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一年で一つだけ増えていく愛娘の木彫 干支一周分の「成長記録」を作り上げた父

 「お誕生日にはまだ早いけど、毎年恒例の娘の木彫完成。干支を一周してしまった」

 市川友章さん(以下、市川さん)が、そんなつぶやきとともに投稿したのは、娘さんをモデルにした木彫を撮った写真。年に1度、娘さんが誕生日を迎えるタイミングで、毎年1つだけ作り続けてきたものなんです。

  •  市川さんは、東京藝術大学大学院修了後、個展、グループ展などで怪人や動物をモチーフにした油彩画、及び木彫作品を発表されている人物。

     自らがデザインしたLINEスタンプ「怪人スタンプ」が「LINE Creators Stamp Award 2014」にて、 みうらじゅん賞を受賞し、『学校の怖すぎる話』(加藤一編著/あかね書房)にて挿絵を担当、また怪談えほん『おろしてください』(有栖川有栖著/岩崎書店)では絵を担当されています。

     そんな市川さんが、冒頭の木彫作品を作り始めたのは、今から12年前の2009年。実はこの年は、娘さんが生まれた年なんです。

     先述の東京藝術大学在籍時に油絵を専攻していた市川さんは、大学卒業後も油彩画を描き続け、動物をモチーフにしたシリーズ作品では、海外から個展のオファーがあったそう。2009年当時は、美大予備校にて講師をする傍ら、国内外の展示会で作品を発表されていた時期でした。

     ただ、市川さん曰く、絵画は描くと頭ばかりが疲労し、それにより身体のバランスが崩れる感覚になるとのこと。

     「そこで少しでも身体を使った方がいいかなと、ホームセンターで木材と彫刻刀を買って木彫を始めたのがきっかけです。はじめはちょっとした気分転換だったんですよ」

     しかしながら、いくら藝大出身で現役バリバリの画家とはいえ、彫刻家としては門外漢の市川さん。彫刻アートの技術面については独学で身につけました。一方で「本業」ではないからか、ものつくりに関しても、体力の限界を感じたところで作業はストップし、あくまで「気分転換」としての活動に留めていたとのこと。

     また当初は、娘さんのおもちゃとして作っていた木彫作品は、気づけば娘さんをモデルとしたものへシフト。翌2010年より、今回3万近いいいねが寄せられた作品を作られています。

     「1体作ってみるとまた1体と欲しくなって……と気づけば12年経ったという感じでしたね」

    気づけば12年。1年で1つずつ作り続けてきました。

     余談ですが、市川さんはこの12年間の途中、先の画家としての活動は最小限のものに大幅に縮小されています。そんな人生の転機があった中でも、木彫を作ることは不思議とやめたいとは思わなかったそう。

     「気休めとして始めたので、気負わずに続けられたのかもしれませんね」

     「12体全て並べてみると、娘が1年1年成長している感じが伝わってきて面白いんです」

     市川さんが作り上げた12体の木彫作品ですが、「市川家の歴史」としての一面も持っています。

     例えば10体目にあたる2019年の作品では、娘さんの頭上に、白い猫ちゃんが乗っかったものとなっています。実はこれは、市川家にて飼い猫を迎え入れた年。その年の「ハイライト」として取り入れたとのことですが、そんな「家族の思い出」を振り返るという点でも、作ったかいがあったという市川さん。

     同時に、「子供の成長はあっという間という感じですね」と、2021年で干支を一周したことについて振り返られていましたが、娘さんにとっては、一年で一つだけ増えていく、大好きなお父さんに作ってもらった世界でたった一つだけの宝物。一生忘れられない「思い出の結晶」ではないでしょうか。

     市川さんは現在44歳。娘さんへの木彫作品については、先述の通り、これからも毎年1体ずつ増やしていくそうです。「当面の目標は、娘が20歳になるまで作り続けていくことです」とのことでした。

    <記事化協力>
    市川友章さん(@1cyome)

    (向山純平)

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