 確かに後ろ姿は植物感が強かったです。となると、「花の精」とでも言ったところでしょうか。加西ですし、「生誕の地」はフラワーセンター(註:加西にある植物園)に?

    後ろ姿はまさに「植物」な健美。

    阿部さん「いや、誕生の地はガジロウと同じ辻川山公園です。池から突如現れました(笑)」

    ―― 失礼いたしました。それにしてもなぜ「福崎出身者」が加西へ?

    阿部さん「加西へは『出向』という形で配属されています。ちなみに3月に誕生したので、今はまだ『研修期間中』ですね」

    ―― なるほど。人間界的にいうと、健美は「新入社員」ですね。

    阿部さん「そうです。まだ色々覚えている最中です」

    ■ ガジロウは憧れの存在

    ―― それにしてもガジロウ同様に、一目見たら夢にまで出て来そうな健美の容姿。名前の通り、「健康」と「美しさ」を意識しているんでしょうか?

    阿部さん「健美は、特徴として人の心と身体の悪い部分を栄養素にしています」

    ―― ほう、「悪い」部分ですか。

    阿部さん「といっても、外傷というよりは内面的なものですね。また今後の活動として、ラップを刻みながら体操をするという『健康プロジェクト』を夏に行いたいと考えています」

    ―― まさに「名は体を表す」ですね。

    阿部さん「ちなみに、美しく健康な方には強い対抗心を抱いていますよ」

    ―― なるほど。逆に「この方は美しい」というようないわゆる『推し』はいるのでしょうか?

    阿部さん「そこはいませんね。自分をオンリーワンの存在と思っていますので」

    ―― ガジロウは推しメンではないと?

    阿部さん「推しというより、『憧れ』ですかね」

    ―― 異性として意識は?

    阿部さん「ガジロウがどう想っているかですね(笑)」

    ■ 播磨地域の架け橋に

    ―― ではここからは阿部さん自身について。普段は加西市の職員さんなんですね。

    阿部さん「はい、裏の顔はそうですね。一応課長やってます」

    ―― 裏って(笑)そういえば先ほどの「北播磨ブランド化委員会」は、加西市の一部署なのですか?

    阿部さん「『北播磨ブランド化委員会』は民間組織なんですよ。あくまで地元の有志が集まってできた団体です。健美もそこから誕生したんで、加西市役所のオフィシャルキャラではないんです」

    ―― そうだったんですか。ということは、健美は「自腹」で製作されたということに?

    阿部さん「費用に150万円かかったのですが、一部は私が自己負担、残りはSNS上で協賛を募りました。ちなみに健美の『健』は、協賛いただいた高知県の健康食品会社から来ています」

    ―― なんとそんな経緯が。そういえば、今回の製作に小川さんも携わったそうで。

    阿部さん「昔から2人で面白おかしいことしていて、そのまま2人とも大人になりました(笑)実は健美は、構想に2年ほどかかっているのですが、彼女の存在が、加西と福崎を結びつけるきっかけになればいいと思います」

    ―― 加西と福崎って隣接していますが、不思議と関わりがないというか。私がいうのもなんですが、「近くて遠い」印象があります。

    阿部さん「管轄が違うのもあるんですが(註:加西市は『北播磨』、福崎町は『中播磨』に分類する)、今まで交流は少なかったです。ただ、どちらも『播磨』という同じ地域。実は小川さんも出身が加西で、地元民の結びつきは強いんです。なので、私の所属する『北播磨ブランド化実行委員会』が、盛り上げたいと思っています」

    「播磨」を意識したいという阿部さん。幟にもその表記がしっかりと「播磨国」の記載が。

    ―― となると、今風でいうと、阿部さんは健美の「プロデューサーさん」でしょうか?

    阿部さん「そうなりますね(笑)」

    ―― いち兵庫民として、今後の活躍を楽しみにしています!

    * * * * * * *

     というわけで、加西に爆誕した新たなご当地キャラ「健美」ならびに、プロデューサーである阿部さんに話を聞いた筆者。ガジロウとはまた違ったインパクトで、健美という漢字を見るだけでその姿を連想できる存在感でした。

     その中で話題にも上がりましたが、健美がきっかけで加西市含めた播磨地域を盛り上げたいとも語ってくれた阿部さん。これはあくまで筆者の肌感ですが、兵庫県は、前身が5つの国だった「歴史的背景」もあり、「日本の縮図」と形容されるほどに、多種多様な「表情」を見せる地域でもあります。

     しかし一方で、「神戸」・「姫路」・「淡路」・「但馬」・「赤穂」など、地名や地域で話をし、県しての結びつきが希薄なのも特徴なのが兵庫県。

     そんな中で、「加西」という、失礼ながら兵庫の中でもさほど衆目を浴びない場所から、それを改善しようという声があがっているのは、変化の萌芽なのかもしれません。幸い加西には、かつて「その他」に過ぎないところから、全国的に知名度を得ることとなった「福崎のガジロウ」という強い味方がいます。そして担当者の阿部さんと小川さんの結びつきも相まって、今後大きなムーブメントになる可能性は十分に秘めていると感じます。

     そして、先述の「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2019」ですが、実は阿部さんも「すごい!地方公務員」の1人にノミネートされた方。日本全国の公務員の中で、わずか13名だけが選ばれる晴れある賞の受賞者たちの強力タッグは要注目。

     ちなみに今回、筆者は阿部さんより、先述の「健康プロジェクト」に使用するラップナンバーの詳細について、楽曲提供者であるラッパーのMCミチ氏が自身のYouTubeチャンネルで公開している動画リンクも教えていただきました。そこには「FEEL」というタイトルで、アップテンポの激しいナンバー。これをどう健康体操に落とし込んでいくのか楽しみであります。

     時はSNS全盛の世の中。健美も「共感」という様々なFEELをどうやって生み出していくのか、今後の動向が楽しみですね。

    <取材協力>
    兵庫県・ 北播磨ブランド化実行委員会 阿部裕彦氏と健美(ケミィ)ちゃん
    兵庫県・福崎町地域振興課地域づくり係 小川知男氏とガジロウさん(@youkaicon)

    (向山純平)

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