ペットが健康に長生きしてほしいというのはどの飼い主にも共通する願い。しかし時には病気や事故によって体が不自由になってしまうことがあります。ペット自身も意気消沈してしまうようですが、飼い主さんの愛情と工夫で元気を取り戻すことも。病気で失明したダックスフント(ダックスフンド)が、犬用の白杖を得ることで再びお散歩ができるようになりました。
6歳になるたまみちゃんは、翻訳者の林真紀さんのお宅で暮らしているミニチュアダックスフントの女の子。網膜の視細胞に異常が起きる「網膜変性症」という病気で、全盲となってしまいました。
網膜変性症はミニチュアダックスフントやプードルに多い病気で、突発性後天性網膜変性症(SARD)の場合、非常に進行が早いのが特徴。あっという間に視力を失ってしまうので、中途失明の中でも状況に対応するのが難しいといいます。
たまみちゃんも数週間で失明してしまったため、今までのように生活するのが難しくなってしまいました。歩いていて突然障害物にぶつかったりするため、たまみちゃんは外に出るのを嫌がるように。大好きだったお散歩にも行きたがらなくなったそうです。
飼い主の林さんは、たまみちゃんが以前のように外出できるよう、何かサポートするグッズがないか探し始めました。色々検索したところ、犬用の白杖というものを発見したといいます。
人間の白杖は、手に持って進行方向に障害物がないか探ったり、杖で音を立てることで「ここに目の不自由な人がいます」ということを知らせたりするもの。犬用の白杖は手で持つことができないのでハーネスと同様に装着し、顔の周りをガードするように「リング状のバー」が巡らせてあります。
このバーが障害物に触れることで、ワンちゃんは「ここに何かある」と感じることができ、不用意にぶつかることを避けられるという仕組み。林さんによると「日本でも同じようなものを作ってくれる工房があったのですが、納期が1か月以上先でした。一刻も早くなんとかしたかったので、アメリカのメーカーから直に輸入したところ、注文から4日で届きました」とのこと。
さっそく白杖を取り付けてもらったたまみちゃん。最初は何かを取り付けてもらったのは分かるものの、それが何か分からないので「フリーズしていました」と、少々戸惑ったようです。
家の中で装着したところ、犬小屋に入る際にリングが引っかかってしまったり、キッチンなど狭いところでは何度もぶつかったりしてしまった、というたまみちゃん。家の中では外していてもあまりぶつかることがないので、危険の多い外でのお散歩時に使ってみることにしました。
メーカーからの説明に「犬は数日で『自分を守ってくれるものだ』と認識する」とあったそうですが、たまみちゃんは室内での経験があったからか、装着して初めてのお散歩で、恐る恐るではあるものの歩いてくれたんだとか。2回目のお散歩では、林さんが鈴を持って少し前方を歩き「ここにいるよ」と示したところ、走ることもできるようになったといいます。
1週間もすると、失明後は全力で拒否していたドッグランにも行きたがるように。白杖があるおかげで顔をぶつけることがない、と安心することができたんですね。
飼い主の林さんによると、たまみちゃんは家の中では滅多にぶつかることなく過ごしているそうで、家具の配置や人間の気配を全部把握している様子。屋外は予測できないことが多いので、失明後はそれを恐れてお散歩に行きたがらなかったようです。
今ではたまみちゃん、失明当初は顔や目に枝などがぶつかるため怖がっていた茂みや植物の多い場所にも、気にせずズンズンと進んでいくようになったそうです。ドッグランでも段差やベンチなどに顔をぶつけることがなくなったせいか、とても意欲的に行きたがるといいます。
好きだったお散歩にも行けるようになったからか「食欲も出てきました」と林さんは語ります。人間の場合もそうですが、体が不自由になっても、ちょっとした道具や工夫で以前のような生活が可能になると、気持ちにハリが出てきます。失明した犬用の白杖、もっと広がってほしいですね。
失明後、お散歩拒否だったワン子が、犬用白杖をつけたらどんどん歩くようになりました。どんなこともツールと工夫で乗り越えていけるということは、息子の子育てで学んだ!だから私はくじけないのです😅 pic.twitter.com/q9plbgkNWk
— マキータ(はやしまき) (@maki_hayachi) December 11, 2021
<記事化協力>
林真紀さん(@maki_hayachi)
(咲村珠樹)