ヴァージン・グループの宇宙旅行会社、ヴァージン・ギャラクティックは2021年5月22日(現地時間)、アメリカのニューメキシコ州にある宇宙港から試験飛行を実施し、宇宙飛行に成功したと発表しました。ニューメキシコ州はフロリダ州、カリフォルニア州に続き、アメリカ3つめの有人宇宙飛行の出発州となります。

 ヴァージン・ギャラクティックは、ニューメキシコ州の「スペースポート・アメリカ」を拠点に、宇宙旅行(弾道飛行)を提供する会社。現在、すでに宇宙飛行の申し込み受付を開始しており、アメリカ連邦航空局(FAA)の「商用再利用型宇宙船運航」免許取得に向けて試験を進めています。

スペースポート・アメリカでの宇宙船と発射母機(Image:Virgin Galactic)

 今回実施された試験飛行は、宇宙船スペースシップツー「VSS(Virgin Space Ship)ユニティ」の改良された垂直尾翼やフライトコントロール・システムをテストするものとして実施されました。あわせて、FAAの事業免許取得手続きに向けたデータ収集と、NASAの科学実験プログラムも行われています。

 発射母機のホワイトナイトツー「VMS(Virgin Mother Ship)イヴ」に搭載され、ニューメキシコ州の「スペースポート・アメリカ」を離陸したVSSユニティは、ホワイトサンズ国立公園上空で切り離されたのち、ロケットエンジンに点火。マッハ3で上昇を続け、アメリカ空軍が定める「宇宙空間」の基準である高度80kmを超え、最終的に高度55.45マイル(約89km)に到達し「宇宙飛行」に成功しました。

ニューメキシコ州上空で切り離されたVSSユニティ(Image:Virgin Galactic)

 今回VSSユニティの機長を務めたフレドリック・“CJ”・スターカウ氏は元NASAの宇宙飛行士で、スペースシャトルのミッションを4回(うち2回はコマンダーとして)経験し国際宇宙ステーションにも滞在した人物。ヴァージン・ギャラクティックの宇宙船パイロットとしては、カリフォルニア州モハーベ砂漠にある宇宙港からの宇宙飛行も経験しており、アメリカの異なる3つの州から宇宙飛行をした初めての人物となりました。

機長のフレドリック・“CJ”・スターカウ氏(Image:Virgin Galactic)

 また、ニューメキシコ州も「有人宇宙飛行の出発点」としては、フロリダ州(ケネディ宇宙センター)、カリフォルニア州(エドワーズ空軍基地とモハーベ航空宇宙港)に続き3番目の州に。ニューメキシコ州から初の宇宙飛行を記念して、VSSユニティには州を象徴する農作物である青唐辛子(グリーンチリ)も搭載されていました。

 ヴァージン・ギャラクティックのマイケル・コルグラジェCEOは「今日の飛行では、ニューメキシコ州でのヴァージン・ギャラクティックと有人宇宙飛行における大きな前進を示すとともに、私たちの宇宙船独特のエレガンスと安全性をお見せすることができました。この試験飛行から得られたデータをすぐに解析し、次に計画されている新たなマイルストーンのニュースをご提供できることを楽しみにしています」とのコメントを発表しました。

 ヴァージン・グループを率いるリチャード・ブランソン氏は「15年前、ニューメキシコ州は世界初の商用宇宙港を開設するという道を歩み始めました。今日、私たちはその同じ場所から初の有人宇宙飛行を成し遂げ、ヴァージン・ギャラクティックとニューメキシコ州双方にとって大きなマイルストーンを達成しました。私はチームの努力を誇りに思い、同時に初めから商用宇宙飛行へ揺るぎない協力をしてくださっているニューメキシコの人々に感謝します」とのコメントを発表しています。

 ニューメキシコ州のミシェル・ルジャン・グリシャム知事は「長年にもわたる努力の結果、ニューメキシコ州はついに星に手をかけることができました。私は次に起こることが待ちきれません。私たちは最先端、イノベーションの最前線におり、強力な経済的、科学的可能性を最大限活用し、この座にい続けるよう全力を尽くします」とのコメントを発表し、州をあげてヴァージン.ギャラクティックの取り組みに協力を惜しまないことを表明しています。

 ニューメキシコ州の宇宙港から初めての「宇宙飛行」を成功させたヴァージン・ギャラクティックは、今回の試験飛行で収集されたデータをまとめ、FAAに提出する予定。FAAの「商用再利用型宇宙船運航会社」認定手続きまでは、報告が残り2つという段階まで進行しており、早ければ2021年中にも最終報告の提出まで進むかもしれません。

<出典・引用>
ヴァージン・ギャラクティック ニュースリリース
Image:Virgin Galactic

(咲村珠樹)