おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

完治しない持病は夢を叶えるヒントだった ~「サイボーグ」を名乗る女性モデルの人生逆転劇~

 オリジナルサイボーグキャラ「サイボーグYuki」として表現活動を行っている斎藤ゆきえさん(以下、斎藤さん)。

 サイバーパンクを意識して作られたコスチュームに、世界観にマッチした空間。その中に身を置くことで、自身も一体となった独自の世界観を写真で表現しています。作品を発表する場は主に、“電脳世界”の一つともいえるSNS。

  •  最近話題になったのは「紫・電・一・閃」というタイトルで、ライトセイバーのような形状の剣を二刀流で構えた「サイボーグYuki」。

    この日は「紫電一閃」というテーマでポージングをした斎藤さんこと「サイボーグYuki」。

     青を基調とした背景は、どうやら電子世界をイメージしているようです。足元に浮かび上がる「紫電一閃」の文字も、電極や雷のデザインが取り入れられ、SF感マシマシ。

     「紫電一閃」というのは、刀を振り下りした際に発生する「一瞬の光」といった意味合いを有した言葉ですが、じっとどこかを見つめる「サイボーグYuki」は、そんな「一瞬」を表現したものとなっています。

     「今回着用したコスプレ造形が、『電力で駆動するサイボーグ』という設定なんです。なので、『電の文字を含めたかっこいい四字熟語をイメージした画を撮りたい』という希望からこうなりました」

     斎藤さんは、今回紹介した作品の他にも、様々な作品をSNS上で紹介しています。しかしながら、その内容は多種多様。共通しているのは「サイボーグYuki」という存在だけです。

     例えば「情報を解析」と題したものだと、ゆったとした体勢からそのままデータ解析を行う「サイボーグYuki」の姿。その“バリエーション”として、「情報収集」している様子も。インストール中でしょうか?

    ゆったりとした体勢で情報を解析するサイボーグYuki。

    「情報収集中」の一幕。

     なお、今回のように「四字熟語」を用いる表現は過去にも「両刃之剣」などで行われています。

    「諸刃の剣」を捩った「両刃ノ剣」。

     一方、一仕事終えた「サイボーグYuki」と、パートナーらしきサイボーグとのツーショット風景をイメージした「私達にとっては随分楽な仕事(ヤマ)だったわね」という作品も。ちょっとコミカルさが伝わるものとなっています。

    他のサイボーグとのツーショット。

     自身と同じ「サイボーグキャラ」のコスチュームを着用したコスプレイヤーたちとユニットを組んだり、企業のイベントモデルとして“出展”したりと、活動範囲は多岐にわたる「サイボーグ女子」斎藤さんですが、ここに至るまでは紆余曲折がありました。

    ■ 吃音症のち斜視 次々と襲い掛かる異変

     元々斎藤さんは、特撮関連の役者を志望していました。幼少期に見た仮面ライダーの「等身大で敵に立ち向かう姿」に、大きな影響を受けたのが要因だったそうです。

     そんな斎藤さんに立ちふさがったのが、「吃音症」という先天性の言語障害。会話の途中で言葉に詰まったり、第一声が上手く発せないといった症状を抱えていたため、夢を断念することに。得意の絵を生かして美大に進学し、卒業後は漫画家のアシスタントを勤めていました。

     そんなある日、当時の同僚から「最近どもらないで話せているね」という言葉をかけられたそうです。その一言で、自身の吃音症が改善していることに気づきます。

     すると「特撮に出演する」という夢が再燃。半年間専門のレッスンを受けた後に挑戦することを決意したのでした。

     しかし現実は残酷。様々なオーディションに応募するも、落ちる日々が続きます。

     とはいえ、そう簡単に夢を諦められない斎藤さん。オーディションがダメならと、動画サイトにアカウントを開設し、独学で習得した編集スキルを駆使して配信活動を行うことになりました。結果、とある番組のTV出演も決定します。

     そんな矢先、斎藤さんの身体に別の異変が生じます。よく人とぶつかるようになり、何かにつまずくことも増えていたのです。

     当初は疲労程度に考えていましたが、症状は治まらず医師の診察を受けることに。そこで宣告されたのは「斜視」の診断。

     「斜視」というのは、片方の目がもう片方の目と違った方向に向いてしまう症状。そのため正確な距離感がつかめなくなってしまいます。

     手術などの治療法が存在しますが、斎藤さんが斜視になるのは実はこれで3度目。過去2度は手術をうけ改善したものの、3度目の手術は、医師から「あまりにもリスクが高い」ということで断念。その際、「この顔と一生付き合わなければいけない」との宣告を受けます。

     光が見えてきた矢先の暗黒。大幅に活動を縮小せざるを得なくなった斎藤さんは、TV番組の仕事も間もなく降板。さらに不幸は続き、バイトの休憩中の散歩で手に大けがを負ってしまいます。

    ■ 「子供の頃のヒーロー」が「人生の救世主」に

     絶望のどん底に突き落とされてしまった斎藤さん。しばらくは無気力な日々を過ごしていたそうですが、友人からある日こんな連絡を受けました。

     そこには、「興味深いネタ」とともに送られた「異色肌ギャル」の画像。モデルのmiyako氏が発祥とされる、「自然界では本来存在しないはずの肌色」にメイクをした女性たちの写真でした。

     「異色」という文字通り、そのインパクトは絶大。斎藤さんは、ある仮説を立てます。

     「他の部位を目立たせれば、私(斜視)に目がいかないのでは?『みんなと違う』斜視なら、みんなと違うことができるはず」

     そこで、ふと思いつきで「左右非対称 かっこいい」という言葉を検索してみることに。結果、巡り会えたのが、「仮面ライダー」。

     当時放映されていた「仮面ライダービルド」だったといいます。ビルドは、左右非対称のデザインが特徴です。

     「異色肌ギャル」と「仮面ライダービルド」。2つを目にした時、斎藤さんは「私しかできない表現方法」を思いつきます。

     この時大いに役立ったのが、自身が「美大出身」であるということ。実は斎藤さんは手先がかなり器用な方。現在のコスプレ活動においても、造形の大半を自作しています。

     そんな「三本の矢」が揃って生み出されたのが、斜視である左半身に特殊メイクを施し、「体の半身がメカ」という設定にしたオリジナルキャラクター「サイボーグYuki」。

    斜視である半身をサイボーグ化した「サイボーグYuki」の初期プロット。

     「左右の目が合っている『普通の人』より、私のような斜視の人間がやる方が『非人間感』が出るのです」

     時に陰口をたたかれることもあったものの、積極的な活動の結果、SNSで注目されることも増えていきました。

     その結果、ある企業のイベントガールで抜擢され、各種メディアも注目していきます。こうして「人間・斎藤ゆきえ」は、その動向が注目される「サイバー女子・サイボーグYuki」へと華麗な変貌を遂げたのです。

    ■ 「コンプレックス持ち」にもできることはある

     現在は、様々なイベント出演依頼の絶えない人気モデルとなった斎藤さん。TV番組で特集されたこともありました。

     そんな中で、自身は新たな挑戦をされています。それは、「体に何らかのコンプレックスを持つ方へ自身の活動を共有していく」ということ。

     「私は斜視を乗り越えましたが、容姿の面から夢を閉ざされてしまう子供たちはまだ多く存在します」

     「そんな子たちにとって、『ハンデがあっても華やかに上がることができる』という体験を伝え、もっと身近なものになればいいなと思います」

    <記事化協力>
    斎藤ゆきえ@サイボーグYukiさん(Twitter:@cyborgyukky/note:@cyborgyuki001)

    (向山純平)

    あわせて読みたい関連記事
  • 「ちいかわの世界に行きたい」ファン、考えた末に鎧さん化 再現度がガチすぎた
    インターネット, おもしろ

    「ちいかわの世界に行きたい」ファン、考えた末に鎧さん化 再現度がガチすぎた

  • 温泉旅館で「コスプレ入門」講座 福島・いわきで初心者向け市民講座開催へ
    イベント・キャンペーン, 経済

    温泉旅館で「コスプレ入門」講座 福島・いわきで初心者向け市民講座開催へ

  • 世代を超えて楽しむコスプレ 93歳ひいおばあちゃんの「ソフィー」にほっこり
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    世代を超えて楽しむコスプレ 93歳ひいおばあちゃんの「ソフィー」にほっこり

  • まさか髪が消えるとは思わず
    インターネット, おもしろ

    コスプレと背景が完全同化!プリクラ撮影で起きた“悲劇”に「膝から崩れ落ちました」…

  • 令和のインターネットを侵略完了!イカ娘コスの11年越しビフォー・アフターが話題
    インターネット, おもしろ

    令和のインターネットを侵略完了!イカ娘コスの11年越しビフォー・アフターが話題

  • ガンダムファン爆笑 ついに「パンを盗むおじさん」がコスプレされる
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    ガンダムファン爆笑 ついに「パンを盗むおじさん」がコスプレされる

  • 画像提供:架空昭和史作家 西川真周さん(@mashunishikawa)
    インターネット, おもしろ

    家のトイレが巨大ロボのコクピットに!昭和とSFが融合した「架空昭和史」の世界に夢…

  • 画像提供:みかんくんさん(@xmikanpapax)
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    ハンコック姿の“夫”が話題 美しすぎて石化しそう……

  • 「お台場痛車天国2025」開催!約1000台の痛車とコスプレイヤーが集結(画像提供:痛車天国プロジェクト事務局)
    アニメ/マンガ, イベント・キャンペーン

    「お台場痛車天国2025」開催!約1000台の痛車とコスプレイヤーが集結

  • 画像提供:りゅうかさん
    インターネット, おもしろ

    課金カード風ケーキにエクスカリバーを入刀……コスプレイヤー同士が結婚するとこうな…

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • EmEditor公式サイトの不正改ざん問題で続報 「攻撃者の高い執念が感じられます」
    インターネット, サービス・テクノロジー

    EmEditor公式サイトの不正改ざん問題で続報 「攻撃者の高い執念が感じられま…

  • 東京ディズニーランド&シー、9億人目のゲストをお迎え
    社会, 経済

    東京ディズニーランド&シー、9億人目のゲストをお迎え

  • 日本自閉症協会、「デジタル自閉症」という表現に反対 誤解や偏見助長を懸念
    インターネット, 社会・物議

    日本自閉症協会、「デジタル自閉症」という表現に反対 誤解や偏見助長を懸念

  • クマ出没マップ 「FASTBEAR」
    インターネット, サービス・テクノロジー

    AI集約のクマ出没マップ「FASTBEAR」公開 全国の出没情報をまとめて可視化…

  • 動画収益は復興支援へ インフィニット、能登半島応援アニメをYouTubeで全2編公開
    アニメ/マンガ, 放送・配信

    動画収益は復興支援へ インフィニット、能登半島応援アニメをYouTubeで全2編…

  • カップヌードル 背脂豚骨醤油 ビッグ
    商品・物販, 経済

    日清「背脂豚骨醤油ビッグ」を発売 もやしカスタム推奨

  • トピックス

    1. 東京ディズニーランド&シー、9億人目のゲストをお迎え

      東京ディズニーランド&シー、9億人目のゲストをお迎え

      東京ディズニーランドと東京ディズニーシーを合わせた累計入園者数が1月6日、9億人に到達。運営するオリ…
    2. クマ出没マップ 「FASTBEAR」

      AI集約のクマ出没マップ「FASTBEAR」公開 全国の出没情報をまとめて可視化

      全国のクマ出没情報を地図上で可視化する「FASTBEAR(ファストベア)」の公開が、12月26日に発…
    3. 2026年も大漁!年賀状「隠しデザイン」を本気で探した結果

      2026年も大漁!年賀状「隠しデザイン」を本気で探した結果

      ついに幕を開けた2026年。1月1日の朝といえば、ポストをのぞいて新年のあいさつを受け取る──そんな…

    編集部おすすめ

    1. EmEditor公式サイトの不正改ざん問題で続報 「攻撃者の高い執念が感じられます」

      EmEditor公式サイトの不正改ざん問題で続報 「攻撃者の高い執念が感じられます」

      テキストエディター「EmEditor」を提供するEmurasoftは1月4日、公式サイトに関するセキュリティインシデントの続報を公表しました…
    2. 日本自閉症協会、「デジタル自閉症」という表現に反対 誤解や偏見助長を懸念

      日本自閉症協会、「デジタル自閉症」という表現に反対 誤解や偏見助長を懸念

      一般社団法人日本自閉症協会は1月5日、比喩的に使われている「デジタル自閉症」という言葉について、反対する声明を発表しました。協会は、この言葉…
    3. 動画収益は復興支援へ インフィニット、能登半島応援アニメをYouTubeで全2編公開

      動画収益は復興支援へ インフィニット、能登半島応援アニメをYouTubeで全2編公開

      アニメーションプロデュースの株式会社インフィニットは1月1日、「能登半島復興応援企画」短編アニメーションを、YouTubeにて全2編公開しま…
    4. シートタイプのWebMoney

      WebMoney、事業をビットキャッシュへ承継 一部サービスは終了へ

      オンラインゲームの課金手段として知られる「WebMoney」が事業の節目を迎えます。auペイメントは2026年3月31日付でWebMoney…
    5. 「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      「完全在宅」「未経験OK」のはずが…求人をきっかけに高額契約 消費者庁が注意喚起

      育児などを理由に在宅で働きたいと求人サイトを利用した人が、結果的に高額な契約を結ばされるケースが相次いでいます。「完全在宅」「未経験OK」と…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト